日本列島のほぼ真ん中に位置する岐阜県。
空港がなくアクセスがそれほど良くないにもかかわらず、国内だけでなく、国外からも多くの観光客が訪れる一大観光地なのです。
世界遺産にも登録された白川郷、古い街並みが美しい飛騨高山、日本三大名湯の下呂温泉、鵜飼をおこなっている長良川、今も残る多くのお城・城跡と城下町など、見どころ満載です。
このような観光地であるからこそ、街の美化は大切です。
そんな岐阜県の、ゴミ屋敷に関する条例は、どのような内容なのでしょうか。
目次
岐阜県のゴミ屋敷に関する条例とは?
岐阜県のゴミ屋敷に関する条例は、正式名を「岐阜県廃棄物の適正処理等に関する条例施行規則」といいます。
多くの条例は、都市単位で規定されていることが多いのですが、こちらに関しては県の条例として定められています。
平成11(1999)年に施行され、その後5回ほど改正されています。
岐阜県は、飛山濃水と称される北アルプスをはじめとする山々や、木曽川・長良川・揖斐川の三大河川を擁する素晴らしい自然環境に恵まれた地域です。
岐阜県民は、その自然環境に支えられて、美しく快適な環境で生活してきました。
しかし、時代が進むにつれ、大量の廃棄物が発生するようになってきました。
また、廃棄物の不法投棄が後を絶たず、岐阜県の誇る美しい自然環境・生活環境を保つことが難しくなっています。
廃棄物問題に関しては、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」 (昭和45年法律第137号)という法律があります。
しかし、岐阜県では、廃棄物をめぐる様々な問題に対応するにはこの法律では不十分な点があると考えました。
そのため、県民の生活環境を良好に保つため、岐阜県環境基本条例(平成7年岐阜県条例第9号)を根拠として、岐阜県独自の規範を定めることにしたのです。
この条例では、岐阜県環境基本条例(平成7年岐阜県条例第9号)第15条 (規制の措置)、第20条(資源の循環的な利用等の促進)、第21条(廃 棄物処理対策の促進)の規定に基づいて、廃棄物の適正処理を行うために必要な事項を定めています。
こうして、県民・事業者・行政が一体となって廃棄物の減量を進め、不法投棄を防止して、岐阜県本来の美しく豊かで快適な生活環境を守ることになりました。
しかし、この条例を制定したのち、時代の変化とともに廃棄物をめぐる課題はいっそう多様化・複雑化してきました。
国では廃棄物処理法の改正が相次いでおり、岐阜県においても、本条例の改正を行っています。
また、新たに「岐阜県埋立て等の規制に関する条例」(平成18年条例第47 号)や、「岐阜県リサイクル認定製品の認定及び利用の推進に関する条例」(平成19年 条例第14号)、「岐阜県産業廃棄物処理施設の設置に係る手続の適正化等に関する条 例」(平成21年条例第20号)を制定し、多様化・複雑化する課題への法的対応の強化を図っています。
岐阜県のゴミ屋敷関連条例の内容〜① 定義(第2条)
では、岐阜県のゴミ屋敷に関する条例の内容について見ていきましょう。
再利用(第1項)
活用しなければ不要となるものや廃棄物を再利用したり、資源として利用することをいいます。
廃棄物の減量(第2項)
廃棄物の発生を抑えたり、廃棄物を再利用したりすることによって、廃棄物の処理量を減らすことを指します。
資源の有効利用(第3項)
廃棄物による環境への負荷を減らすため、資源の循環的な利用などを促進することをいいます。
廃棄物の不適性処理(第4項)
法令・条例に違反する廃棄物の処理や、環境の適正な保全に支障を及ぼす恐れがある廃棄物の処理をいいます。
これらの条項から、岐阜県がごみの減量だけでなく、リサイクルやリユースにも力を入れていることが窺えます。
岐阜県のゴミ屋敷関連条例の内容〜② 地域の清潔保持に関する責務
県民の責務(第3条)
岐阜県民は、自主的に清掃活動を行うなど、地域を清潔に保つ義務があります。(第1項)
また、どんな人も、空き缶・空きビン・紙くず・たばこの吸い殻などのごみを、みだりに捨てたり散乱させることで、地域の清潔保持を阻害してはなりません(第2 項)。
県の責務(第4条)
岐阜県は、ごみの散乱防止や、そのほかの清潔保持に関して、総合的な施策を講じ、また実施することに努めなくてはなりません。
市町村との連携(第5条)
岐阜県は、県下の市町村が行うごみの散乱防止・清潔保持に関する施策の策定を支援するよう努めなければなりません。
また、本条例に関して市町村と密接な連携を図るものとします。
観光資源を多数持つ岐阜県であるからこそ、県として大きな条例を作るとともに、県下の市町村がそれぞれの地域の実情に合った施策策定の支援もおこなていくことを定めています。
岐阜県のゴミ屋敷関連条例の内容〜③ ゴミ屋敷を生まないために
県民・事業者・県が一体となってゴミの減量・清潔保持に努めている岐阜県。
しかし、岐阜県においても、条例中に「ゴミ屋敷」という文言は出てきません。
ゴミ屋敷に関してはどのように規定しているのでしょうか。
土地所有者等の義務(第13条)
土地所有者等は、所有・占有・管理する土地において、廃棄物の不適正処理が行われないよう、管理に努めなければなりません(第1項)。
また、土地所有者等は、その土地において廃棄物の不適正処理が行われたことを知ったときは、速やかにその旨を関係市町村または県に通報する義務があります(第2項)。
このような場合、土地所有者等は、原状回復するため、その権限内で行える対策を行わなくてはなりません。
また、県や市町村が講ずる措置に協力する義務があります(第3項)。
岐阜県知事は、県内の土地で廃棄物の不適正処理が行われたことを知った場合、これを土地所有者等の責とする事由があると認めるときは、当該土地所有者等に対し、その権限内でできる対策を行うよう勧告することができます(第4項)。
つまり、土地所有者や占有者・管理者は、まずその土地で不法なごみ処理が行われないよう管理に努めなくてはなりません。
そのため、住人(占有者)が大量にごみを溜めたり、敷地内や近隣にごみを堆積するようなことがあってはならないわけです。
もし、不法投棄をされたり、ごみを大量に堆積するなどの「不適正処理」があった場合は、速やかに片付けたり、自治体に通報したり、自治体の対策に協力したりしなくてはなりません。
また、第4項では、県知事による片付け勧告を定めています。
県の責務(第14条/第15条)
岐阜県は、県民・事業者・県下の市町村と密接な連携をとり、廃棄物の不適正処理に関して総合的な対策を講じます(第14条第1 項)。
また、県は、廃棄物の不適正処理に対して的確な対応が行えるよう、県事務所・警察署等の県関係機関・消防署等の市町村関係機関等が一体となって対策できるよう、必要な組織を設けます(第14条第2項)。
また、県は、廃棄物の不適正処理が行われないよう監視したり、早期発見したりするため、県民の協力を得るよう努めます(第14条第3項)。
そして、廃棄物の不適正処理が行われたことを知ったときは、関係市町村への通報・状況調査を行い、生活環境を保つために必要な措置を講じます(第14条第4 項)。
県は、岐阜県下の市町村に対し、住民・事業者・県と密接に連携をとり、地域の実情に応じた必要な対策を講ずるよう求めることができます(第1項)。
また、県は、県下の市町村において廃棄物の不適正処理が行われたことを知ったとき、以下のことと定められています。
- 速やかにその旨を県に通報すること
- 当該廃棄物の不適正処理の状況を調査し、生活環境の保全上必要な措置を講ずるよう求める
岐阜県のゴミ屋敷関連条例の内容〜④ 条例の運用
平成26 (2014)年には「岐阜県廃棄物の適正処理等に関する条例運用通知」によって、新たに条例の解釈や運用について説明されています。
たとえば、第3条第1項「県民は、自主的に清掃活動を行う等により、地域の清潔保持に努めなければならない」について、国の法律である廃棄物処理法との違いを述べています。
清潔の保持に関して、廃棄物処理法の第5条が「土地または建物の占有者等の責務」として定められているけれども、本条例においては、「県民の一般的な清潔保持義務」として定めたものであると説明されています。
また、第4条で、地域の清潔保持に関して、県の責務を定めています。
岐阜県では、昭和62(1982)年に「美しいふるさと運動(愛称)岐阜県環境美化運動推進要綱」を制定して全県的な美化運動にも取り組んでおり、さまざまな面から美しい環境を保つために取り組みを行っています。
まとめ
岐阜県のゴミ屋敷に関する条例は、正式名を「岐阜県廃棄物の適正処理等に関する条例施行規則」といいます。
県民・事業者・県また県下の市町村が協力・連携し、一大観光地である岐阜県の環境を美しく保つために努力しています。