北海道陸別町には、ゴミ屋敷に関する条例が定められており、正式名を「陸別町 まちを綺麗にする条例」といいます。
この条例は、国で定められた「廃棄物処理法」をベースにし、2002年「陸別町 廃棄物処理及び清掃に関する条例」とともに制定されました。
陸別町を美しく生活しやすい町にするためにさまざまなことが規定され、守らない場合には罰則も定められています。
では、その内容を見ていきましょう。
目次
北海道陸別町の「ゴミ屋敷に関する条例」とは?
陸別町では、ゴミ屋敷に対応するための条例を定めています。
正式名は「陸別町 まちをきれいにする条例」といいます。
条例の目的とは?
この条例は「陸別町廃棄物処理及び清掃に関する条例のほか、廃棄物の処理及び清掃に関する法律など、生活環境衛生に関する関係法令等の本旨を達成する」ことを旨とし、平成14(2002)年12月に施行されました。
以下の点を目的として施行されました。
- 「星空の街」にふさわしい良好な生活環境を守り、未来に継承していく
- 良好な生活環境の保全・継承が住民一人ひとりに課せられた責務であると認識する
- その上で、町民が一体となって、きれいなまちづくりを目指す
「陸別町 廃棄物処理及び清掃に関する条例」とは?
では、「まちを綺麗にする条例」の兄弟のような「廃棄物処理及び清掃に関する条例」を見ておきましょう。
この条例は、「まちを綺麗にする条例」に先立ち、平成14(2002)年9月に公布されました。
陸別町における、ごみの処理や清掃に関して必要な事項を定めています。
ここでも、国が定めた「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」にもとづいて、陸別町民が健康で快適な生活環境を確保するとともに、以下を促進するために定められました。
- ごみの減量
- ごみの再生利用
- ごみの適正な処理
この条例では、上記の目標のため、さまざまなごみの分類や、町民や事業者、陸別町が負うべき責務について規定しています。
つまり、この条例では、陸別町におけるごみの分別と正しい処分の方法が規定されているというわけです。
「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」とは?
2つの条例がベースとしている「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」についても見ておきましょう。
この法律は、昭和45(1970)年に定められた法律で、ごみの排出の抑制と処理を適正化することによって、生活環境の保全と公衆衛生の向上を目的として制定されました。
「廃棄物処理法」、「廃掃法」と略されることもあります。
この法律では、ごみを減らし、ごみを適正に処分することによって、生活環境を保全し、公衆衛生の向上を図るために作られました。
つまり、国として、ごみをどのように分別し、減らし、処分していくかの基本を定めている法律であると言えるでしょう。
この法律は、都道府県に対しても「基本方針に即して、当該都道府県の区域内における廃棄物の減量その他その適正な処理に関する計画を定めなければならない」としています。
つまり、陸別町では、この法律で規定されている基準に従い、「まちを綺麗にする条例」「廃棄物処理及び清掃に関する条例」を定めたということなのです。
「陸別町 まちを綺麗にする条例」の内容とは?
では、北海道陸別町の、ゴミ屋敷に関する条例について見ていきましょう。
陸別町におけるそれぞれの責務とは?
陸別町に暮らす人々が、きれいな環境と健康な生活を保つ上でしなくてはならないことは何でしょうか。
町の責務(第3条)
陸別町は、第1条の目的を達成するため、町民、事業者、土地所有者などに対して自主的な生活環境の美化に関する意識を高めるための啓発を行わなくてはなりません。
また、そのために必要な施策を講じる必要があります。
町民等の責務(第4条)
陸別町内に住む町民、町内に勤務している人、旅行などで陸別町に滞在する人は、環境美化に関する意識を高めることが求められます。
そのため、自主的な清掃活動など地域環境をきれいにしたり、町が行うきれいなまちづくりのための施策に協力する義務があります。
また、家庭の外で出たごみは自宅に持ち帰ったり、きちんとごみ箱に捨てたりすることによって、ごみが散らからないようにしなくてはなりません。
事業者の責務(第5条)
陸別町内で事業を行う人は、その事業活動から出るごみなどを、良好な生活環境を損なうことのないように処分する責任があります。
ごみを適正に処分するために必要な措置を講じ、負担しなくてはなりません。
また、陸別町が実施するきれいなまちづくりのための施策に協力する責務もあります。
さらに、事業活動で出るごみが散乱しないよう努め、消費者に対して生活環境保全のための啓発も行います。
特に、ペットボトル飲料や缶入り飲料など、容器に入った飲食料などを販売する小売業者は、空き容器の散乱防止について消費者への啓発を行う必要があります。
また、販売する場所やその周辺を清潔に保ち、ごみを散乱させないよう管理に努めなければなりません。
土地所有者の責務(第6条)
陸別町内に土地を所有している人は、占有または管理している土地や建物を常に清潔に保つ責任があります。
また、その土地や建物をごみの不法投棄場所とならないようにするほか、以下の事項の励行に努めなければなりません。
- 空き地は、雑草を除去し、病害虫発生を防止する
- 空き家は、青少年の非行や野良犬、野良猫の溜まり場とならないよう適切な管理を行う
- 公共の場所などに隣接している樹木や生け垣が敷地外にはみ出して、通行を妨げたり、交通の安全に支障をきたしたりすることのないよう管理を行う
ゴミ屋敷に関する条例とは?
陸別町の「まちをきれいにする条例」に「ゴミ屋敷」というワードは出てきません。
また、条例の内容を見ても、「ゴミ屋敷」というワードは使われていません。
では、なぜ、この条例が「ゴミ屋敷に関する条例」であると言われているのでしょうか。
それは、上に紹介した陸別町におけるそれぞれの責務に散りばめられています。
陸別町で生活したり、事業を行ったり、旅行したりする人は、環境に対する意識を高め、ごみを散乱させないよう努める責務があります。
つまり、どんな場所であっても、みだりにごみを捨てたり、放置したりすることはできません。
たとえ自分の家であっても、ごみを散らかしたりすることはNGです。
近隣に悪影響を与えることはできないようになっているのです。
さらに、土地や建物を所有・管理している人には、その土地・建物をきれいに保つ責務があります。
- その土地や建物をごみの不法投棄場所とならないようにする
- 空き地の雑草を除去する
- 病害虫発生を防止する
- 空き家が青少年の非行の温床にならないよう管理する
- 野良犬、野良猫の溜まり場にならないよう管理する
- 樹木や生け垣が敷地外にはみ出さないようにする
これらは、常識的な土地建物管理であると同時に、空き家のゴミ屋敷化を防止することにつながります。
こうして、陸別町で生活する人と土地建物を持つ人への責務という両輪を定めることにより、結果的にゴミ屋敷が生まれないようにしているわけです。
「陸別町 まちを綺麗にする条例」における賞罰とは?
北海道陸別町で、もし条例を守らなかった場合、罰則などは科されるのでしょうか。
勧告・命令(第16条)
もし、この条例の規定に違反している人が認められた場合、町長は、その人に対し、必要な措置を行うよう勧告または命令することができます。
違反者がこの勧告や命令に従わない場合は、関係機関に対して必要な措置を求めることができます。
関係機関への要請(第17条)
ごみが投棄されていることにより、町民の良好な生活環境が損なわれている場合、町長はこの場所の管理者に対して、ごみの回収をはじめ必要な措置を講じるよう要請することができます。
もし、ゴミ屋敷で近隣が困っていたら、その家の住人や管理人に対して、片付けるよう要請できるわけです。
調査(第18条)
ただし、町長は、勧告・命令・要請などを行う際、必要に応じて立ち入り調査を行うことができます。
立ち入り調査を行うのは町長が指定する職員で、関係者から説明・報告を求めることができます。
公表(第19条)
もし、勧告や命令を受けた人が、正当な理由なしに従わない場合、氏名を公表することができます。
ただし、公表前に、その人に意見を述べる機会が与えられます。
表彰(第15条)
規定されているのは罰則だけではありません。
この条例に基づいてきれいなまちづくりに特に寄与している個人や団体は、町長から表彰されることがあります。
また、自発的・継続的な清掃活動を行う人には、町長から必要な支援がされることもあります。
まとめ
陸別町は「日本一寒い街」として有名ですが、星空が美しい街としても知られています。
昭和62(1987)年、環境庁(現・環境省)より「星空の街」に選ばれました。
さらに、平成9(1997)年には「星空にやさしい街10選」にも認定されています。
陸別町は、星にやさしい街づくりだけでなく、美しい環境を守るために街ぐるみで努力しています。