熊本県合志市では合志市美しいまちづくり条例を制定することでゴミ屋敷対策をと考えています。
いわゆるゴミ屋敷のための専門的な条例ではなく、美しいまちづくりのための条例で、ゴミ屋敷対策専門ではなく、包括した条例となっています。
そこで合志市美しいまちづくり条例でゴミ屋敷対策としての根拠となる条例をご紹介します。
さらに、果たして合志市美しいまちづくり条例にてゴミ屋敷対策となるのか等をみてみましょう。
目次
合志市美しいまちづくり条例について
熊本県合志市にて制定している合志市美しいまちづくり条例について、ゴミ屋敷対策になる部分をご紹介します。
第3条全般
合志市美しいまちづくり条例の第3条は4項まで制定されていますが、ゴミ屋敷対策の根拠に成り得ると考えられます。
合志市が清潔で美しい町づくりを推進する点、市が必要な協力を要請・指示できる点、施策の実施にあたって関係機関と連携することが定められています。
つまり、ゴミ屋敷が発生した際、市が住居者に対してゴミ屋敷改善の指示を出すこと、さらには具体的施策を打ち出すことも可能です。
第4条全般
第4条では合志市住民は美しい町づくりのための施策に協力し、環境美化に努めるよう定められています。
また、住民は土地を不良な状態にしてはならない点や、近隣の住民と協力することなどが定められています。
この条例はゴミ屋敷の抑制の根拠に成り得ると考えられます。
第7条
第4条の違反を発見した場合、市長に連絡することを努めるようにと定められています。
また、連絡を受けた合志市長は必要だと判断した場合には、通報するなどの措置を講ずることができると定めています。
第8条
第4条に違反している場合、立入調査ができることや立入調査の行使者のルールを制定しています。
つまり、ゴミ屋敷に対して身分を提示したうえでの立入調査の権限が認められていると判断できます。
第9条
指導や勧告が定められています。
合志市長が土地が不良な状態にあると認めた場合、居住者に対して改善のための措置を行えると共に、改善措置勧告、さらには指導が可能だと定めています。
第10条
第10条では合志市長が勧告したものの、それでもまだ状態が改善されない場合には期限を定めて命令を下すことができると定めています。
但し、命令を行う場合には審査会の意見を聞くことも定められていますので、市長の独断で勝手に勧告や命令を行えるわけではありません。
第11条
第10条で定めた命令を下す際には弁明の機会を与えるよう制定されています。
第12条
第4条第2項に違反しているものの、以下の理由に該当し、正当な理由がない場合には指名や内容を公表できると定めています。
- 第8条で定めている立ち立入調査を拒否した
- 第10条で定めている命令に従わない
第13条
ゴミ屋敷居住者が正当な理由がないにも関わらず、命令に従わない場合には行政代執行を認めています。
また、行政代執行の費用は居住者に徴収できることも定められています。
合志市美しいまちづくり条例の特徴
熊本県合志市が制定している合志市美しいまちづくり条例では、ゴミ屋敷を対象にしている条例が多々用意されていることが分かります。
決してゴミ屋敷のためだけの条例ではありませんが、他の自治体のゴミ屋敷対策の条例と比較しても、決して見劣りしないものとなっています。
行政代執行や費用面まで制定されている
いわゆるゴミ屋敷条例では、行政代執行まで制定されているだけではなく、行政代執行の費用の請求まで定められています。
これにより、行政としても行政代執行が税金で執り行われるものではなく、あくまでも居住者負担にて作業を行える根拠となっています。
合志市美しいまちづくり条例でも費用請求まで定めていますので、他の自治体のゴミ屋敷条例と比べて決して見劣りしないものとなっています。
市長の独断ではなく審査会も規定されている
合志市美しいまちづくり条例では市長に様々な決定権が定められている一方で、市長の独断で決めるのではなく、行政代執行に関わる部分は、審査会の意見を聞くよう定めています。
つまり、合志市長が独断で勝手に行政代執行まで実行できる訳ではありません。
仮にですが、ゴミ屋敷住居人が合志市長と因縁があるなど、個人的関係があるとしても、市長権限による私怨での勧告や行政代執行までは許されていないことになります。
支援策に関しては具体的文言がない
合志市美しいまちづくり条例は他の自治体のゴミ屋敷条例同様、行政代執行や費用面まで記載されている一方で、支援策に関しては具体的な文言はありません。
第4条で定めている「市の施策に協力する」という文言が支援を含めると解釈することもできますが、勧告や命令、行政代執行まで詳しく定義されている点と比較すると、支援策は具体的ではなく、幅広く解釈できる文言となっています。
支援策の重要性
ゴミ屋敷に対して行政代執行が敢行されたケースは全国で何件かあります。
しかし、行政によって堆積物を撤去され、綺麗になったものの再びゴミ屋敷に戻ってしまったケースが何件かあります。
これは、ゴミを撤去するだけでは根本的なゴミ屋敷対策にはならないことを意味しています。
根本的な解決のためには堆積物の撤去と共に、ゴミ屋敷住居者の支援等、再発防止策が求められます。
合志市のゴミ屋敷問題
行政は問題があった時に動くスタンスです。
そのため、合志市美しいまちづくり条例を見るとゴミ屋敷問題を想定していることが伺えます。
合志市のゴミ屋敷問題についてもリサーチしてみました。
ゴミ屋敷問題は顕在化されていない
熊本県合志市では、ゴミ屋敷問題は顕在化していません。
行政代執行も行われていません。
その点では、合志市美しいまちづくり条例は行政としては珍しい、ゴミ屋敷対策を未然に防ぐために策定された条例だと考えることができます。
熊本県全体で見てみると空家の問題がある
合志市だけではなく、熊本県全体で見てみると、ゴミ屋敷よりも空き家の問題が多いです。
ゴミ屋敷に関する行政代執行は確認されていないのですが、空家に関しては略式代執行によって、除却を実施したケースがあります。
そのため、ゴミ屋敷に関しても決して他人事ではなく、前向きに条例化に動いたと判断することができます。
空家問題対策の一環と考えることもできる
合志市美しいまちづくり条例について、ゴミ屋敷対策という観点から紹介しました。
しかし、見方を変えれば空家に該当する条例もいくつかあります。
例えば第9条では「土地等が不良な状態にあると認めるとき」とありますが、これはゴミ屋敷だけではなく、空家も該当すると解釈できます。
合志市美しいまちづくり条例はゴミ屋敷と空家対策のハイブリッド条例
熊本県合志市が制定している合志市美しいまちづくり条例は、ゴミ屋敷だけを想定したものではなく、空家対策としても十分に機能する、ハイブリッドな条例であることが分かります。
熊本県、ひいては九州では空き家が問題となっています。
そのため、空家対策としての条例が求められる一方で、ゴミ屋敷対策も包括させたとなれば、全国的に見ても実効性の高い条例だと考えることができます。