ゴミ屋敷の問題は全国各地に波及しています。決してテレビの中だけの問題ではなく、悩まされている人が増えています。
東京都八王子市も例外ではありません。
ゴミ屋敷は決して地方や過疎地だけではなく、八王子のような都市部に於いても問題となっています。
そのため八王子では2019年4月1日よりゴミ屋敷対策を推進すべく、条例を制定しました。
目次
東京都八王子市でゴミ屋敷が問題になっていた理由
ゴミ屋敷の問題として、これまではいわば「住居者のプライバシー」に関わるものだったことから、行政はもちろん第三者が手を加えることが難しい点が挙げられました。
街の景観を損ねているようなゴミ屋敷も、いわば「住居者の自由」でした。
ただ汚くしているだけで、自分自身の住まいの問題である以上、第三者が具体的なアクションを起こすことはできませんでした。
あくまでも住居者が自らの意思で問題を解決してくれるのを待つしかありませんでした。
しかしゴミ屋敷となると、もはや住居者のみの力ではどうすることもできないもので、結局は放置が続き、景観を損ねるだけではなく異臭が発生したり、コバエ等が大量に発生するなどして近隣の住民にも迷惑を与えることになっていました。
全国にゴミ屋敷が増えている背景
ゴミ屋敷の問題に悩まされているのは八王子だけではありません。
全国的に増えているとされている背景にあるのは、単身高齢者の増加が挙げられます。
単身となったことで、清掃意欲が低下。
自身のパーソナルスペースさえ確保できれば良いとの考えから、家屋内が汚くとも気にしない高齢者や、あるいは気にはなるものの、同居人がいないことから急かされることもなく、「そのうち」「いずれ」の気持ちで後回しにしていたらゴミ屋敷となってしまったり等、様々な原因が考えられています。
かつてゴミ屋敷といえば地方や過疎地に多く、さらには珍しいものだったことからテレビ番組に面白おかしく取り上げられることも珍しくありませんでした。
しかし少子高齢化が加速することで、ゴミ屋敷も増加。
もはや社会問題に発展しているといっても過言ではありません。
八王子が条例を制定したのも、大きな問題となっているからこそですが、ゴミ屋敷に関する条例を制定しているのは八王子だけではありません。
他の地域に於いても大きな問題となっており、かつ住居者の意思を尊重しなければならないため、どうしても「お願いベース」となっていたことから、ゴミ屋敷に対して、何もできないのがこれまでの現状でした。
しかし、八王子をはじめ、様々な地域で条例化が進んでいることから、今後はゴミ屋敷が減少していくのではと期待されています。
東京都八王子市の取り組み
東京都八王子市では、ごみ屋敷条例を制定しました。
これにより、それまでは住居者の意思に頼らざるを得なかった問題解決が、条例化することで行政が対処できるようになりました。
そこで、八王子のごみ屋敷条例について、詳しく見てみるとしましょう。
八王子市でのゴミ屋敷の把握・調査と対策会議
近隣住民からの通報、あるいは独自調査等によってゴミ屋敷を把握したら、まずは調査を行います。
ここでは近隣に影響を与えているのかを判定します。
与えていると判断された場合、相談・情報提供の支援を行います。
また、与えていないと判断した場合においても、ゴミ屋敷がさらに進化しないよう、予防という観点から住居者に対しての支援を行います。
八王子市のゴミ屋敷が近隣に悪影響を与えていると判断した場合
ゴミ屋敷が近隣住民に悪影響を与えていると判断した場合、まずは住居者と相談します。
そこで、まずは住居者の意思を確認します。
ゴミ屋敷を改善する気があるのか、あるいはないのか。
改善する意思があり、かつ自らの力だけで解決できそうであれば行政は見守るのみですが、意思はあるものの、自力のみでの改善が難しい場合には一定の条件を満たすことで、行政がゴミ屋敷改善のための支援を行います。
しかし改善の意思そのものがない場合、立入調査が可能になりました。
立入調査とは?
東京都八王子市の、いわゆるごみ屋敷条例の肝となるのがこの部分です。
それまではどうしても「お願いベース」でした。
しかし条例となったことで、立入調査が可能になりました。
ゴミ屋敷に出向き、指導・勧告、命令、そして行政代執行が可能になりました。
命令、行政代執行の際には審議会を開催し、是非を問うことになるのですが、審議会で了承されることで、ゴミ屋敷の撤去を行政の意思で行えるようになったのです。
それまでのように、「言葉による説得」だけではなく、強制的にゴミ屋敷を掃除することができるようになった点が、いわゆる八王子のごみ屋敷条例の大きな特徴です。
ちなみに行政代執行の費用は税金ではなく、ゴミ屋敷住居者の自己負担です。
一時的に行政が肩代わりはしますが、税金同様、徴収すべきものなので、住居者が支払いに滞った場合、税金同様、強制徴収の対象になります。
八王子市のゴミ屋敷の改善から再発防止まで
住居者の意思にせよ、あるいは行政代執行にせよゴミ屋敷の改善、そして再発防止のために生活環境の改善指導を行います。
ゴミ屋敷は一朝一夕に出来上がるものではありません。
時間をかけて徐々にゴミ屋敷へと変貌してしまいますが、その根幹にあるのは居住者の生活様式です。
なぜゴミ屋敷になってしまったのか、原因を探ることで、再発防止のために、生活環境改善を指導します。
八王子市ではごみの持ち去り禁止
八王子市のいわゆるごみ屋敷条例の特徴の一つに、ゴミの持ち去り禁止が定められている点にあります。
ゴミ屋敷化の原因の一つに、ゴミの持ち去りがあることが調査から分かりました。
他の人が出したゴミを、様々な理由で自宅に持ち去ってしまうのです。
結果、住居内のゴミが増えることでゴミ屋敷化を加速させてしまっていました。
そこで2019年7月1日から、ごみの持ち去りも禁止Tとなりました。
改正前はごみの持ち去りに関しては罰則がなかったのですが、改正後はごみの持ち去りは20万円いかの罰金となったことで、ゴミの持ち去りを抑止する狙いがあります。
東京都八王子市では条例だけでゴミ屋敷は防げるのか
八王子市のいわゆるごみ屋敷条例の肝となるのは、立入調査が行えるようになった点、そしてゴミの持ち去りに罰金が科された点にあります。
ではこれらによってゴミ屋敷は防げるのかといえば、「防止」という観点はごみの持ち去りのみです。
立入調査からの指導・勧告、さらには行政代執行はあくまでもゴミ屋敷をどうするのかという点になります。
どちらかといえばゴミ屋敷化を防ぐというよりも、ゴミ屋敷を対処するための条例だと考えた方が良いでしょう。
その点では、ゴミ屋敷を防げるかは結局は住居者次第ですが、これまでのようにゴミ屋敷となってしまった家屋に対し、具体的なアクションを起こせる点は強みです。
最後に
東京都八王子市のごみ屋敷条例について見てみました。
行政代執行が可能になるなど、これまでの「お願いするだけ」の姿勢から、強制的なゴミ屋敷改善が可能な条例となりました。
それだけ八王子市でゴミ屋敷の問題が見過ごせないものになっていたのでしょう。
しかし八王子市のいわゆるごみ屋敷条例ではゴミ屋敷の撤去と、ゴミ持ち去りの厳罰化を制定したのみです。
ゴミ屋敷を防ぐためには、やはり居住者の意識が大切です。
少しでもゴミが増えてきたら、早めに行動することが大切です。
誰に相談してよいのか分からないのであれば、不用品回収業者に相談するなどして、ゴミ屋敷となるのを防ぐよう努めることが大切です。