暖房機器で使った灯油が残ってしまったら、どう処分したらよいかご存じですか。
「残った灯油は次の冬に使えば良いのではないか?」と思うかもしれません。
しかし使いきれなかった灯油は、劣化による事故や故障を防ぐために、ワンシーズンごとに処分する必要があります。
灯油タンク内に少量残った灯油であれば、処分は簡単です。
しかしポリタンクいっぱいに残った灯油の場合、処分には手間がかかります。
そして灯油は可燃性で引火しやすい性質があります。
正しい知識と方法で処分しないと、命の危険を伴う大事故につながる可能性もあるため注意が必要です。
そこでこの記事では、冬の間に使いきれず残ってしまった灯油の正しく安全な処分方法について解説します。
目次
少量の灯油の処分方法
灯油が少量残ってしまった場合は、空焚きして使い切ってください。
灯油タンクに灯油が残ったままで次の冬まで保管すれば、灯油は劣化します。
劣化した灯油を使うと、暖房機器の故障の原因につながる恐れもあるのです。
空焚きする方法
空焚きは、次の手順でおこないます。
- 灯油タンクに残っている灯油を入れる
- 給油サインが出ても運転し続ける
- 運転と自動停止を繰り返す
なお空焚きは、冬が終わって暖房機器をしまう際にも、必ず必要な手順です。
覚えておくと、毎年の春支度がスムーズになります。
大量の灯油の処分方法
灯油が大量に余ってしまった場合は、空焚きで使い切るのは相当な困難を伴います。
こういった場合には、次のような方法があります。
- ガソリンスタンドに引き取り依頼
- 自動車整備工場に引き取りを依頼
- 灯油の購入店舗に引き取り依頼
- 不用品回収業者に依頼
- 知人にゆずる
ガソリンスタンドに引き取り依頼
灯油の販売をしているガソリンスタンドでは、残った灯油の引き取りサービスを実施している可能性があります。
灯油の引き取りサービスがあるか否かを、購入時に確認しておくとスムーズです。
しかし灯油の販売をおこなっていないガソリンスタンドや、販売はしても引き取りまではおこなっていないガソリンスタンドもあります。
灯油は重く運搬も容易ではないので、持ち込む前に引き取り可能かを確認しましょう。
自動車整備工場に引き取りを依頼
自動車整備工場でも、部品を洗浄するために灯油を使用するため、古くなった灯油でも活用する機会がよくあります。
そのため、残った灯油を引き取ってくれるケースがあります。
ただしすべての自動車整備工場が、灯油の持ち込みに対応しているわけではありません。
引き取ってもらえた場合も、あくまでも厚意で対応しているにすぎません。
自動車整備工場で灯油を引き取ってもらえる場所を探す場合は、事前に電話で対応の可否を確認してから持ち込んでください。
灯油の購入店舗に引き取り依頼
灯油を購入した店舗でも、残った灯油の引き取りサービスを実施している場合があります。
このときも持ち込む前に電話で引き取りサービスの有無を確認するか、購入時に確認しておくとスムーズです。
不用品回収業者に依頼
灯油は不用品回収業者に回収依頼することもできます。
次のような場合は、不用品回収業者に依頼することもご検討ください。
- 車がなくて灯油を店まで運べない
- 灯油のほかにも処分したいものが大量にある
不用品回収業者に依頼すれば、自分で作業する必要は一切ありません。
スタッフが自宅に訪れ、灯油も含めた不用品をすべて回収します。
重い灯油の運搬もスタッフがおこないますから、灯油の販売店に自分で持ち込んだりする手間は不要です。
ただし灯油のみの回収の場合、割高になる可能性もあるので、その他の不要なものもまとめておき、灯油と一緒に引き取りを依頼するのがおすすめです。
不用品回収業者に依頼する場合は、あらかじめ複数の会社に見積もりを依頼し、金額やサービス内容など、自分の希望に最も近いところを見つけましょう。
知人にゆずる
自分の家庭ではもう灯油の出番が終わっても、他の家庭では灯油をまだ必要としている可能性もあります。
知人の中でまだ灯油を使う人がいないか探してみるのも良い方法です。
使ってくれる誰かに譲れば、灯油を処分するコストがかかりません。
何より、必要としている人のところで活用されることは、人間関係の面でも、環境負荷の意味でも良い循環に繋がります。
自分にとって不要なものでも、意外なところで必要としている人はいるものです。
ぜひ周囲の人に声をかけてみてください。
事故の危険も!灯油のNGな処分方法
灯油の間違った処分方法には、次のようなものがあります。
- 保管して次の冬に使う
- 布や紙に浸して可燃ゴミに出す
- ポリタンクごとゴミに出す
- 下水道に流す
- 自分で燃やす
- 凝固剤で固める
- 土に埋める
適切な方法で灯油を処分しない場合、大規模な火事になるほか、事故に伴う賠償責任をされる恐れもあります。
十分ご注意ください。
保管して次の冬に使う
灯油は劣化が早いので、次の冬まで持ち越すことができません。
時間の経過とともに気温や湿度の影響を受けて灯油は酸化し、成分も変質します。
変質した灯油を使うと燃料不良で十分に火がつかなかったりになり、きつい臭いがしたりするほか、暖房器具が壊れてしまう危険もあるため、各メーカーも警鐘を鳴らしています。
さらに劣化した灯油からはタールなどの有害物質が発生します。
無理に使用した場合、不完全燃焼から、一酸化炭素中毒になる危険もゼロではありません。
劣化した灯油の特徴
古くなって劣化した灯油には次のような特徴があります。
- 火がつきにくい
- 酸っぱい臭いがする
灯油は必要な分量だけ購入し、使いきれなかった分については必ず処分してください。
布や紙に浸して可燃ゴミに出す
この方法は、自治体が許可している場合に限り、大きな問題はありません。
しかし自治体で許可していない場合は、採用しないでください。
少量であっても、布や紙に灯油を浸して可燃ゴミと一緒に廃棄すると、ゴミ袋の中身が発火してしまう危険があります。
灯油には、引火点が低い特徴があります。
引火点とは、火気を近づけたときに着火する最低温度のことで、灯油の場合は40~60度とかなり低くなっています。
実際には、この温度になったからすぐに発火するわけではないことがほとんどと言われていますが、密閉されたゴミ袋の中で灯油が気化すると、液体の状態よりも火が付きやすく発火の危険が高まります。
例えば強い光に当たったり、生ごみが発酵したりといった環境要因で、ゴミ袋の中の温度が高くなる可能性が考えられます。
万が一の事故を防ぐ意味でも、基本的には灯油を可燃ゴミに捨てるのは避けてください。
灯油タンクごとゴミに出す
灯油は、特別管理産業廃棄物に分類されています。
特別管理産業廃棄物とは、爆発性・毒性・感染性といった、健康や生活環境に害を及ぼす恐れのある廃棄物の意味です。
特別管理産業廃棄物は危険性が高いため、一般の廃棄物より厳しい処理基準が設けられています。
万一タンクごと灯油を可燃ゴミに出したりすれば、大事故に繋がる恐れがあるでしょう。
下水道に流す
灯油を下水道などに流すことは、最も避けるべき灯油の処分方法です。
灯油を下水道に流した場合、気化しやすい灯油が下水管の中で蒸発し、充満する恐れがあります。
この場合、何らかのきっかけで引火すれば、大爆発する可能性があり、大変危険です。
もし下水管内にて、気化した灯油が原因で爆発事故が起きれば、被害の程度に応じて、高額な損害賠償を負うことも考えられるでしょう。
また灯油を下水道に流すと、下水道の機能に悪影響を及ぼすだけでなく、地域の河川を汚染したことによる環境の悪化といった地域全体へのリスクも懸念されます。
たとえ少量であっても、灯油を流すことは絶対にしないで下さい。
自分で燃やす
灯油は日頃料理に使う油とは性質が大きく違います。
灯油の特徴は次の通りです。
- 引火性がある
- 引火点より低い温度でも霧状の粒子になって空気中に浮遊する
時に危険なのが、常温で霧状の粒子になって空気中に浮遊する性質です。
空気に触れる面積は広くなり、着火すると爆発的に火の手が広がる恐れがあります。
凝固剤で固める
料理に使った油を固めて燃えるゴミに捨てるための凝固剤では、灯油は固まりません。
凝固剤は加熱した油に溶かして使うものです。
常温に保管されている灯油に溶かしても、効果を発揮することができません。
かと言って灯油を鍋などで加熱すれば、大火事になる恐れがあり大変危険です。
決しておこなわないでください。
土に埋める
灯油を土に埋めると、土壌汚染の原因になるだけでなく、悪臭による近隣トラブルに発展する恐れもあります。
また、空気中に飛散した灯油の粒子が原因で、火災が起きる可能性もゼロではありません。
古くなった灯油タンクの処分方法
灯油を保管するためのポリタンク自体は、劣化するまで使い続けることができます。
中の灯油を使い切って、火気のないところで保管してください。
灯油タンクの寿命
灯油タンクの寿命は、製造から10年といわれています。
重量があり、揮発性の高い灯油を入れる容器ですから、使っているうちに劣化します。
10年を目処に新しいものに買い換えることで、安心して灯油を利用できるでしょう。
灯油タンクの廃棄方法
灯油タンクの廃棄方法は、自治体によって個別に定められており、多くの場合は、次の2つのいずれかです。
- 燃えるゴミ
- 粗大ゴミ
例えば千葉県の印西市では、プラスティック製の灯油タンクの場合は、次のように定めています。
- 燃やすゴミの指定袋に入る場合:可燃ゴミとして処分
- 指定のゴミ袋に入り切らない場合:粗大ゴミとして処分
この時、中に灯油が残っていないようにすることが欠かせません。
処分中に灯油がこぼれた時の対処法
灯油をこぼした時の対処法は、こぼした場所によって異なります。
場所に合わせた適切な方法で掃除すれば、灯油のシミを最小限に止めることができます。
灯油をこぼした時の掃除は、素早く対応することが欠かせません。
灯油を使うご家庭では、万が一の事態に備えて、ぜひ覚えておきたい知識です。
なお灯油が染み込んだ布や紙の処分方法は、自治体ごとに個別に定められていますので、お住まいの自治体にご確認の上、適切に処分してください。
車内
車内に灯油をこぼした場合はアルコール除菌スプレーを噴霧して、不要になった布や新聞紙などを使い、灯油を拭き取ってください。
この時こすると灯油がより染み込みます。
布や新聞紙に灯油を移すように押し込みながら灯油を吸い出すのがポイントです。
カーペット
カーペットに灯油がこぼれた場合は、不要な布で灯油を吸い取ってください。
この時もこすらず押し付けながら、布に灯油を吸い上げることを心がけてください。
また作業中はしっかり換気して、室内に臭いが残らないような対策も重要です。
畳
畳に灯油がこぼれた場合は、急ぎ不要な布で灯油を吸い取ります。
しっかり灯油を吸い取ったら、粉末状のクレンザーをふりかけてしばらく放置し、畳の隙間に入り込んだ灯油をクレンザーに吸収させます。
クレンザーが灯油を含んだら掃除機で吸い取り、灯油がこぼれた箇所を乾いた雑巾で拭き上げて完了です。
作業中は室内を十分に換気して、臭い対策もおこなってください。
玄関のタイル
玄関のタイルに灯油がこぼれた場合は、食器洗い用の中性洗剤を使って、灯油を洗い流してください。
スポンジやタオルも灯油が染み込むので、掃除後に捨てても良いものを使いましょう。
濡れた雑巾で洗剤と灯油を拭き取ったら、換気して掃除完了です。
まとめ
残ってしまった灯油は、次の冬に持ち越せないので、なんらかの方法で廃棄処分しなければなりません。
しかし灯油は、危険性の高い廃棄物です。
正しい方法で処分しないと、大事故を引き起こす危険性もあります。
車で運ぶことができる場合は、回収を受け付けている購入店へ持ち込んでください。
もし他にも処分したいものがあれば、不用品回収業者に依頼して、灯油と一緒に回収してもらうのもひとつの方法です。
灯油の処分は、正しい方法で安全に行ってください。