ゴミ屋敷問題は特定地域だけのものではなく、全国的な問題となっています。
問題の要因・背景は様々ですが、法律ではなく、条例にて対応しなければならないことから、地域によって対応策が異なる点が挙げられます。
ゴミ屋敷問題解決のために、いち早く条例を制定した地域もあれば、未だにゴミ屋敷問題の糸口さえ見いだせない地域もあるなど地域差が顕著です。
愛知県岡崎市ではゴミ屋敷問題をどのようにとらえているのか、様々な点から解説していきましょう。
目次
愛知県岡崎市とゴミ屋敷問題
愛知県岡崎市は徳川家康が生まれたことで知られている、歴史と由緒のある街です。
名古屋市、豊橋市のほぼ中間に位置することから、双方のベッドタウンとして知られています。
しかし、岡崎市にはゴミ屋敷に関する条例がありません。
決してゴミ屋敷問題を無視しているのではなく、既存の条例に組み合わせることで問題を解決しようとしている、全国的に珍しい地域です。
岡崎市に用意されている条例
岡崎市にはゴミ屋敷を想定しているであろう条例はありませんでした。
ゴミ屋敷問題の解決策に迎合できるのではと囁かれている「岡崎市生活環境保全条例」が平成18年(2006年)に制定されました。
この条例の名称からも分かるように、生活環境全般にかかわる条例で、以下に関する協定が定められています。
- 大気汚染や水質汚濁
- 土壌や地下水汚染
- 騒音の防止策
- 環境保全
この条例は、基本的には事業者向けのものであり、条文からはゴミ屋敷は該当しないと考えられます。
条例改正の必要性
ゴミ屋敷問題は日増しに高まっています。
岡崎市だけではなく、全国各地にてゴミ屋敷問題がクローズアップされるようになっています。
既に条例化を実現した地域もあれば、条例に基づき、行政代執行を行った行政もあります。
それらの地域と比較すると、岡崎市はゴミ屋敷に関する条例は遅れていました。
岡崎市が定めた条例は、あくまでも事業者が市民に何らかの形で危害を加えている・及ぼしている場合を想定したものです。
ゴミ屋敷のように、個人が周辺個人に対して迷惑を及ぼすものに対しては、何ら想定されていませんでした。
そこで岡崎市も動きました。
ゴミ屋敷条例制定のための動き
平成27年(2015年)、ゴミ屋敷条例の制定のために、岡崎市が動きました。
この背景に、同年の8月、県内豊田市にて発生したゴミ屋敷火災が挙げられます。
それまでにも、強制性のある条例の制定を求める声がありましたが、ゴミ屋敷にて火災が起きたことで、行政側も動くことになりました。
既にその段階で岡崎市には7戸のゴミ屋敷を確認していたことから、まずはパブリックコメントを募集しました。
識者だけではなく、一般市民からも意見を求めるなど、ゴミ屋敷条例の制定への動きが加速しました。
そして平成28年(2016年)、条例にゴミ屋敷も該当する条文が組み込まれることとなりました。
岡崎市の条例の特徴
平成28年、岡崎市でもゴミ屋敷問題解決のための条例が追加されました。
他の地域のゴミ問題条例同様、行政による強制的な問題解決が可能となりました。
しかし、岡崎市ならではな特徴もあります。
その点をいくつかご紹介しましょう。
条例の制定ではなく追加で対応した
岡崎市には元々「岡崎市生活環境保全条例」がありました。
こちらに文言を追加挿入する形で、ゴミ屋敷問題にも対応できるようにしたのです。
多くの自治体は、ゴミ屋敷問題解決のために新しい条例を作成しました。
つまり、ゴミ問題のための条例です。
しかし、岡崎市の場合、ゴミ問題のためではなく、既存の条例にゴミ屋敷問題を想定した文言の追加にとどめました。
景観保護などを盛り込んでいるなど、ゴミ屋敷を意識した点が多々見受けられるものの、まだまだ条例としては不十分なのではとの声もあります。
なぜ新規条例ではなく既存条例に追加したのか
一からゴミ屋敷問題解決のためだけの条例を作るのではなく、既存条例に文言を追加する形で条例改正にしたのかは様々な事情が考えられます。
その一つは、スピード感を重視したと考えられています。
岡崎市でもゴミ屋敷問題解決のための条例作成の声が強まっていました。
その中で、豊田市にてゴミ屋敷で火災が起きました。
一から時間をかけて条例を作るよりも、条例改正で対応した方がスピーディーだと判断したとされています。
支援策が弱い条例との指摘がある
他の地域のゴミ屋敷条例と比較すると、支援策が弱いとの声もあります。
他の地域のゴミ屋敷条例は、ゴミ屋敷を綺麗にするだけではなく、ゴミ屋敷居住者の社会復帰や再発防止も盛り込まれています。
例えば行政代執行の費用の減免措置や、社会福祉的観点による再発防止策を盛り込んでいる条例もあります。
しかし、岡崎市の場合、これらが欠けているとの指摘があります。
つまり、あくまでもゴミ屋敷を綺麗にするための条例であって、ゴミ屋敷居住者への支援策は、条例からは見られません。
岡崎市に見るゴミ屋敷条例制定の難しさ
岡崎市では条例改正にてゴミ屋敷問題対策のための条例を整備しました。
しかし、問題点があるとの指摘があるのも事実です。
このことからも、ゴミ屋敷問題の条例制定は決して簡単ではないことが伺えます。
ゴミ屋敷とはという根本的な問題
まず、そもそも「ゴミ屋敷とは」という問題が挙げられます。
テレビ・マスメディア等で面白おかしく興味本位で取り上げられるゴミ屋敷ですが、定義付けるのは難しいです。
何をもってしてゴミ屋敷と定義するのか決めなければ、対策を講じることもできません。
しかし、安易にゴミ屋敷を明文化すると、周囲に迷惑をかけているわけではない住宅までもがゴミ屋敷に該当してしまうケースもあります。
そのため、ゴミ屋敷条例を制定しているほかの地域においても、ゴミ屋敷の定義は少々曖昧なものにしています。
ゴミ屋敷問題の解決とは何かという問題
ゴミ屋敷問題を解決するための条例ではありますが、そもそも何を以ってして解決とするのかも異なります。
ゴミ屋敷そのものを綺麗にするのか、ゴミ屋敷を生み出した居住者の更正なのか、周辺住人が納得することなのかなど、問題解決の定義も難しいものです。
実際、他の地域にて行政代執行が行われた際の居住者支援に対しておかしいとの声を上げた周辺住民もいました。
条例が何を目的としたものなのか、周知徹底していないとこのような問題が起きる事例であり、条例の理解の難しさと言えるでしょう。
ゴミ屋敷以外にも問題がある
岡崎市に限らず、どの地域もゴミ屋敷以外にも様々な問題があります。
特に他に大きな問題が発生してしまった場合、一部の特定案件は後回しにされてしまう傾向にあります。
今後ゴミ屋敷問題解決のための条例をと考えている地域もあります。
しかし、他に大きな問題が発生した場合、結局は後回しにせざるを得ないので、条例制定に時間がかかってしまいます。
岡崎市からも分かるゴミ条例の難しさ
愛知県岡崎市のゴミ屋敷対応策を見てみました。
ゴミ屋敷のための条例ではなく、既存の条例に文言を追加する形となったことで、支援策としては弱いのではとの声もあります。
しかし、条例は必要に応じて変えることができるものです。
新しく作ることもできれば、変化させることもできます。
そのため、問題点がさらにクローズアップされたり、指摘されていた問題点が現実となった時には、更なる条例改正の動きが見えるかもしれません。
いずれにせよ、ゴミ屋敷に関する条例は各地域によって異なるものであることが分かっていただけたのではないでしょうか。