身内や知人の住居がゴミ屋敷になりかけていて、片付けたいと思っているけど、どうしても片付けに動いてもらう事ができない。
そういった問題でお困りの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
住宅の整理収納問題は単純な部屋の散らかりから、ゴミ屋敷まで幅広く存在し、原因も性格的な問題から仕事などで時間が取れないなど原因は多岐にわたります。
そういった原因の一つにセルフネグレクトという心の病気が忍んでいることがあります。
今回はセルフネグレクトとはどういう病気なのか、どうすればゴミ屋敷の原因となる可能性のあるセルフネグレクトという病気を防げるかという事をご紹介していきます。
ゴミ屋敷になりやすい心の病気~セルフネグレクトとは?~
セルフネグレクトとは、自分自身の生活している環境や健康状態が悪化をしていたりしても改善をしようとしない心の病気に掛かっている状態を指します。
一般的なネグレクトは親が子を育てるのを放棄することを指しますが、セルフネグレクトは自分自身の世話を放棄してしまう状態です。
そのため掃除や整理、ゴミ出しなどができずに、ゴミ屋敷や汚部屋になってしまう場合があります。
東邦大学看護学部の岸 恵美子教授(2018年11月時点)によると「健康、生命および 社会生活の維持に必要な、個人衛生及び健康行動、 住環境の衛生もしくは整備を放任・放棄していること」と定義されており、『セルフケアの不足』と『住環境の悪化』のどちらか、もしくは両方が該当する場合にセルフネグレクトであるとされています。
自分自身での改善も放棄してしまっている状態のため、周囲に助けを求めることも無く、そもそも本人は自身の状態を自覚できないことが多いため、自らの行動による改善は非常に困難であると考えられます。
平成24年1月に内閣府の経済社会総合研究所が発表した、「セルフネグレクト状態にある高齢者に関する調査―幸福度の視点から」という研究結果によると、セルフネグレクト状態にあると考えられる高齢者だけでも全国に9,381~12,190人がいると推計されており、少子高齢化が進んでいる現在では更に多くなっている事が予想されています。
また調査結果では高齢者が取り上げられていますが、原因によっては年齢関係なく心の病気に陥る可能性があるため、身近な方で可能性がある方には注意が必要です。
セルフネグレクトの背景や原因
セルフネグレクトになる原因は特定できない事も多いとされますが、身内や親しい人が亡くなった事や家族関係のトラブル、認知症や物忘れ・精神疾患などの問題や、これらの問題に起因した家族や地域などからの孤立や関係悪化なども原因として多いとされています。
高齢者の中には、体力の衰えがあっても、判断能力には問題なく、自身の世話は自身でと考える方もいらっしゃいます。
体力的な問題から、これまで出来ていたことが出来なくなってしまっても、周囲の人に手助けを求めるというのを世間体や気兼ねから避けてしまい、結果的に心の病気と言われるセルフネグレクトになってしまうという事もあります。
また若い世代であっても例外ではなく、近しい人の死や病気が心に大きなダメージをもたらし、40代や50代の方であっても心の病気と言われるセルフネグレクトに陥る例も増えているようです。
セルフネグレクトの原因となる病気
前項でセルフネグレクトとなる複数の原因をお伝えしましたが、その中でも大きな原因が認知症などの病気です。
症例として報告されているのが、以下のものです。
アルツハイマー型認知症
脳梗塞後遺症
アルコール性認知症
前頭側頭葉型認知症
統合失調症
特にセルフネグレクトと認知症や精神疾患の病気との関連はよく指摘されます。
病気を伴わない場合のセルフネグレクトに関しては、金銭の管理や病院での診察などが自身ででき、交友関係もあって人と関わっている場合があります。
しかし、独居の場合の認知症であった場合、心の病気と言われるセルフネグレクトになっていることに気づくことも少なく、周囲も気付くのが遅れ、セルフケア不足が拡大し、結果としてゴミ屋敷になってしまうというケースがあるようです。
セルフネグレクトを防ぐ=ゴミ屋敷化を防ぐ?
セルフネグレクトの大きな問題として、周囲が気付くまで本人の自覚がなかったり、訴えなかったりして発覚が遅れてしまうという事があります。
特に認知症を伴わないセルフネグレクトに関しては、自宅がゴミ屋敷になっていたとしても、交友関係・日常生活を維持し、身体的な不潔も少ないため、周囲の支援が難しいことがあります。
ただし実際には住宅がゴミ屋敷になっている事で感染症などの他の病気や火災の危険性などもあり、最終的には深刻なケースとなることが多くなっています。
心の病気と言われるセルフネグレクトの防止は、本人が周囲に助けを求める事が少ないことから、把握自体も困難です。
さらに自分の行動であるため、法律上での支援に定義されておらず、深刻な状態であっても他者が強引にサービスを受けさせることは難しくなっています。
そのため、いかに関係がある人が状況を気付いてあげて、自覚を促し支援の手を伸ばせるかにあります。
支援者だけで手助けが難しい場合は地域の包括支援センターなども活用し、できるだけ接点を持つようにすることが大切です。
まとめ
セルフネグレクトは少子高齢化の時代、益々増加していく可能性のある心の病気かもしれません。
発覚が難しい心の病気のようですが、身近な人がいるのであれば、ゴミ屋敷になってしまう前に、声をかけてあげることが大切なのではないでしょうか。
なかなか自覚が難しかったり、自身では発信をしにくかったりする心の病気だとしても、もしそういった可能性があるのではと少しでも感じたのであれば、しっかりとコミュニケーションをとり、取り返しのつかない状態(ゴミ屋敷など)になる前に専門家に相談するようにしたほうが良いかもしれません。