隣人トラブルや治安・環境への悪影響など、いまや「ゴミ屋敷」問題は全国的にも大きな課題となりつつあります。
しかし、今のところゴミ屋敷を取り締まる法律はありません。
その代わりに、独自にゴミ屋敷に対するガイドラインを作成し対応する自治体が増えてきました。
静岡県浜松市も、ゴミ屋敷問題の解決に取り組む自治体の一つです。
ゴミ屋敷について苦情や通報が寄せられることも多く、浜松市では現在手引書を作成中です。
ゴミ屋敷を片付けるだけではありません。
住居者へのケアとしての福祉的アプローチを含めた包括的な問題解決を目指しています。
この記事では、静岡県浜松市が取り組むゴミ屋敷問題解消のための手引書の内容について解説します。
その手引書が作られるようになった背景なども含めてご紹介します。
目次
「ゴミ屋敷」手引書を作成するようになった背景
浜松市がゴミ屋敷問題を解決するための手引書を作成するようになった背景についてまとめました。
手引書を作成するようになった背景①ゴミ屋敷問題を取り締まる条例がない
現在日本には「ゴミ屋敷」を取り締まる法律がありません。
そのため、各自治体が法律の代わりに通称「ゴミ屋敷条例」と呼ばれる独自のガイドラインを定め、対応しているのが現状です。
しかし、浜松市にはその「ゴミ屋敷条例」がありません。
そのため、浜松市としてゴミ屋敷を認識した後の処理の仕方についても明確なものがありません。
そのため、市が一丸となって対応できる体制が取れていないという課題がありました。
手引書を作成するようになった背景②ゴミ屋敷住居人にとっては「ゴミではない」という認識のズレ
新聞や雑誌の束、壊れた電化製品など、一般的にはゴミと認識されています。
しかし、他人の所有するものである限り勝手に捨てることはできません。
それらの廃棄物を「ゴミではない」と主張するゴミ屋敷住人も多く、その認識の違いが対応を難しくさせています。
清掃指導のため、何度も浜松市職員がゴミ屋敷を実際に訪ねます。
ゴミ屋敷住人にヒアリングを行おうとするものの、この認識にズレがあっては話が進みません。
面会を拒否されるケースや健康上の問題で話ができないケースもあります。
ゴミ屋敷の改善が、一筋縄でいかないのが現状です。
手引書を作成するようになった背景③空き家が増えてきた
実家が知らないうちにゴミ屋敷となり、気がつけば両親は他界しているケースもあります。
誰も住んでいない空き家のまま、中身はゴミ屋敷のまま放置されているといったケースも少なくありません。
少子高齢化が進む中で、郊外の空き家の数は年々増え続ける傾向にあります。
このような空き家化したゴミ屋敷の問題も浮き彫りになってきています。
手引書を作成するようになった背景④ゴミ屋敷の解決には課をまたいだアプローチが必要
役割が課によって明確に分かれる役所にとって、ゴミ屋敷の問題は多岐にわたります。
そのため以下の各課の垣根を超えて問題解決にあたる必要があります。
- 環境課
- 衛生課
- 保全課
- 防災課
- 福祉課
特に以下の問題を抱えた住居者も少なくありません。
- 心理面の疾患
- 高齢者の身体的な衰え
- 認知症
問題解決には、福祉的アプローチを含む総合的なアプローチが欠かせません。
静岡県浜松市が抱える「ゴミ屋敷」問題のリスク
以下のように、ゴミ屋敷の問題は多岐にわたります。
- 害虫
- 悪臭の発生
- 治安の悪化
- 放火のリスク
浜松市の環境政策課によると、浜松市として「ゴミ屋敷」と認定した数は2021年度で15件です。
通常ゴミ屋敷問題は、ゴミ屋敷の近隣住民から寄せられる悪臭や害虫などのクレーム・相談によって浜松市が認識します。
ゴミ屋敷の存在によって実際にどのような生活への悪影響、リスクがあるのかまとめました。
ゴミ屋敷の抱えるリスク①蚊やハエ、害虫、ネズミなどの発生
ゴミ屋敷の中には食べ残しの入った弁当容器や腐敗が進んだ食料などがそのままになっているケースが多くあります。
そのため、以下の害虫などが多く発生します。
- カビ
- 蚊
- ハエ
- 害虫
- ネズミ
これらの害虫などの被害は近所にまで及び、衛生面に悪影響を与える可能性があります。
ゴミ屋敷の抱えるリスク②火災の発生
ゴミ屋敷には多くの廃棄物が堆積しています。
一度火災が起きると、火の勢いが強まり、近所にまで火が及ぶ火災リスクを伴います。
特に、ゴミ屋敷は放火の標的にもなりやすいため注意が必要です。
ゴミ屋敷の抱えるリスク③視界の妨げとなる
ゴミ屋敷からあふれ出るゴミが、歩行者や車両の視界を妨げ、事故を招く原因となります。
あふれ出るゴミ以外にも、手入れの行き届かない樹木や雑草などが建物の外にまで及び、通行を妨げる場合もあります。
ゴミ屋敷の抱えるリスク④異臭の発生
ゴミ屋敷の抱えるリスクとして最も身近なのが異臭の問題です。
ゴミが腐敗した匂い、カビなどの匂いは壁を通り越し、屋外にまで漂います。
特に夏場は匂いがキツくなります。
そのため、鼻を突き刺すような強烈な異臭がゴミ屋敷周囲に立ち込め、近隣住民にも被害を及ぼす可能性があります。
まとめ
静岡県浜松市が取り組むゴミ屋敷問題に対応するための手引書の内容について説明しました。
そして、手引書が作られるようになった背景も解説しました。
ゴミ屋敷問題の難しさは、単に全てのゴミを廃棄しても解決しない点にあります。
仮に、強制的に市がゴミを廃棄しても、また数ヶ月後には新たなゴミの山が同じ場所にできていることでしょう。
ゴミ屋敷住人のほとんどは、ゴミを溜めこみやすい習慣ができてしまっています。
以下の問題を根本的に解決しない限り、ゴミ屋敷問題は解消されません。
- 物が捨てられない
- ゴミ収集所からゴミを拾ってきてしまう
- 肉体的・精神的疾患がありゴミを自力で出せない
ゴミ屋敷問題の責任はもちろんその原因者にあります。
ですが、本人だけで解決が難しい場合も多いです。
市や関係機関、自治区や福祉施設、老人会、ボランティア団体などの協力が必要です。