- 「道路にまでゴミが溢れ出ている」
- 「ひどい悪臭がする」
- 「住宅の周りに害虫が大量に沸いている」
あなたの近所にも、もしかしたらこのようなゴミ屋敷があるかもしれません。
こうしたゴミ屋敷はどんどん増えており、近隣住民に多大な影響を与えることからも社会問題となっています。
ゴミ屋敷の住人に注意したところで、その人たちは決して片付けをしようとしません。
では、どうすればこうしたゴミ屋敷を根本的に解決できるのでしょうか?
今回はそんな疑問を持っている方のために、ゴミ屋敷の根本的な解決方法について紹介します。
目次
ゴミ屋敷になる原因は3つ
そもそもなぜ、ゴミ屋敷の住人は自宅にゴミを溜めてしまうのでしょうか?
日本でこれほどまでにゴミ屋敷が社会問題化しているのには、変わりゆく家族の形や現在人の忙しさなども関係しています。
物を買いすぎる
物量が増えれば、部屋はどんどん物で溢れます。
買いすぎている自覚があっても、ストレスを解消するために買い物へ走ってしまう方は少なくありません。
ストレスや不安が溜まる度に物が増え、結果的にゴミ屋敷化してしまうケースは若い世代も増えています。
物を捨てられない
物を大事にすることと、溜め込むことは違います。
長年着ていない衣類など明らかに使っていない物でも、捨てることへの対抗心が強いと不要品と割り切れません。
その結果、物が溜まりゴミ屋敷化が進みます。
時間・暮らしに余裕がない
仕事が忙しく、日にちが変わってから帰宅するほど忙しい現代人。
こんな生活では、帰宅後や休日に片付けをする気力など、沸いてくるはずがありません。
深夜・早朝も仕事をしていると、ゴミ出しのタイミングが合わず、家にはどんどんゴミが溜まり悪循環です。
精神的な疾患
病気が原因で、ゴミ屋敷で暮らしている方は少なくありません。
とくに根本原因として考えられるのが、「セルフネグレクト」と「ためこみ症」という2つの疾患です。
セルフネグレクト
セルフネグレクトは「自己放任」とも言われており、自分自身に対する世話を放棄することを意味します。
セルフネグレクトに陥った人は風呂に入ったり、食事をとったり、トイレに行くなど、日常生活を送るうえで欠かせない行動をとらなくなってしまうのです。
当然ゴミ出しや片付けもしないため、自宅はゴミ屋敷と化してしまいます。
ためこみ症
「ためこみ症」とはその名のとおり、物を溜め込んでしまう障害です。
アメリカでは、精神病の一つとして認定されています。
ためこみ症の人は物へのこだわりが異常に強く、捨てることに苦痛を感じます。
さらに収集癖もあるため、色々なところから物を集めてきてしまうのです。
こういった精神的な病は、年齢問わず発症します。
自宅がゴミ屋敷化しやすいだけでなく、社会問題している高齢者の孤独死にもつながります。
このように、ゴミ屋敷化してしまうのは、さまざまなことが要因です。
若者から高齢者まで、誰しも起こりうる身近な問題なのです。
ゴミ屋敷の危険性・リスク
自宅がゴミ屋敷の場合はともかく、近所にゴミ屋敷がある場合も、暮らしにさまざまな危険やリスクを及ぼします。
快適な生活が、1軒のゴミ屋敷によって脅かされる可能性もあるのです。
とくに重大なリスクは3つあります。
害虫の発生
大量のゴミが溜まった不衛生な状況は、害虫にとって快適な場所です。
生ゴミを始め、エサが豊富なゴミ屋敷には、ゴキブリなどの害虫が集まります。
そんな状況が続けば、害虫がさらに繁殖し、近隣の住宅にも害虫が侵入します。
害虫対策をしっかりしていても、ゴミ屋敷そのものが改善されない限り、永遠に害が続きます。
悪臭が漂う
長年掃除をしていないゴミ屋敷は、強烈な悪臭を発します。
悪臭の原因は、放置された生ゴミの腐敗臭や、害虫・害獣の糞尿が主です。
とくに気温が高い夏は、暑さにより、耐えきれないほど臭いが強まります。
次第に、ゴミ屋敷周辺の自宅にも悪臭が漂い、暮らしが不快なだけでなく、洗濯物や布団を外干しできない悪影響も。
火事の危険がある
近所にゴミ屋敷がある場合、もっとも恐ろしいのが火災です。
ゴミや不用品が大量に積み上げられたゴミ屋敷は、一度火が付けばあっという間に燃え広がります。
火の回りが早いだけでなく、コンセントにほこりが詰まって発生する「トラッキング火災」や、放火犯に狙われるリスクもあります。
火種が多いゴミ屋敷で火災が発生すれば、隣家へ燃え移る危険があります。
実際に、ゴミ屋敷で火災が起き、住人が亡くなった事例もあるため、ゴミ屋敷の火災リスクはかなり深刻です。
この他にも、害虫が運んでくるウイルスにより健康被害が出る恐れや、ゴミ屋敷が倒壊による弊害も生じます。
ゴミ屋敷問題は、最悪の場合、命にもかかわる重大な問題です。
安心・安全な暮らしを守るためにも、ゴミ屋敷は一刻も早く解決しなければなりません。
ゴミ屋敷問題 行政の対応は?
今の日本では、ゴミ屋敷そのものを罰する法律がありません。
ゴミを溜めて、近隣に迷惑をかけても、罪に罰することができないのです。
しかし、人命にもかかわるゴミ屋敷の存在は、決して見過ごせません。
ゴミ屋敷問題は年々深刻化し、今や高齢者だけでなく、若者のゴミ屋敷も急増しています。
この状況を受けて、行政でもゴミ屋敷屋敷問題を解決するべく、「条例」を制定する自治体も少しずつ増えてきました。
ゴミ屋敷に対して、行政は次の対応を行っています。
ゴミ屋敷の現状調査
まずは、問題となっているゴミ屋敷について、現地確認を行います。
苦情を元に、ゴミ屋敷の状況や近隣への被害状況を把握することが主です。
溜まっているゴミの量や年月、建物の状態も確認します。
その際、住民(所有者)の家族・知人関係なども、徹底的に調査します。
ゴミ屋敷の住人へ「訪問」「書面」での指導
調査した内容を元に、ゴミ屋敷の住人または所有者へ、行政から指導が入ります。
近隣住民へ状況の聞き取りも行いながら、職員が直接訪問や、書面を行うなどの対応です。
ゴミ屋敷に陥る原因は、精神疾患や痴呆症などさまざま。
金銭面での問題もかかわっていることが多いため、必要に応じてカウンセリングなどを実施している自治体もあります。
ゴミ屋敷改善のサポート
ゴミを撤去することに同意しても、金銭面で難しいというケースは少なくありません。
基本的に、ゴミ屋敷清掃やゴミ回収作業など、ゴミ屋敷片付けにかかわる費用は住人負担です。
こういった費用面の壁にぶつかった時、生活環境を改善するための支援として、ゴミ屋敷片付け費用を負担する自治体もあります。
また、ゴミの片付け業者を自治体が用意したり、ボランティアや協力団体の力を借りたりして片付けを行う場合もあります。
しかし、いずれの対応も、ゴミ屋敷住人の同意がなければ実現できません。
ゴミ屋敷問題を少しでも早く解決するには、住人としっかり向き合い、理解を得ることが必要不可欠です。
ゴミの強制撤去
職員の直接訪問や、書面での指導を行っても、ゴミ屋敷の住人が応じない場合。
繰り返し警告をしても拒絶した場合は、ゴミの強制撤去が行われます。
強制対処は、行政の最終的な切り札です。
ゴミとは言え、個人の所有物を強制的に処分するわけですから、よっぽど深刻な状況にならない限りは行われません。
実際に強制撤去を行う前には、ゴミ屋敷の住人へ警告文を送付します。
全国各地の条例
ゴミ屋敷そのものを罰する法律はないものの、社会問題として大きく取り上げられるようになり、解決への取り組みを行う自治体も増えてきました。
しかし、条例の内容は自治体ごとに違いがあります。
参考までに、東京都足立区の条例内容を見ていきましょう。
東京都足立区「ゴミ屋敷対策事業」
平成25年1月1日、東京都足立区で、ゴミ屋敷の問題を解決するための条例が制定されました。
この条例は、ゴミ屋敷の住人に対して厳しい措置をとると同時に、支援することによってゴミ屋敷の解消を目指したものです。
足立区では区民から相談や苦情があった住宅を確認し、立ち入り調査を実施します。
そのうえでゴミ屋敷だと認めた場合は、住人に片付けをするよう「指導」を行います。
指導後も状況が解消されない場合は、「勧告」「命令」と進んでいく仕組みです。
命令にも従わない場合、ゴミ屋敷の住人は氏名や住所を「公表」されます。
住人が氏名や住所を公表されたくないと思うことで、ゴミ屋敷を片付けることが期待できるでしょう。
それでも解消されない場合は、区が住人に代わってゴミ屋敷を強制的に片付け、かかった費用を徴収する「代執行」が行われます。
ゴミ屋敷を解決する手段
行政の力を借りられる自治体であっても、ゴミ屋敷問題の解決は一筋縄ではいきません。
また、条例化していても、対応までに時間を要する場合もあります。
近隣住民や自分たちで、少しでも解決へつなげたい、そんな時は次の方法を試してみましょう。
- 町内会など地域で結束する
- 大家または管理会社に相談
- 弁護士に相談
- 条例を確認する
近所にゴミ屋敷がある場合、悩んでいるのは自分一人ではありません。
近隣住民に悩みを打ち明け、一致団結して解決策を考えましょう。
また、ゴミ屋敷が集合住宅なら、管理会社や大家へ相談するのも手です。
戸建ての場合は、無料相談サービスなども活用して、一度弁護士に相談してみましょう。
これだけはNG!間違った対処法
ゴミ屋敷問題は早急に解決したいものですが、慎重に行うことが大切です。
無理に対処すると、風向きが悪くなりかねません。
どんなにいらだっても、次の方法は避けましょう。
- 家主と言い争う
- 勝手にゴミを処分する
溜まりにたまったことを言いたくもなりますが、上から目線で話してもゴミ屋敷問題は解決しません。
ゴミとは言え、人の持ち物ですから、許可なく勝手に捨てるのもNGです。
無断に捨ててしまえば、罰せられる可能性もあります。
まとめ
ゴミ屋敷がメディアで取り上げられ、クローズアップされる機会が増えてから、条例化する自治体も増えつつあります。
ゴミ屋敷問題を根本的に解決するのは簡単ではありませんが、悩みを抱え込まず、悩みを打ち明けることが大切な一歩です。
まずはお住まいの自治体に相談し、近隣住民と手を組みながら、解決に向けて動きましょう。