家の外にまで溢れ出るゴミや伸び放題の雑草、悪臭や害虫など、近所のゴミ屋敷問題でお困りの方も少なくないでしょう。
現在日本にはゴミ屋敷問題を規制する法律はありません。
その代わりに、一部の地方自治体では独自にゴミ屋敷を規制する条例を設け、環境を美しく保つことに注力しています。
この記事では、東京都大田区のゴミ屋敷に対する条例(通称:清潔で美しい大田区をつくる条例)の内容について、詳しくステップごとに説明していきます。
大田区ゴミ屋敷条例の特徴
全国の中でもゴミ屋敷に関する条例を定めている自治体は一部であり、多くはありません。
その中でも大田区のゴミ屋敷条例は、ゴミ屋敷条例の最終措置である「行政代執行」というプロセスを含んでいます。
この「行政代執行」とは、ゴミ屋敷住人に代わり大田区がゴミ屋敷のゴミ撤去を行うことを指します。
かかった費用は後、本人へ請求することができます。
この行政代執行が行われるまでには時間をかけ、複数回にわたり区からの訪問や助言が行われます。
そのため、いきなりゴミが強制撤去されるわけではありません。
ゴミ屋敷となる問題の根本的解決のため、必要があれば福祉や介護サービス、町内会などとも連携をとりながら進められていきます。
大田区ゴミ屋敷条例で規制される対象は?
大田区のゴミ屋敷条例で規制対象となるのは、ゴミや雑草などが放置されている状態で、以下の条件のうち一つでも当てはまる場合となります。
大田区ゴミ屋敷条例で規制対象となる条件①健康被害を及ぼす場合
以下のように、近隣住民の健康を害する可能性がある場合、規制対象の条件となります。
- ゴミの堆積により蚊やハエなどの害虫やネズミの発生を引き起こす
- ゴミ屋敷内外の雑草などが開花し、その花粉が原因で近隣住民がアレルギーになる
大田区ゴミ屋敷条例で規制対象となる条件②火災の可能性がある場合
堆積されたゴミや枯れ草などが原因で火事となった場合に、近隣住宅に燃え広がる可能性がある状態は規制対象の条件となります。
大田区ゴミ屋敷条例で規制対象となる条件③ゴミの不法投棄を招く可能性がある場合
不衛生な状態でゴミが堆積され、そこにゴミの不法投棄を招くおそれがある状態は規制対象の条件となります。
大田区ゴミ屋敷条例で規制対象となる条件④交通の障害となる場合
以下の状態は規制対象の条件となります。
- ゴミや雑草が道路にはみ出し通行する車両や歩行者の妨げている
- ゴミや雑草が視覚を遮ることで交通事故を引き起こす危険性がある
大田区ゴミ屋敷条例で規制対象となる条件⑤人の生活環境に悪影響を及ぼす可能性がある場合
ゴミの堆積や雑草から立ち込める悪臭による健康被害や、美観を著しく損ねることで生活環境に悪影響を及ぼしている状態は規制対象の条件となります。
大田区ゴミ屋敷条例に基づく区の対応
実際に大田区にゴミ屋敷があった場合、条例に基づきどのような手順で対応されていくのでしょうか。
その過程をまとめました。
大田区ゴミ屋敷条例に基づく区の対応①立入調査
大田区民から近隣のゴミ屋敷について相談や連絡があった場合、大田区職員によって立入調査が行われます。
ゴミの内容やゴミが堆積している範囲、周辺の状況などを確認します。
さらに、ゴミ屋敷住人の生活環境や健康状態も合わせて確認が行われます。
中には、家族や近所からも孤立して他者とのコミュニケーションを断絶している状態のゴミ屋敷世帯もあり、全ての立入調査をスムーズに行うことができるわけではありません。
その場合、多くの自治体では時間をかけ何度も訪問して、本人との距離を縮めながら少しずつ問題解決へ向かって話し合いを進めていきます。
大田区ゴミ屋敷条例に基づく区の対応②助言・指導
立入調査を行い、ゴミ屋敷条例に基づいた改善が必要と判断された場合には、ゴミの撤去の仕方や清掃方法などについて助言や指導が行われます。
しかし、ゴミ屋敷住人の中には認知症やうつ状態など、自力でゴミ出しを行うことができない場合も多いです。
そのような場合には介護ケアや福祉施設の紹介なども行い、問題の根本的解決を目指します。
大田区ゴミ屋敷条例に基づく区の対応③勧告
複数回にわたる助言や指導に対し、本人が何も改善への取り組みを行わないこともあります。
その場合、大田区は期限を決め、ゴミの撤去や清掃について勧告を行うことができます。
大田区ゴミ屋敷条例に基づく区の対応④行政代執行
勧告に従わず、近隣住民の健康被害や生活環境の悪化、火災や不法投棄などのリスクを招いていると判断される場合もあります。
その状況を改善するため、大田区がゴミ屋敷住人に代わりゴミの撤去を行う「行政代執行」が行われます。
ゴミ屋敷が発生する原因
ゴミ屋敷は一度片付ければ問題が解決されるというものではありません。
たとえ、ゴミの強制撤去を行ったとしても、そこに住まう本人の気持ちや考え方、行動が変わらなければすぐに元通りになってしまう傾向にあります。
どのようなことが原因でゴミ屋敷になってしまうのか、いくつかの要因をまとめました。
ゴミ屋敷が発生する原因①精神的な孤独感
身近な人の他界やペットロスなど、精神的なショックが要因となることがあります。
精神的な孤独感を埋めるように物を集めたり、たくさんの物に埋もれて生活することが心地よく感じ、物が増えていく傾向にあります。
ゴミ屋敷が発生する原因②もったいない精神
捨てるにはもったいない、まだ使えるからとっておこう、というもったいない精神により、不用品が廃棄されず増え続けることになります。
その結果、家の中や場合によっては外にまで物が溢れ、堆積するようになります。
ゴミ屋敷が発生する原因③ゴミの収集癖
ゴミ屋敷住人の中にはゴミの収集癖がある人もいます。
近所のゴミステーションからゴミを拾ってきては家に溜め込みます。
周囲から見るとゴミでも、本人にとっては価値のあるものと判断している場合が多いです。
ゴミを集めることが習慣となっているため物が増えていきます。
ゴミ屋敷が発生する原因④心身の健康状態によるもの
認知症やうつ病、怪我や事故などにより自力でゴミ出しが難しいケースもあります。
このような場合は自治体だけでなく、福祉や介護ケアサービス、町内会やボランティア団体などの協力を仰ぎ、問題解決に向けて対応していく必要があります。
まとめ
東京都大田区のゴミ屋敷条例について、その特徴や条例に基づいた対応の手順などを詳しく解説してきました。
ゴミ屋敷は放置しておくと悪臭や害虫・ネズミなどによる健康被害、火災や放火、不法投棄などを招くリスクが高まります。
もし、近所にゴミ屋敷がある場合、まずは大田区役所へ相談してみましょう。