「ゴミ屋敷症候群」をご存知でしょうか?
ディオゲネス症候群を日本語に訳したもので、老年期隠遁症候群とも呼ばれているものです。
ゴミ屋敷の問題は日本社会でも大きくクローズアップされるようになり、条例を制定する自治体も増えています。
ですが、ゴミ屋敷症候群によってゴミ屋敷となってしまっているケースも見受けられます。
認知症との関連性も囁かれているなど、社会的理解が必要との声も上がっているゴミ屋敷症候群について解説していきましょう。
目次
ゴミ屋敷症候群とは
ゴミ屋敷症候群を理解するためには、症候群について理解する必要があります。
症候群を冠するものは少なくありません。
一般的に、はっきりとした原因は分かっていないものの、何らかの症状が伴うことで事象が見られる状況です。
つまりゴミ屋敷症候群とは、確たる理由は不明ではあるものの、ゴミ屋敷化させてしまう症状です。
その症状をいくつかご紹介しましょう。
ふと他所のゴミを持ち帰ってしまう
ゴミを見かけると、なぜか自宅に持ち帰ってしまうことで、徐々に家の中にゴミが増えてゴミ屋敷化するパターンです。
自らのゴミではなく、ゴミ収集所等に出されている他人のゴミを持ち帰ってしまうのです。
まだ使用できると思われるものを持ち帰るケースもあれば、本人としても何をしたい訳でもなくゴミを持ち帰ってしまうパターンもあります。
重度の症候群となると、他所のゴミを持ち帰らなければという強迫観念に駆られているケースも見受けられます。
つまり、「持ち帰る」という点に対してのこだわりが見られるパターンです。
物(ゴミ)がないと落ち着かない
ゴミを持ち帰りたいというよりも、家の中に物がなければ落ち着かない気持ちが高じて他所のゴミを持ち帰ってしまい、ゴミ屋敷化させてしまうパターンもあります。
ゴミに対しての識別はありません。
使用できるか・できないかではなく、家の中に物を置いておきたいのです。
持ち帰ってきたゴミは何をするでもなく、家の中に置いておくだけです。
また、他所のゴミだけではなく、自らの生活で出るゴミも捨てません。
結果、ゴミが堆積することで、ゴミ屋敷化するのですが当の本人は何ら困っていません。
ゴミと認識していない
地域にてゴミ屋敷が問題化された際、ゴミ屋敷居住者の多くが「ゴミではない」と主張します。
第三者からみれば明らかにゴミでしかないものも、本人にとってはゴミではない大切なものだから捨てないというものです。
大切なものだから家に置いてあるだけと主張するゴミ屋敷住民は多いです。
言い訳として用いているケースもあるのですが、本当にゴミではなく自らの大切なものなので、他人にあれこれ言われる筋合いがないと考えている場合もあります。
結果、物が増えていく一方なのでゴミ屋敷化が加速するのです。
ゴミ屋敷症候群になりやすい人
ゴミ屋敷症候群の症状についていくつかご紹介しましたが、ゴミ屋敷症候群になりやすい人の特徴もある程度明らかになっています。
そこで、どのような人がゴミ屋敷症候群になりやすいのかもご紹介しましょう。
社会的孤立状態にある一人暮らしの高齢者
友人・知人がいないことで、社会とのつながりが希薄になる、いわゆる「社会的孤立」状態に陥っている高齢者はゴミ屋敷症候群になりやすいとのことです。
一人暮らしの高齢者の場合、外の世界との繋がりが希薄になると、孤立感を深めてしまいます。
そのため、何らかの症候群・依存症に陥りやすいのですが、その対象として身近なゴミが選ばれてしまい、ゴミ屋敷症候群となってしまうケースです。
ゴミが蓄積されることで孤独感を埋めたり、あるいは他所のゴミを持ち帰ることで社会との繋がりを感じてしまうのです。
認知症が進行している
認知症が進行している高齢者もゴミ屋敷症候群になりやすいとの報告があります。
認知症は様々な認知力が低下してしまいますので、既存の価値観が通用しません。
ゴミ屋敷とは、一般常識・社会通念で考えると不衛生で、異臭等が周辺にも悪影響を及ぼします。
何より本人自身がそのような環境に身を置くことは考えられないものです。
しかし認知症となれば、そのような社会通念など意識しません。
確たる理由もなく、何となくゴミを捨てなかったり他所から持ち帰る等して溜め混んでしまうのです。
身体能力が低下している
身体能力の低下がゴミ屋敷症候群を招くケースも報告されています。
身体能力が低下すると、掃除・ゴミ出しが困難になります。
ゴミは家に良いものではないとは分かっていても、掃除やゴミ出しが大きな負担となることから思うように実践できず、次第にゴミが増えてゴミ屋敷化してしまうケースです。
当初は危機感を持っているのですが、身体能力が低下していることから次第に割り切りや妥協からゴミの蓄積を妥協してしまい、やがてはゴミ屋敷症候群へと進行してしまいます。
ゴミ屋敷症候群は支援が重要
ゴミ屋敷症候群とは、いわばゴミ屋敷住居者自身が意図していない形でゴミ屋敷化させてしまう状況です。
住居者本人に任せるだけではこのようなゴミ屋敷の改善は難しいです。
改善のためには支援が必要です。
そこでどのような支援策があるのかご紹介します。
行政による支援
ゴミ屋敷問題とは地域社会の問題です。
冒頭でもお伝えしたように、ゴミ屋敷対策として条例を制定している自治体も増えています。
ゴミを撤去するだけではなく経済的支援や福祉との連携等の支援策を策定している自治体もあります。
そのため、周辺、あるいは身内のゴミ屋敷で困っているのであれば行政に相談してみるのもよいでしょう。
地域自治体による支援
地域自治体の場合、行政のような強制執行権はありませんが、行政に連絡をするなど行政とゴミ屋敷居住者のパイプ役となったり、あるいは日常生活の中で気にかけることで社会からの孤立を防止します。
定期的な見回りや声掛け等は行政よりも細かいものが期待できます。
民間サービスの活用
ゴミ屋敷そのものを改善するだけであれば、民間サービスの活用を視野に入れるのも良いでしょう。
例えば不用品回収業者であればゴミ屋敷の堆積物の撤去が可能なので、ゴミ屋敷の状況を変えることができます。
さらに状態の良いものであれば、フリマアプリやオークションサイト等のサービスを活用することで家の中の不用品をお金に変えることもできます。
このように、行政だけではなく民間のサービスを活用することもゴミ屋敷改善・支援となります。
再発防止も視野に
ゴミ屋敷は再発が懸念されるものです。
特にゴミ屋敷症候群の場合、ゴミを取り除いたとしても結局は再びゴミ屋敷化してしまう懸念もあります。
そのため、再発防止も視野に入れる必要があります。
身内の場合、こまめに足を運んで顔を合わせて会話するなど、社会からの孤立を防ぐことが、ゴミ屋敷症候群の場合の再発防止策として有効です。
ゴミ屋敷症候群は認知症とも関連あり
ゴミ屋敷症候群に陥りやすい人の特徴として、認知症や一人暮らしなど、社会的孤独を感じている高齢者が挙げられます。
特に認知症の場合、無自覚にてゴミ屋敷化させてしまうケースも見受けられます。
この場合、住居人だけでゴミ屋敷を改善することは難しいので、支援策も重要です。
行政や地域住民、さらには民間サービスなどを上手く活用することで、ゴミ屋敷の支援、あるいは予防を心掛けてみてはいかがでしょうか。