東京都品川区ではゴミ屋敷に関する条例が用意されているだけではなく、条例に基づく行政代執行も行われました。
東京都品川区と言えば23区内とあって発展した都市であり、ゴミ屋敷とは無縁の街とのイメージをお持ちの方も多いことでしょう。
しかし実際には行政代執行まで行われました。
そこで、品川区にて定められたゴミ屋敷に対する条例や、実際に行われた行政代執行について、併せてご紹介します。
目次
東京都品川区のゴミ屋敷に対する条例について
東京都品川区が策定している「品川区空き家等の適正管理等に関する条例」が、いわゆるゴミ屋敷に対する条例だと考えられます。
名称に「空き家」が含まれていますが、完全な空き家だけではなく、管理不全状態にある空き家及び廃棄物に起因した管理不全状態にある空き地等が対象となっていることから、ゴミ屋敷に対する条例だと考えてよいでしょう。
その記載事項についてご紹介します。
ゴミ屋敷予防・再発防止が定められている
品川区空き家等の適正管理等に関する条例では、以下の内容が記載されています。
- 品川区の住民としてゴミ屋敷とならないよう努めること
- ゴミ屋敷を解消した後には、再発防止を近隣区民と協力して努めること
区長の権限
管理不全状態にあるかどうかを判断するために、必要な場合には実施調査が可能な点、当該職員に敷地・家屋に立ち入っての調査を行わせることが可能だと定められています。
また、管理不全状態だと認められた場合、所有者に対して解消措置を講ずる助言や指導が可能だと定めています。
助言や指導に従わなかった場合
管理不全状態にある空き家等の所有者が区長から発せられた助言や指導に従わなかった場合、対象者の公表が可能になり、さらには行政代執行まで権限として有すると定められています。
ただし、行政代執行を実践する場合、審議会を開催し、意見を聞かなければならないとも定められています。
ですので、区長の一存のみで行政代執行等を行うことはできません。
品川区空き家等の適正管理等に関する条例でゴミ屋敷は改善するのか
品川区では、品川区空き家等の適正管理等に関する条例にてゴミ屋敷対策に向きあっています。
ですが、改善は可能なのでしょうか。
他の地域のいわゆるゴミ屋敷条例と比較してみましょう。
行政代執行があるのである程度の抑止力にはなる
品川区空き家等の適正管理等に関する条例では行政代執行の権限が区長に委ねられています。
そのため、指導等に応じなければ実際に動けるとアピールすることができます。
行政代執行まで用意されていない自治体の条例と比較すると、抑止力に繋がると考えられます。
行政代執行まで設定されていない場合、市長による指示や勧告までしか行えませんので、居住者が無視を継続すると、打つ手なしとなってしまいます。
行政代執行の費用に関する記述がない
品川区空き家等の適正管理等に関する条例では、行政代執行に関する権限が区長に委ねられています。
しかし、行政代執行にかかる費用に関しての記述がありません。
行政代執行は、実際に作業する業者への費用など、ある程度費用が掛かります。
ですが、誰がどのような形で費用を支払うかの記載がありません。
他の自治体の場合、ゴミ屋敷所有者に請求できる旨が条例に記載されていますので費用に関する責任も明確です。
しかし、品川区空き家等の適正管理等に関する条例の場合、費用負担でトラブルが起きる可能性があります。
再発防止策があくまでも品川区民の努力義務
品川区空き家等の適正管理等に関する条例には再発防止に努めるようにとの記述がありますが、具体的施策までは記載されていません。
つまり、品川区民の善意に委ねるのみです。
福祉施設等との連携による再発防止策が条例にて策定されている自治体と比較すると、再発防止策も少々手薄な条例となっています。
想定しているメインターゲットが無人のゴミ屋敷
品川区空き家等の適正管理等に関する条例では、その名称からもわかるように、ゴミ屋敷に対する条例ではありますが、空き家、つまり無人のゴミ屋敷となっています。
他の自治体の場合、居住者のいるゴミ屋敷対策として条例を定めているのですが、品川区の場合、無人のゴミ屋敷も想定しています。
近年、東京都内でも無人のゴミ屋敷が増えていることから、このような形での条例となったのでしょう。
品川区にて敢行された行政代執行について
東京都品川区では、実際に行政代執行が敢行された事例があります。
品川区では初、東京都内では2例目とあって、メディア等でも報道されました。
2016年5月17日に敢行された行政代執行
品川区が敢行した行政代執行の対象家屋は10年程前からゴミがたまっていました。
こちらは品川区空き家等の適正管理等に関する条例で想定した通り、空き家でした。
所有者がいたので、所有者に対して品川区として何度も指導を行っていました。
ですが結局は改善されることなく、行政代執行に至りました。
ゴミ屋敷の実情
行政代執行が敢行された空き家のゴミ屋敷は、男性が所有していたもので、2006年頃から屋外にゴミが溢れていました。
小学校の通学路に面する外壁が崩落しているなど、近隣の住民が行政に対応を求めていました。
実際に行政代執行が敢行されると、ゴミの量は推定20トンもありました。
一日だけでは作業が終わらず、数日に及んだとのことです。
今後品川区でゴミ屋敷は防げるのか
品川区空き家等の適正管理等に関する条例を根拠に、実際に行政代執行が敢行されました。
今後もゴミ屋敷が生まれ、行政代執行が敢行される可能性もあります。
ですが、行政代執行に頼らず、品川区民が留意し、ゴミ屋敷を作らないことこそ大切です。
条例の周知によるゴミ屋敷の予防
品川区空き家等の適正管理等に関する条例は品川区が制定している条例ですが、まだまだ知らない人も多いのではないでしょうか。
条例や法律は、当事者とならない限り知る機会がないものもあります。
そのため、品川区空き家等の適正管理等に関する条例を知らない品川区民がいても不思議ではありません。
まずは条例を周知徹底し、品川区民一人一人がゴミ屋敷を生まないよう留意することが求められます。
民間と自治体の連携
ゴミ屋敷問題の根深さとして、ゴミ屋敷そのものだけではなく、再犯のケースが多い点が挙げられます。
他の自治体の話ではありますが、行政代執行を敢行し、ゴミ屋敷を解消したものの結局は再度ゴミ屋敷化させてしまったケースもあります。
そのため、行政だけで対応するのではなく、民間との連携も求められます。
カウンセリングや経済面からの再犯防止策や、空き家の所有者の認定等、官民の連携こそ、ゴミ屋敷対策では肝要です。
条例は決め打ちされるものではない
品川区空き家等の適正管理等に関する条例に限らず、条例は議会の承認を経て変更・追加が可能です。
そのため、品川区空き家等の適正管理等に関する条例だけで対応できない場合、品川区民の働きかけによって改正が可能です。
品川区空き家等の適正管理等に関する条例だけに頼らないゴミ屋敷対策を
東京都品川区におけるゴミ屋敷対策について紹介しました。
空き家も対象にしている点や行政代執行時の費用負担が明確ではない点など他の自治体のいわゆるゴミ屋敷対策とは異なる点があります。
また、条例だけに頼るのではなく、品川区民がゴミ屋敷の問題に関心を持ち、行政と民間が連携し、ゴミ屋敷の予防や対策を講じることこそ重要です。