単身高齢世帯は増加に伴い、高齢者宅のゴミ屋敷問題も表面化してきました。
住宅をゴミ屋敷にしたまま親が他界した場合、どのような事態が訪れるでしょうか。
ゴミ屋敷に暮らすような状態では、到底終活も為されていないでしょう。
残された家族には親を失った悲しみに暮れる余裕もないままに、葬儀をはじめとする諸々の手配。
そしてゴミ屋敷の清掃に遺品整理と、何重もの負担がのしかかります。
こういったゴミ屋敷がもたらす悲劇を未然に防ぐ方法として、注目したいのが終活です。
今回は、高齢になった親の住宅をゴミ屋敷化させないための終活の進め方。
そして注意すべきポイントを紹介します。
目次
終活は親と家族が幸せな最期を迎えるための準備
終活は「人生の終わりを自分らしく迎えるための準備」を意味する、比較的新しい言葉です。
人生100年時代が現実味を帯びてきた昨今、息を引き取るその瞬間までよりよく生きたいという思いを強く反映し、広く使われるようになりました。
具体的な終活の内容には、以下のような物があります。
- 身の回りの物品を片付ける
- エンディングノートを書く
- 葬儀や墓の手配をする
- 遺言状を作成する
いずれも最期の時を迎える当時者の思いを尊重しながら、残される家族の負担を軽減するものです。
十分な終活が行われることで、当事者である親は安心して残りの人生を送ることができます。
と同時に残される家族も安心して親を見送り、その後の整理に臨めるでしょう。
終活をしないゴミ屋敷は家族の絆も破壊する
ゴミ屋敷は、住宅を所有する本人の問題に止まりません。
ゴミ屋敷は、行政による強制執行の対象ともなる重篤な社会問題の一つです。
ゴミ屋敷内での孤独死があれば、特殊清掃が必要になります。
病害虫や火災によって、近隣住宅をも巻き込んだ事故を引き起こす原因にもなるでしょう。
一旦ゴミ屋敷になってしまった住宅は、個人の力では到底解決できません。
費用をかけて、片付け業者に清掃、撤去を依頼する必要があります。
親の逝去に伴い発生する葬儀や埋葬先の手配や役所、金融機関での手続き。
その他にもゴミの山の中から必要な品を発掘し、遺品整理するという苦行を全て家族知られます。
しかも、自分自身の生活を営む傍で行わなくてはなりません。
これには想像を絶する苦痛と重圧を伴います。
もし終活によって、印鑑や通帳といった逝去後に必要になるものが整頓され、葬儀や墓の手配、訃報を知らせるべき先の一覧などが整えられていれば、家族の負担は大幅に軽減されます。
しかし高齢単身となった親の住宅がゴミ屋敷化した場合、親自身が終活をしようと自発的に考え行動することは、かなり難しいでしょう。
身体的な老化はさることながら、心理的な問題を抱えてゴミ屋敷化するケースが多いと言われています。
そのため家族は親を亡くした喪失感に浸る間もなく、ゴミ屋敷で途方に暮れるしかありません。
こんな状態では、親に対するネガティブな感情が湧き上がったり、深い心の傷が残る恐れもあります。
ゴミ屋敷の終活を進めるポイント3選
ゴミ屋敷の終活を進める場合、押さえておきたい3つのポイントがあります。
それは、モノ・カネ・ヒトです。
ゴミ屋敷の終活ポイント1:モノの整理
ゴミ屋敷の終活を成功させる最大のポイントが、モノの整理です。
親の住宅がゴミ屋敷になっている場合、必要な物とそうではない物、が分別なく詰め込まれた状態に陥っているでしょう。
物を片付けるにあたっての基準を設けて、親自身の意向を確認しながら慎重に選定作業を進めます。
ゴミ屋敷のモノを就活するステップ1:貴重品をまとめる
まずは貴重品をゴミの中から見つけ出し、一箇所にまとめて保管します。
特に年金手帳や銀行の通帳、印鑑など、親が逝去したあと速やかに手続きしなければならないものについては、親本人と家族のいずれもが分かりやすい箇所に保管しましょう。
ゴミ屋敷のモノを就活するステップ2:モノを減らす
健康に被害を及ぼす不衛生な不用品や、もう使うあてのない日用品は、少しずつ部屋の中から搬出します。
この時、親の自尊心への配慮を大切にします。
たとえ第三者からはゴミ屋敷を埋め尽くすゴミに見えても、親本人にとっては大切な思い入れのある必要な品です。
親の心情を無視して一方的に「ゴミを処分する」といった言葉を口にすれば、終活に対する親の協力を得られず、ゴミ屋敷のまま放置することになりかねません。
また終活は親にとって、自分の老い先が短いことを目の当たりにする時間でもあります。
心理的に不安定になり、より一層ゴミを収集するような事態に陥っては目も当てられません。
親が安全に生活できるように使用頻度の低い物を片付ける、というスタンスで取り組むと良いでしょう。
また搬出する不用品があまりに多い場合は、片付け業者に依頼して一度に引き取ってもらうのがおすすめです。
一気に部屋が片付き、ゴミ屋敷とは無縁の状態に整えることができます。
ゴミ屋敷の終活ポイント2:カネの整理
モノの整理をする段階で、金融関連の書類や印鑑等の場所は確保しているでしょう。
しかしこれで安心ではありません。
最近は電子マネーやインターネット口座、電子株といったデジタル遺品も増えました。
デジタル遺品はセキュリティの管理が厳しく、名義人本人が逝去した後にIDやパスワードパスワードを紛失している場合、残金を引き出せなくなるケースも多々あります。
自分の親はデジタルに疎いので心配ないだろう、と油断するのは危険です。
知人の勧めや興味から、家族も知らないうちにデジタル遺品を作っている可能性があります。
親が元気で記憶がはっきりしているうちに金融資産について確認しておくことが、のちのトラブルを防ぐために重要です。
もし利用していないクレジットカードや銀行口座、月額課金・定額制のサービスなどがあれば、この機会に解約しておくのもおすすめです。
また財産分与が必要になる場合は、親が元気なうちに遺言状を手配するように促すのもよいでしょう。
ゴミ屋敷の終活ポイント3:ヒトの整理
親子といえど、お互いの人間関係を把握するのは不可能です。
万が一の場合、親の訃報を連絡したい人とその人の連絡先も、親と相談して一箇所にまとめておきましょう。
親の交友関係を紐解きながら昔話に耳を傾けることで、家族が知らなかった親の一面に出会い、改めて心を通わせる良い機会にもなります。
単身高齢者の住宅がゴミ屋敷になる原因の一つに、寂しさや心の隙間を埋めるためにゴミに執着している可能性があるとも言われます。
親子で思い出話に花を咲かせる時間を持つことで、ゴミ屋敷再発防止効果も期待できるでしょう。
終活でゴミ屋敷化を防ぐことのメリット8選
終活によるゴミ屋敷化防止には以下の8つのメリットがあります。
- 不衛生なゴミ屋敷で親が心身を病む危険を防止する
- 孤独死を防止する
- ゴミ屋敷による近隣トラブルを避ける
- 行政によるゴミ屋敷への強制執行を避ける
- 親との絆を深める
- 遺品整理の負担を軽減する
- 親が逝去した後の諸手続きがスムーズ
- 親の意向が不明なことや、遺品整理の負担が重すぎることでの家族間での揉め事を防ぐ
親に少しでも長く元気に過ごしてもらいたいのは、全ての家族の願いでしょう。
ゴミ屋敷は住人である親自身の心身を蝕み、近隣や地域との関係を蝕み、家族との絆を壊す恐れがあります。
ゴミ屋敷化する理由は、必ずしも住人本人の望んだ結果ではありません。
加齢によって体力や判断力、認知能力の衰えて掃除する気力をなくし、本意ではないにもかかわらず、ゴミ屋敷化することもあります。
親の住宅にゴミ屋敷化の兆候を感じたら、終活という方法を活用して、ゴミ屋敷になるのを防ぐ行動を起こしましょう。
終活でゴミ屋敷化を防ぐ際の2つの注意点
終活は、ゴミ屋敷化を防ぐのに有効な手段の一つです。
ただし注意すべき点が2つあります。
終活でゴミ屋敷化を防ぐ注意点1:コミニケーション
ゴミ屋敷化を防ぐために終活する場合は、親とのコミニケーションが成否を分けるポイントです。
終活は自分らしく最期を迎えるための整理整頓、と全ての人がポジティブに受け取れるわけではありません。
特に心身が弱ってゴミ屋敷化し始めているような場合、1人で終活することで、より一層心を弱らせる原因になる恐れもあります。
また親の住居をゴミ屋敷と表現したり、所持品をゴミだと決めつけて一方的に廃棄処分することは避けましょう。
親の自尊心を傷つけ、信頼関係を損なう恐れもあります。
ゴミ屋敷には心理的な問題が深く関わっていると言われます。
ゴミ屋敷化を防ぎ、終活を成功させるためには、親と密にコミニケーションを取り、親の意向を確認しながら作業を進めることが重要です。
終活でゴミ屋敷化を防ぐ注意点2:片付け業者の選定
ゴミ屋敷化が進んだ住宅では、処分する品のあまりの多さに、個人では対応しきれないことがほとんどでしょう。
遺品整理業者の中には、終活やゴミ屋敷の清掃サービスに対応する片付け業者もあります。こういったゴミ屋敷の対応もできる片付け業者であれば、重い家財もスタッフがトラックに乗せて搬出、処分しますから、家族の負担を大幅に軽減できるでしょう。
しかし業者の中には悪質な者もあります。
見積もり内容と請求された料金に差異がある。
また、不用品回収や買取を行うために必要な資格を持たずに営業している業者がいるケースもあります。
遺品整理業者に依頼する際はホームページで以下の情報を必ず確認しましょう。
- 不用品回収や買取を行うために必要な資格の有無
- ゴミ屋敷清掃の実績
- サービス内容
- 無料で訪問見積もりがある
- 見積もり金額以上の追加料金を請求をしない
誠実な遺品整理業者を活用すれば、仕事や家庭に追われて忙しい人でも、親の住居をゴミ屋敷化から守ることができます。
まとめ
ゴミ屋敷化防止のための終活は、親自身が最後の瞬間まで健全な心身で安全に過ごすため。そして親が旅立った後に残された家族の負担を最小限にするために有効な手段です。
ゴミ屋敷になっているとしても、住宅も室内の品々も親の所有物です。
家族であっても、一方的な対処はできません。
しかしゴミ屋敷化の兆候があるようなら、親や近隣住人に危険が及ぶ前に、できるだけ早い段階で親と相談する機会を持つと良いでしょう。
ゴミ屋敷防止のための終活は、家族皆が幸せに時間を過ごすためのきっかけになり得ます。