2019年9月14日に発売された、朝日新聞出版が出版する人気雑誌「AERA(アエラ)」の増大号で、孤独死の記事が取り上げられました。
この記事では、孤独死現場のミニチュアの写真が、作成者の想いとともに掲載されています。
今回は、AERAに掲載された孤独死のミニチュアを紹介したうえで、そこから読み取れる孤独死の原因について考察していきます。
目次
孤独死のミニチュアに込められた想い
AERAで紹介された孤独死のミニチュアの作成者は、遺品整理と特殊清掃の仕事をされている女性のようです。
特殊清掃は事故現場清掃とも呼ばれており、孤独死や自殺などがあった部屋を清掃する仕事です。
ミニチュアの作者は孤独死の現場で作業することが多く、清掃を担当する年間約370件の現場のうち、約4割を孤独死現場が占めているそうです。
作者が孤独死のミニチュアを作り始めたきっかけは、毎年夏に開催されている、葬祭業界の展示会の「エンディング産業展」だったそうです。
それまでは孤独死現場の写真を展示していたそうですが、あまりの凄惨さに見る人がショックを受けてしまったり、報道の際にはモザイクがかけられてしまっていたようです。
「孤独死は自分にも起こり得ることなのに、そのことが写真では伝えられない。」
そう感じた作者の方が選んだ手段が、孤独死の現場をミニチュアで再現することでした。
ミニチュアでは、実際に目にした孤独死現場の特徴が忠実に再現されています。
孤独死のミニチュアにはどんなものがある?
今回、AERAで紹介されたミニチュアは以下の4つです。
- ペットが残されたままの汚れた孤独死現場
- 孤独死現場の浴室
- 孤独死現場のゴミ屋敷
- きれいに片付けられた、自殺による孤独死現場
では次から、それぞれのミニチュアがどんなものなのか紹介したうえで、そこから読み取れる孤独死の原因について考察していきます。
孤独死のミニチュア①ペットが残されたままの汚れた現場
1つ目のミニチュアは、汚れた部屋のなかで、遺体があったと思われるスペースと、その側に数匹の猫が佇む様子を再現したものでした。
この孤独死現場では、家主が亡くなって数ヶ月経ってから遺体が発見され、数匹の猫が餓死寸前の状態で残されていたそうです。
年老いて動けなくなったまま孤独死
このミニチュアの部屋の布団や畳はひどく汚れているものの、ゴミが散乱している様子は見て取れませんでした。
布団や畳の汚れは、家主の腐敗体液(人が亡くなって腐敗した際、体から出る体液)によるものかもしれません。
先ほども説明したとおり、この部屋の家主は、死後数ヶ月経ってから発見されました。
このことから、家主は体の調子が悪かったものの、病院に行く体力もなく、近くに頼れる人もいなかったことが推察されます。
高齢になれば、病気になったり、体力がなくなるのは自然の摂理です。
自力で病院に行けず、近くに頼れる人もいなければ、孤独死してしまう確率は高いと言えるでしょう。
孤独死のミニチュア②浴室の現場
2つ目のミニチュアは、孤独死現場となった浴室を再現したものでした。
バスタブのお湯は真っ赤に染まり、そこから溢れ出した赤い液体がタイルに染み付いています。
風呂場が孤独死の現場になることは、珍しくありません。
風呂では遺体の腐敗が進みやすく、発見時に原型を留めていないケースが多くなっています。
風呂に入った状態で倒れて、誰にも発見されずに孤独死
こちらのミニチュアからは、何らかの持病を抱えている高齢者が風呂で意識を失い、そのまま亡くなったことが推察できます。
家主が家族と暮らしていれば、風呂で意識を失っても、発見されて助かったかもしれません。
しかし一人で暮らしていれば、誰も異変に気づけません。
高齢者や命に関わる持病を持っている人は、一人で暮らしている場合、いつこのような事態に襲われても不思議ではないと言えるでしょう。
孤独死のミニチュア③ゴミ屋敷の現場
3つ目のミニチュアでは、孤独死現場がゴミ屋敷状態になっていました。
部屋にはゴミ袋や雑誌、食べ物の袋などが散乱しています。
このように孤独死では、現場がゴミ屋敷になっているケースも非常に多くなっています。
セルフネグレクトによる孤独死
このミニチュアからは、家主が「セルフネグレクト」、もしくはそれに近い状態になって孤独死してしまったことが推察されます。
セルフネグレクトは、日常生活に必要な自分の世話を一切しなくなってしまう精神障害です。
セルフネグレクトは、ゴミ屋敷を生み出す要因の一つとなっています。
しかし、より厄介なのは、セルフネグレクトに陥った人は食事もとらず、体調が悪くても病院に行かないということです。
そのため、誰にも気づかれなければ、そのまま孤独死してしまう確率が高くなっています。
孤独死のミニチュア④きれいに片付けられた、自殺による現場
最後のミニチュアは、自殺があった部屋を再現したものです。
部屋にはロフトにつながるはしごが掛けられており、その上の方にはロープが結ばれています。
遺体があったと思しき場所のすぐ下にはブルーシートが敷かれており、血溜まりのようなシミが残っています。
壁にはビニールテープで、「ゴメン」の文字が残されています。
この部屋は、家具がきれいに片付けられた状態になっていました。
他の人に極力迷惑をかけないで済むようにした、家主の心情が読み取れるようです。
自殺による孤独死
孤独死のなかには、このように家主が自殺してしまうケースもあります。
自殺の動機は人それぞれですが、そのなかには孤独に耐えかねてというケースも、きっとあるでしょう。
誰とも関わることができない寂しさが原因で自殺してしまったのなら、それは本当の意味での孤独死と言えるかもしれません。
まとめ
ここまで、孤独死現場のミニチュアをもとに、孤独死の原因について考察してきました。
ミニチュアから推察できる、孤独死の主な原因は以下3点です。
- 自宅内で倒れ、誰にも発見されず、そのまま亡くなってしまう
- セルフネグレクトに陥り、衰弱死してしまう
- 自殺
これらの孤独死の原因はどれも、誰かと一緒に暮らしていれば、防げた可能性も十分あったはずです。
もし、あなたの身内に高齢者や持病を持っている人、セルフネグレクトのような状態になっている人がいて、一人暮らしをしているのなら、孤独死してしまう可能性も十分あると言えるでしょう。
そうならないように、一緒に暮らしたり、施設に入所させるなどの対策をとるようにしましょう。