京都市は文化遺産が多々残されていることから、世界的な観光地として知られていますが、そこで暮らしている住民もいます。
他の地域同様、自治体として様々な問題に取り組んでいますが京都市でも無視できなくなっているのがゴミ屋敷問題です。
京都市は、どのようなゴミ屋敷対策を行っているのか、条例から見てみましょう。
目次
京都市不良な生活環境を解消するための支援及び措置に関する条例
京都市ではゴミ屋敷だけの条例はありませんが、「京都市不良な生活環境を解消するための支援及び措置に関する条例」にゴミ屋敷対策が包括されていると考えることができます。
京都市不良な生活環境を解消するための支援及び措置に関する条例についてご紹介します。
第21条からなる条例
京都市が策定した京都市不良な生活環境を解消するための支援及び措置に関する条例は、第21条からなる条例です。
いずれも「ゴミ屋敷」との文言は使用されていませんが、明らかにゴミ屋敷を指したと思われる文言が多数記載されています。
そのため、自治体がゴミ屋敷問題を解決するための根拠となる条例と考えてよいでしょう。
予防、解消、支援が盛り込まれている
京都市不良な生活環境を解消するための支援及び措置に関する条例には、ゴミ屋敷の予防、解消、さらには支援策まで盛り込まれています。
ゴミ屋敷の解決とは、ゴミを撤去するだけではなく、ゴミ屋敷居住者を支援することでゴミ屋敷の再発を防ぐことです。
それらが条例に盛り込まれているので、いわばフルスペックのゴミ屋敷条例だと考えることができます。
具体的な支援策
京都市では、ゴミ屋敷の支援策として福祉と連携します。
決してゴミを撤去するだけではなく、住居者が必要とする医療や介護などと連携し、改善を促します。
また、ゴミ屋敷問題は孤独とも密接にかかわっていると考えていることから、市民に協力を呼び掛けています。
例えばゴミ屋敷ではなくても、ゴミ屋敷化しそうな雰囲気のある家があれば連絡をしてもらいたいとのことです。
また、普段から地域で声がけや見守りといった、孤独防止のための協力を京都市としてお願いしています。
行政代執行まで制定されている
京都市不良な生活環境を解消するための支援及び措置に関する条例では、住居者への勧告、そして勧告に従わなかった場合の行政代執行まで明文化されています。
また、行政代執行の負担者が居住者であることも記載されています。
つまり、ゴミ屋敷の居住者が指導を行っても改善しなかった場合、条例に基づいて勧告、さらには行政代執行が可能です。
京都市のゴミ屋敷の考え方
京都市不良な生活環境を解消するための支援及び措置に関する条例は、立入調査から代執行、さらには費用の請求まで明文化されています。
ゴミ屋敷に関するフルスペックの条例であることが分かります。
そんな京都市では、ゴミ屋敷をどのように捉えているのでしょうか。
ゴミ屋敷の定義
京都市では、ゴミ屋敷を以下の3点にて住民の生活環境に影響を及ぼしている状態だと定義しています。
- 衛生面
- 防災面
- 防犯面
また、ゴミ屋敷と定義する際には、区役所や支所、関係部署・期間にて対策会議を開催し判断するとしています。
ゴミ屋敷への基本的な取り組み
京都市では、基本的にできる限り住居者が問題を解消をするようにと考えています。
勧告だけではなく、行政代執行や支援策も盛り込まれていますが、できれば行政が動くのではなく、あくまでも住民の自主性にて解消することとしています。
しかし、社会的孤立や病気などで自力での解決が難しい人もいます。
そのような人のゴミ屋敷対策や支援策として、京都市不良な生活環境を解消するための支援及び措置に関する条例を位置付けています。
つまり、行政が主導権を握るためのものではなく、あくまでも人に寄り添った条例だとしています。
京都市ならではな問題点とは
京都市は世界的にも有数の観光地ですが、その理由は多くの文化財があるなど、歴史のある街だからこそです。
しかし、だからこその問題点や京都市が抱えている問題もあります。
京都市がなぜ、できれば条例に頼らず住人の自主性に委ねたいのか、いくつか理由を見てみましょう。
観光客とゴミ問題
京都市は、特定エリアだけが観光地なのではなく、街全体が観光地です。
例えば世界遺産にも登録されている清水寺や金閣寺の周辺でも住民が生活を送っています。
しかし、観光客が多く押し寄せることで、地域のマナーを守らずにゴミを捨ててしまうケースが珍しくありません。
特に京都には古民家が多いです。
他の地域の人間にとっては珍しいものでも、そこ人が住んでいます。
そのため、観光客がゴミを捨てるなど困っている古民家の住人もいます。
街全体でゴミ問題に悩まされている京都
ゴミ屋敷ほど深刻ではないにせよ、街全体としてゴミ問題に悩まされているのが京都市です。
ましてや外国人観光客には言葉も通じませんので、なかなかルールの徹底が難しい部分もあります。
ゴミ問題への意識は高い
京都市ではゴミ問題が顕在化していることから、ゴミ問題の意識は高いと考えることができます。
例えば京都市の年に一度のお祭りである祇園祭では、「ゴミゼロ運動」が行われています。
常に祭りの後、ゴミが散乱していることから問題が顕在化し、ゴミゼロ運動が始まりました。
このように、市民のゴミ問題への意識が高まりを見せているからこそ、ゴミ屋敷もできれば住民の自主性で解決してもらいたいと考えているのでしょう。
ゴミ屋敷化してしまうと解決が難しいケースがある
京都はかつては日本の都として栄えていた街です。
数百年以上も都として栄えていた街の区割りが現代社会にも残されている点が京都の魅力です。
一方、法律ができる前の区割りとなっていることから、現代の法律では許されないような街の区割りもあります。
車一台通るのがやっとの場所や車が通ることさえ困難な場所に家屋が立っているケースもあります。
自主性を重視したい京都
もしも、そのような場所にある家屋がゴミ屋敷となってしまった場合、条例が制定されているとはいえ、代執行となれば行政としても大きな労力を必要とします。
そのため、できれば住人の自主性で問題を解決してもらいたいとの思惑があります。
行政の台所事情が苦しい
近年、京都はとある話題で名前を聞くことが増えています。
それは財政難です。
世界的な観光地ではありますが、コロナ禍によって観光客が減少し、結果、税収まで減少したことで財政破綻するのではないかと囁かれています。
財政を切り詰めなければならない状態なので、公共サービスの値上げ、あるいは事業の切り上げを行っています。
つまり、いくら費用を後から請求できるとはいえ、未回収リスクもある行政代執行は、できれば京都市としては避けたいところなのです。
山間部も多い京都市
京都市といえば観光地として知られていますが、京都市は決して平野部だけでなく、山岳部も抱えています。
むしろ山岳部・森林部の方が面積が大きいほどで、他の地方同様、過疎化が進んでいます。
そのようなエリアでゴミ問題が勃発してしまうと、そもそも地域住人も少ないことから発見が遅れ、ゴミ屋敷問題がより深刻化するリスクもあります。
山間部ともなれば移動や作業の手間もかかるので、できれば住人が自主的に解決できないかと考えている部分もあるのでしょう。
京都市は条例だけではなく住民意識でゴミ問題に対応している
京都市では、京都市不良な生活環境を解消するための支援及び措置に関する条例が用意されています。
しかし、条例に頼るのではなく、住人の自主性こそ肝で、条例はあくまでもその補助と位置づけています。
その理由は様々ですが、歴史のある街だからこその苦労が垣間見えます。