孤独死の現場に残された故人の持ち物は、遺族・関係者にとって大切な遺品です。できれば手元に置いておきたいところですが、勝手に持ち出してしまうとトラブルになる可能性があります。
かといって、清掃作業を行う業者に全て任せるのも不安を感じ、遺品の扱いについて悩む人は少なくありません。孤独死で亡くなった人の遺品は、正しい手順を踏んで安全に保管することが大切です。孤独死による遺品整理の流れと、必要な費用を詳しく解説します。
目次
孤独死の部屋に残された遺品はどうなる?
孤独死した人が残した遺品の扱いは、主に次の3パターンに分かれます。
- 国庫に入る
- 法定相続人が相続する
- 遺言書に従って管理される
どのパターンになるかは、故人の家族関係や生前の状況によって決まるため、勝手に持ち出したり管理方法を決めたりしてはいけません。必ず事前に確認し、トラブルを回避しましょう。孤独死の部屋に残された遺品はどのように扱われるのか、以下で詳しく解説していきます。
身寄りがない場合、死亡した人の財産は国庫に入る
孤独死した人に身寄りがない場合、故人の財産は国庫に入ります。根拠となるのは、民法第959条で定められている、『残余財産の国庫への帰属』という決まりです。
財産(遺産)の全体金額から債権(支払いや借金の返済)を差し引いて余った残りの財産を、残余財産と言います。身寄りがない人が亡くなった場合、故人の財産がどのくらいあるのか、本当に法定相続人がいないかなどの調査が行われ、完全に相続人がいないと判断されたら、残余財産が国庫へ入る仕組みです。
法定相続人や特別縁故者が相続する
法定相続人とは、孤独死した人の配偶者や子供・両親・祖父母や兄弟のことで、簡単に言うと直属の血縁者です。特別縁故者は、血縁者ではないが家族のように親密な関係にあった人のことで、故人と同じ生計で生活していたり、食事のお世話や介護のお手伝いなどをしていた人が該当します。
特別縁故者が遺産を相続するためには、家庭裁判所で「特別縁故者に対する相続財産分与の申立て」を行わなければなりません。さらに、法定相続人がいた場合はそちらが優先されるので、法定相続人の次に相続権がある人、と理解しておきましょう。
遺言書の内容に沿って相続されることもある
孤独死した故人が生前に遺言書を残していた場合、法定相続人・特別縁故者の有無に関わらず、遺言書の内容に沿って相続されることもあります。法的に有効なのは、全文自筆で正しい方法で作成されたり、公証役場の公証人や弁護士・司法書士が作成した遺言書です。
パソコンで作成されたものや、ビデオなどの動画に残された遺言書に効力はなく、正しい遺言書でなければ相続権は優先されません。孤独死の現場では、故人が残した遺言書を探すケースもよくありますが、勝手に部屋の中に入ったり遺品を扱ったりすると、トラブルを引き起こしやすいので控えてください。
孤独死があった現場の遺品の多くは処分品になる
孤独死があった現場に残された遺品は、遺族や関係者にとっては大切な品物でも、多くの場合は処分品になります。なぜなら、発見されるまで放置されたご遺体は、亡くなった直後から腐敗が進んでおり、遺品に体液や臭い・細菌が付いている可能性が高いからです。
たとえ手袋をつけていたとしても、孤独死の現場にあった遺品は感染症の危険があるため、原則としては処分が推奨されています。
故人の財産や相続に関係する書類は残さなければなりませんが、基本的に孤独死した現場にあった遺品は、健康被害を受けるリスクが高いと考えておきましょう。
孤独死現場の片付け・清掃にかかる費用
孤独死の現場は、ご遺体の腐敗や体液による室内汚染、害虫などの被害があるため特殊清掃が必須です。また、孤独死の現場は物が散乱していたりゴミ屋敷化しているケースも多く、大掛かりな片付けも行わなければなりません。
自力での清掃は難しいため、孤独死の現場の特殊清掃や片付けは業者に依頼するのが一般的ですが、いざ依頼を検討し始めると気になるのが費用です。孤独死の現場の片付けや、特殊清掃を業者に依頼するといくらかかるのか、費用の相場を詳しく解説します。
特殊清掃にかかる費用相場
特殊清掃にかかる費用の相場は、片付ける部屋の間取りと作業内容の2点を押さえておくと、ある程度の金額が把握できます。特殊清掃の費用を、間取り別に見た場合の相場は以下の通りです。
間取り | 費用相場 |
1K〜1LDK | 約3万円〜20万円前後 |
2K〜2LDK | 約10万円〜30万円前後 |
3K〜3LDK | 約20万円〜40万円前後 |
4LDK以上 | 約30万円〜60万円以上 |
基本的には、特殊清掃する範囲が狭ければ費用は安くなると考えて問題ありませんが、汚染がひどく作業内容が増えると、間取りが狭くても費用は高めになってしまいます。特殊清掃で行われる作業の費用相場は以下の通りです。
作業内容 | 料金 |
汚染された畳の撤去 | 一枚につき約3,000円〜 |
汚染物の撤去 | 約1万円〜 |
フローリングの清掃 | 約3万円〜 |
浴室の清掃 | 約3万円〜15万円以上 |
除菌・消毒 | 約1万円〜 |
オゾン脱臭機による消臭 | 約3万円/1日〜 |
害虫駆除 | 約1万円〜 |
間取りの費用相場をベースにして、現在の状況から予想される作業内容の料金を足すと、費用の目安が出しやすくなります。ただし、目安はあくまで概算なので、正確な金額は見積もりを出してもらわないとわかりません。
作業内容は同じでも、料金設定は各業者で異なるので、複数の業者に相談して見積もりを出してもらい、比較・検討するのがおすすめです。
遺品整理にかかる費用相場
遺品整理にかかる費用は、片付ける範囲の広さや処分品の多さで変わってきます。間取り別で見た遺品整理の費用相場は以下の通りです。
間取り | 費用相場 |
1K〜1LDK | 約3万円〜10万円前後 |
2K〜2LDK | 約10万円〜20万円前後 |
3K〜3LDK | 約20万円〜30万円前後 |
4LDK以上 | 約30万円〜60万円以上 |
間取り別の相場では、部屋が狭くても費用が安くなるとは限らない、という点に気をつけなければなりません。例えば、天井近くまでゴミが積み上がっている1Rを片付ける場合、片付ける範囲こそ狭いものの処分品・作業量が多いため、費用が30万円以上になることもあります。
遺品整理の費用は部屋の広さをベースにしつつ、室内に残された遺品や処分品の多さも加味しなければなりません。費用に不安がある人は、業者に見積もりを依頼するときに費用面も相談してみましょう。
身寄りのない人が孤独死に備えて準備すべき4つのこと
一人暮らしで身寄りのない人が孤独死すると、遺産の相続先・遺品の始末などの問題が残りやすく、トラブルになるケースもよく見られます。孤独死が問題視されるようになった近年では、万が一孤独死した場合を考えて、生前から準備する人も増えてきました。
孤独死に備えておけば、もし孤独死しても周囲に迷惑をかける心配はありません。
身寄りのない人が孤独死に備え、生前からやっておくと良い4つの準備をご紹介します。
財産管理等委任契約を結ぶ
財産管理等委任契約とは、契約者の財産管理能力が低下したり、療養・看護関係の福祉手続きが難しくなったとき、契約者の代わりに手続きしてもらえる契約のことです。
不動産の売却処分や銀行口座の解約といった、大きな手続きまでは難しいですが、事前に契約者の通帳を預かっておき、万が一の時に各種支払いを代行したり、ペットを保護したりすることはできます。財産管理等委任契約で代行出来る内容をよく確認し、自分の希望にあった委任契約を検討してください。
後見人制度を活用する
後見人制度は、老化や病気などで財産管理・事務手続きが難しい成人が後見人を付け、自分の代わりに財産管理や事務手続きをやってもらう制度です。後見人制度には、成人後見人制度や任意後見人制度などの種類があり、現在の状況とやってほしい業務内容を考慮し、段階に合わせて最適な制度を選びます。
本人が孤独死に備えるなら、最適なのは任意後見人制度です。任意後見人制度を活用すると、財産の管理や処分・重要書類の保管まで可能なので、万が一孤独死した時も安心して死後の処理を任せられます。認知能力・判断能力が低下している人にもおすすめの制度なので、現在の日常生活自体に不安がある人は後見人制度を検討してみましょう。
遺言書を作成する
遺言書を作成しておき、弁護士や司法書士・公証役場に預けておくのも良い方法です。遺言書には期限がないため、一度作成しておけば、万が一孤独死しても希望に沿った事務処理をしてもらえます。
ただし、遺言書の作成方法は民法で詳細に定められており、要件を満たしていないと正式な遺言書と認めてもらえません。遺言書を作成するときは、法律に基づいた正しい書式を確認してください。
生前整理を進める
法的制度や遺言書作成を難しいと感じる人は、生前整理を進めることから始めてみましょう。時間に余裕があるなら、不用品を思い切って処分したり、使用頻度が低い品物をリサイクルや買取に出したりすると、室内も精神的にもスッキリします。
時間に余裕がない場合は、エンディングノートを用意して財産目録を作成し、重要書類や実印・銀行印・通帳をわかりやすくまとめるだけでも効果的です。相続や事務処理に必要な指示・重要書類がすぐに見つかるため、死後の事務処理が楽になります。
何事もないのが一番良いですが、孤独死はいつどのような形で起こるかわかりません。毎日少しずつでも生前整理を進めておくと、もしもの時の事前準備が目に見えるので安心できます。
孤独死した方の遺品整理をする流れ
孤独死した方の遺品整理は、特殊清掃から室内の片付けと段階を踏まなければならないので、一連の流れを頭に入れておくことが大切です。作業の流れをある程度理解していれば、ロスタイムも少なくスムーズに遺品整理まで行えます。
一連の流れと現在の状況を照らし合わせ、今なにをするべきかを確認し、効率よく作業を進めましょう。孤独死した方の遺品整理までの流れを、順を追って解説します。
特殊清掃・遺品整理業者に依頼する
最初に行うのは、特殊清掃業者と遺品整理業者への作業依頼です。順番としては、特殊清掃業者に依頼して室内の消毒・消臭後、遺品整理業者に遺品整理を依頼します。
特殊清掃と遺品整理は個別に依頼しても良いが、業者を探す手間を省き処理スピードを優先するなら、特殊清掃も可能な遺品整理業者へ依頼してください。特殊清掃が可能な遺品整理業者なら、依頼から遺品整理までがワンストップなので、手間もかからず迅速に作業できます。
専門業者による特殊清掃
特殊清掃の専門業者と契約したら、孤独死の現場の特殊清掃作業から始めます。特殊清掃を遺品整理より先にするのは、孤独死の現場を除菌・消臭しないと、菌に感染するリスクがあるからです。
孤独死の現場にあった遺品は、体液や悪臭に晒され菌に汚染されている可能性があるので、特殊清掃が終わるまでは触れられません。特殊清掃業者に除菌・消臭してもらったあとなら、室内に入って遺品整理を行なっても感染リスクは下がっているので安心です。
遺品整理業者による片付け
特殊清掃による除菌・清掃が済んだら、室内の片付けに入ります。片付けに特化していて遺品整理の経験も豊富な業者に依頼すると、片付け作業と並行しながら、重要書類は貴重品を仕分けていくので、作業が的確でスピーディーです。
事前に「〇〇を探して欲しい」と頼んでおくと、目的の遺品を見逃さず片付けてくれます。一般廃棄物収集運搬許可業者または提携している片付け業者なら、冷蔵庫から出た生ゴミや体液の染み込んだマットレスも処分してくれるので、片付け業者を探すときにチェックしてください。
孤独死した方の遺品整理を行うときの注意点
孤独死した現場にあった遺品の整理は、可能な限りリスクを減らせるよう、注意して行わなければなりません。孤独死した方の遺品整理は、体液に侵食されていたり悪臭に晒されたりしているため、注意点を理解しておかないと感染症の罹患や、周囲に迷惑をかける可能性があります。
孤独死の現場と残された遺品がどのような状態なのか理解しておけば、被害を未然に防ぎ周囲にも迷惑がかかりません。孤独死した方の遺品整理で気をつけるべき注意点を、以下で詳しく解説します。
孤独死のあった部屋にある家財の特徴
孤独死があった部屋におかれていた家財道具には、次のような特徴があります。
- 腐敗物に汚染されている
- 悪臭が染み付いている
- 遺品自体が腐っていることもある
- 細菌が付着している
- 害虫の住処になっている
このような特徴がある遺品の場合、安全性を考えれば廃棄処分が好ましく、たとえ遺品であっても触れるのは危険です。「思い出があるから残しておきたい」「価値があるから形見分けで欲しい」と言う人もいますが、基本的には廃棄処分と考え、安全な遺品だけを残しましょう。
特殊清掃が完了する前に部屋に立ち入らない
特殊清掃が完了し業者から許可が出るまでは、孤独死があった部屋に立ち入ってはいけません。腐敗物に汚染された室内は、家屋全体が悪臭と菌に犯されている状態です。
特殊清掃の完了前に部屋へ入ってしまうと、消しきれていない菌に感染する可能性があり、深刻な健康被害を受けてしまいます。特殊清掃が完了し、業者から入室許可が出たあとは安全なので、勝手に室内へ立ち入らないでください。
部屋に入るときにはマスク・手袋を装着する
現場の確認や遺品整理で部屋に入るときは、たとえ特殊清掃が完了した後であっても、マスクと手袋の装着が必須です。業者も念入りに除菌・消臭を行いますが、全ての遺品が完全に安心とは言い切れません。
例えば、室内にあったエンディングノートの隙間に菌が残っていた場合、素手で触ると接触感染したり、ノートを開いたときに菌が舞い上がり吸引する可能性も考えられます。清掃完了後でも必ずマスクと手袋を装着しておけば、感染のリスクも軽減され安心です。
勝手に窓を開けない
孤独死があった部屋の窓は、業者の許可なく勝手に開けないようにしましょう。特に、作業終了前に部屋に入り窓を開けてしまうと、消しきれていない悪臭が外に漏れ出し、近隣住人に迷惑をかけてしまいます。
孤独死の現場から発生する悪臭は、建物のわずかな隙間から漏れただけでも強烈で独特な死臭がして孤独死に気がつくケースもあるほどです。清掃が完了し業者の許可が出るまでは、孤独死があった部屋の窓は締め切り、換気扇なども回さず臭い漏れを防いでください。
遺品を勝手に持ち出してはいけない
孤独死があった部屋の遺品の持ち出しは、トラブルの原因になるため厳禁です。遺品は相続対象で、遺品整理と相続する権利は相続権を持つ人にあります。相続人が複数いた場合、何をどのくらい相続するか話し合って決めなければならないため、勝手に持ち出すと窃盗行為と受け取られかねません。
たとえ些細な品物であっても、遺品を扱う権限は相続権を持つ人全員にあるので、許可のない勝手な持ち出しはトラブルの元です。相続人全員からの同意を得てから遺品を持ち出せば、トラブルも起こりにくくなり円満に遺品を引き取れます。
まとめ
孤独死の現場に残された遺品は、相続人がいるならその人が受け取り、相続人がいない場合は残余財産と見なされ国庫に入ります。遺言書があれば遺言書通りに相続されますが、法律に定められた書式でなければ認められないため、正しい遺言書の書き方をよく調べてから用意してください。
また、孤独死の現場にあった遺品は、腐敗物や悪臭に汚染されている可能性が高く、勝手に部屋に入って持ち出すのは危険です。まずは特殊清掃業者の処置、次に片付け業者の作業と段階を踏んで清掃し、業者の許可が出たらマスクと手袋をして遺品整理を行いましょう。
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