「家の近所にゴミ屋敷があって困っている」
「久しぶりに実家に帰ったら家がゴミ屋敷になっていた」
など、近年増加傾向にあるゴミ屋敷の問題で頭を悩ませている方も少なくないでしょう。
日本では現在、ゴミ屋敷問題を解決するための法律はありません。
その代わりに、一部の地方自治体では条例という形で独自のルールを定め、規制する市区町村が増えてきました。
この記事では、2006年に施行された福井県坂井市のゴミ屋敷に対する条例(通称:坂井市廃棄物の処理及び清掃に関する条例)の内容についてまとまています。
条例に基づいたステップごとの対処方法やその特徴を詳しく解説します。
目次
ゴミ屋敷の抱えるリスクとは
ゴミ屋敷は放っておくと蚊やネズミ、害虫が発生し周辺住民に対しても健康被害を及ぼします。
さらに、放火や不法投棄のリスクが高まったりなど悪影響を及ぼすおそれがあるため早期解決が求められます。
なぜゴミ屋敷になるの?
ゴミ屋敷は1日にしてゴミ屋敷になるわけではありません。
ゴミ屋敷になる要因は身体的なものから心の不調、収集癖まで様々です。
その一部をまとめました。
なぜゴミ屋敷になるの?①認知症や病気など
核家族化が進み、一人暮らしの高齢者が増えています。
認知症の発症や病気やケガなどの理由から、自力でのゴミ出しが難しくなるケースが増加しています。
なぜゴミ屋敷になるの?②仕事が多忙
昨今、在宅ワークをする人が増えたことにより、家で出前サービスを利用したりネット通販を利用する人が増加しています。
そのため、家がゴミ屋敷となる若年層が増えています。
仕事が多忙で、以下のような理由からゴミ屋敷となることもあります。
- 過度なストレスから家のことがどうでもよくなり、ゴミ出しや清掃を一切行わなくなった
- 仕事が忙しくて朝のゴミ出しができない
なぜゴミ屋敷になるの?③孤独感
ペットロスや身近な人との別れなど、耐え難い悲しみを経験した人の中には、孤独な気持ちの隙間を埋めるため以下の行動をとる場合もあります。
- ゴミを集めてしまう
- 身の回りにゴミがあると安心するためゴミを溜め込む
なぜゴミ屋敷になるの?④もったいなくて捨てられない
「いつか何かに使えるかもしれない」と、もったいなくて捨てられない気持ちからゴミを溜め込む人がいます。
この場合、数年かけてゴミ屋敷となっていきます。
なぜゴミ屋敷になるの?⑤ゴミの収集癖
多くの人にとって不要なゴミでも、人によっては価値のある物である場合があります。
そのような価値観を持つ人にとってはゴミステーションは宝の山となり、ゴミを持ち帰ってしまう傾向にあります。
なぜゴミ屋敷になるの?⑥孤立化
外に出る機会が減ったり、ご近所さん同士の付き合いが減ったりするなど、人と接触する機会が減ることで孤立化が進みます。
人に助けを求めにくくなることからゴミの蓄積が進んでしまうケースもあります。
坂井市ゴミ屋敷条例に基づいた対処方法
実際にゴミ屋敷問題が坂井市で発生した場合、ゴミ屋敷条例に基づいてどのような対応が行われるのか、ステップごとにまとめました。
坂井市ゴミ屋敷条例による対応 ステップ①立入調査
まずは、坂井市民からゴミ屋敷の存在によって何らかの被害を受けている、または困っていることがあるなど相談を受けることから始まります。
相談を受けると、市は確認のためにゴミ屋敷を訪問し立入調査を行います。
立入調査時には、以下の聞き取り調査を行います。
- ゴミの堆積具合や内容
- 周辺状況
- ゴミ屋敷に住まう人の生活状況
- 何が原因でゴミが堆積したか
しかし、ゴミ屋敷に住まう人の中には心身の病気や認知症、人との接触を拒絶するなどの理由から聞き取り調査を行うことが難しいケースもあります。
その場合、対応に時間がかかることがあります。
坂井市ゴミ屋敷条例による対応 ステップ②助言・指導
立入調査の結果、周辺住民への安全や衛生面、生活環境面に悪影響を及ぼしていると判断されることがあります。
その場合、ゴミの片付け方法や清掃についてなどの助言や指導が複数回行われます。
自治体によっては、過去に60回以上訪問が行われたところもあり、改善に時間を要する場合もあります。
多くの自治体では、この助言や指導の際に必要があれば福祉施設や介護ケア、介護ボランティアなどの紹介も行っています。
問題解決のための根本的な解決のため提案が行われます。
坂井市ゴミ屋敷条例による対応 ステップ③報告の徴収
坂井市はゴミの片付けや処理について必要な報告を受けるため、ゴミ屋敷住人に対し報告を指示することが可能です。
坂井市ゴミ屋敷条例による対応 ステップ④改善勧告
助言や指導、指示に従わない場合、坂井市は期限を決めて指示内容を行うよう改善勧告を出すことができます。
坂井市ゴミ屋敷条例による対応 ステップ⑤公表
改善勧告にも従わない場合に坂井市は、ゴミ屋敷の住所やそこに住まう人の氏名などを公表することができます。
しかし、公表する前に坂井市側がゴミ屋敷住人に対し、公表に至る理由を説明します。
また、指示に応じることができない理由がある場合には、その理由や証拠などを坂井市側へ提出し弁明する機会が与えられています。
坂井市のゴミ屋敷条例の特徴
坂井市のゴミ屋敷条例の特徴として、例えば規定のゴミステーションまでゴミを出しに行くことができない場合は、家の近くに自らのゴミの集積地(以下「特別集積地」という)を定めることができます。
特別集積地を申請する場合、まずは坂井市長に申請する必要があります。
同時に、一般家庭ゴミの場合には、指定するごみ収集箇所、1箇所につき月額3,000円を支払う必要があります。
費用はかかりますが、体力的な問題から家から遠いゴミの集積所まで毎回歩いてゴミを持っていくことが難しい、という場合などにはぜひ活用したい制度です。
まとめ
福井県坂井市のゴミ屋敷に対する条例ついて、その条例に基づいた対処方法や条例の特徴、なぜゴミ屋敷となるのかその原因についてご紹介しました。
ゴミ屋敷は片付けたらすぐに問題解決する、というものではありません。
一時的に片付いても、そこに住まう人の気持ちや習慣、考え方などが変化しない限り、元のゴミで溢れた状態に戻ってしまうことがほとんどです。
そのため、自治体はもちろん、福祉や介護、町内会など、様々な機関が協力しあい、根本的な解決を目指していくことが重要です。