東京都杉並区では「杉並区生活安全及び環境美化に関する条例」が制定されています。
地域住民の住環境保全に努めていますが、名称からもわかるように決してゴミ屋敷のためだけの条例ではありません。
そこで、杉並区生活安全及び環境美化に関する条例に関してゴミ屋敷に関連するであろう部分をご紹介します。
さらに、条例の実効性等についても見てみましょう。
杉並区生活安全及び環境美化に関する条例のゴミ屋敷に関する部分
東京都杉並区が制定している杉並区生活安全及び環境美化に関する条例は全21条からなる条例です。
ゴミ屋敷だけの条例ではなく、環境に関する条例なのでゴミ屋敷以外に関する部分の文言もあります。
ゴミ屋敷を想定しているもの、あるいはゴミ屋敷にも適用できるであろう部分をピックアップしてみました。
杉並区生活安全及び環境美化に関する条例第1条
杉並区生活安全及び環境美化に関する条例の第1条において、地域の環境美化の促進によって安全かつ快適な町を目指すとあります。
つまり、ゴミ屋敷そのものが条例に違反していると考えてよいでしょう。
杉並区生活安全及び環境美化に関する条例第3条
第3条では、条例目的達成のために必要な施策を実施すると規定されています。
特に第3項では安全で快適な地域社会を作るための環境の整備とあります。
ゴミ屋敷は安全で快適に該当するとは考えにくいです。
第3条はゴミ屋敷改善のための施策を打ち出す根拠と考えられます。
杉並区生活安全及び環境美化に関する条例第4条
第4条の5項にて、土地や建築物の所有者・管理者は不良な状態にせず、適正な管理をするよう定めています。
ちなみに不良な状態の文言の中に、「廃棄物を放置すること」とあります。
ですので、ゴミ屋敷にも該当すると考えてよいでしょう。
杉並区生活安全及び環境美化に関する条例第6条
第6条では住民ではなく、関係行政機関が杉並区が実施する施策に協力することを定めています。
つまり、ゴミ屋敷に関する施策を杉並区が実施する際、関係する行政機関が杉並区に協力することは、善意ではなく条例に基づくルールです。
杉並区生活安全及び環境美化に関する条例第9条
第9条の2項では土地の所有者・管理者が疾病等やむを得ない理由で管理できない場合、区長に委託できると定められています。
ちなみに草木の除去及び廃棄物の処理と明言されています。
ゴミ屋敷にしてしまったものの、やむを得ない事情がある場合は区長を頼れることを意味します。
つまり、杉並区ではやむにやまれずゴミ屋敷となってしまった場合に区長を頼ることは、条例に基づいた区民の正当な権利であることが定められています。
杉並区生活安全及び環境美化に関する条例第13条
第13条にて、環境美化に関する施策を実施する場合、杉並区安全協議会を置くことを定めています。
つまり、ゴミ屋敷改善のための施策を打ち出した時、無条件で行うのではありません。
まずは協議会を設置し、審議します。
もちろんここでは区長に対して意見も行えます。
杉並区生活安全及び環境美化に関する条例17条
17条の4項にて生活環境を著しく害していると認められた場合、期限を定めて必要な改善措置を命ずることができると定めています。
さらに、5項にて命令に従わない場合には公表できることを定めています。
つまり、ゴミ屋敷だと認められた場合には、区長の権限にて改善措置を命令します。
命令に従わない場合には、ゴミ屋敷住居人の公表も可能です。
杉並区生活安全及び環境美化に関する条例17条
第4条5項の規定違反者に対して命令したものの改善されず、かつ以下の点が当てはまる場合、行政代執行を行えると規定しています。
- 他の手段での履行が困難だと判断された
- 放置しておくことが地域社会の公益に反すると認められた
また、行政代執行の費用は義務者から徴収できることも規定しています。
つまり、ゴミ屋敷問題の解決のためには行政代執行も可能です。
行政代執行の費用は、ゴミ屋敷住居人に請求できると定めています。
杉並区生活安全及び環境美化に関する条例のポイント
東京都杉並区にて制定している杉並区生活安全及び環境美化に関する条例のゴミ屋敷を対象としたもの、ゴミ屋敷対策の根拠となる部分を紹介しました。
これらから、杉並区生活安全及び環境美化に関する条例がどのような意味合いを持つ条例なのかも分かります。
ゴミ屋敷条例に劣らない条例
東京都杉並区が制定している杉並区生活安全及び環境美化に関する条例は名称からも分かるように、ゴミ屋敷対策だけではなく、環境全般をカバーした条例です。
環境全体をカバーする中でゴミ屋敷対策も含めるタイプの条例は、東京都杉並区だけではなく他にもあります。
しかし、多くがゴミ屋敷の該当部分が少なかったり、具体的施策の記述がありません。
しかし杉並区生活安全及び環境美化に関する条例に関しては、行政代執行、さらには行政代執行の費用請求まで規定されています。
ですので、他の自治体のいわゆるフルスペックのゴミ条例に劣らない条例となっています。
新たに手を加えることなく、行政代執行までは可能な条例は、環境全般をカバーしている条例としては珍しいです。
過料まで定めている
杉並区生活安全及び環境美化に関する条例では従わなかった人間に対して罰金まで規定しています。
ゴミ屋敷に関連する部分では罰金まで定めている部分はありませんが、過料を定めていることで、条例が飾りではなく、実効性の高いものになっています。
いくらきめ細かい条例を策定しても、罰則がなければ守る人は少なくなります。
過料を定めることで、「守らなければ罰金」との意識を植え付けることに成功しています。
支援策と再発防止は薄い
杉並区生活安全及び環境美化に関する条例は、以下の点も明文化されています。
- 行政代執行
- 費用の請求
ですが、支援策や再発防止策に関しては具体的施策は規定されていません。
必要であれば施策を打ちだせるような文言となっていますので、ケースバイケースで取り組むことができます。
しかし、費用請求まで規定している点を踏まえると、支援策や再発防止策の具体的記述がない点は気になる部分です。
条例で問題が起きていない
東京都杉並区ではゴミ屋敷問題が顕在化していません。
つまり、杉並区生活安全及び環境美化に関する条例でカバーできない問題が発生していません。
他の自治体の、いわゆるフルスペックのゴミ屋敷条例と比較すると支援策や再発防止策がありません。
ですが、問題が起きていない以上、東京都杉並区は杉並区生活安全及び環境美化に関する条例で十分です。
もし、今後ゴミ屋敷問題が顕在化した際、条例でカバーできない部分は新たに条例を加えればよいだけです。
杉並区生活安全及び環境美化に関する条例についてのまとめ
東京都杉並区が制定している杉並区生活安全及び環境美化に関する条例は、ゴミ屋敷だけでなく環境全般をカバーしている条例です。
それでも、行政代執行、さらには行政代執行の費用請求まで明文化されています。
他の自治体のフルスペックのゴミ屋敷条例に劣るものではありません。
そのため、もし杉並区でゴミ屋敷問題が顕在化したとしても、条例に基づき適切なサポート・フォローが期待できるでしょう。