岐阜県岐南町では、岐南町生活環境の保全に関する条例と呼ばれる、いわゆるゴミ屋敷対策のための条例を制定しています。
人口およそ26,000人、田んぼや住宅地が広がる落ち着いた町に制定されている岐南町生活環境の保全に関する条例について、詳しく見てみましょう。
岐南町生活環境の保全に関する条例について
岐阜県岐南町が制定している岐南町生活環境の保全に関する条例は16条からなる、生活環境保全のための条例です。
「生活環境保全」と銘打たれていますが、その中身はゴミ屋敷対策だと考えてよいでしょう。
そこで、岐南町生活環境の保全に関する条例の中で、ゴミ屋敷対策として直接的な効力が期待できる条文をご紹介します。
岐南町生活環境の保全に関する条例第1条
第1条は岐南町生活環境の保全に関する条例の目的が明文化されています。
「廃棄物によって生じる不良な状態を解消するため」との文言があります。
こちらはゴミ屋敷を指すものだと考えてよいでしょう。
つまり、岐南町生活環境の保全に関する条例はゴミ屋敷を解消するための条例だと考えることができます。
岐南町生活環境の保全に関する条例第3条
目的達成のため、つまりはゴミ屋敷解消のために必要な施策を推進すると共に、不良な状態の解消の支援に努めると記載されています。
ゴミ屋敷を改善するための施策だけではなく、ゴミ屋敷住居者への支援も岐南町の責務だと位置付けています。
岐南町生活環境の保全に関する条例第4条
第4条では土地、あるいは建築物を不良な状態にしてはならないと定めています。
つまり、ゴミ屋敷にしてしまうことは条例違反だと考えることができます。
また、もしゴミ屋敷にしてしまった場合は、解消、さらには岐南町が実施する施策に協力するようにとの記載もあります。
岐南町生活環境の保全に関する条例第5条
第5条では、調査が必要だと町長が認めた場合に、所有者立ち会いのもとでの立入調査を行えるとしています。
つまり、ゴミ屋敷の状態が続くようであれば、町長権限にて立ち入り調査が可能です。
岐南町生活環境の保全に関する条例第6条
第6条ではゴミ屋敷を解消するために、必要な助言や援助を行えることが記載されています。
つまり、ゴミ屋敷に対して住居人の自発的な努力を待つだけではなく、積極的に助言・援助を行えることを意味します。
岐南町生活環境の保全に関する条例第7条~第9条
ここでは指導、命令、公表が規定されています。
第4条に違反している、つまりはゴミ屋敷だと確認された場合は、指導できます。
さらに、指導でも効果がない場合には、第7条で勧告も可能だと明文化しています。
勧告しても解消されない場合は、第8条で命令できると定めています。
そして命令に従わない場合には、公表できることを第9条で明文化しています。
岐南町生活環境の保全に関する条例第10条
第10条では行政代執行、さらにはその費用をゴミ屋敷住居人から徴収できることが定められています。
ただし、行政代執行を行う場合は審査会を開いて意見を聞くことも定められています。
つまり、ゴミ屋敷がなかなか改善されない場合、行政代執行が可能ですが、町長が独断で勝手に行政代執行を命令できるのではありません。
審査会を開催して意見を聞いてから執行する形となります。
岐南町生活環境の保全に関する条例の特徴
16条からなる岐南町生活環境の保全に関する条例の中からゴミ屋敷対策となる部分をご紹介しました。
これらから、岐南町生活環境の保全に関する条例がどのような条例なのかが見えてきます。
ゴミ屋敷の条例としては細かく定められている
岐阜県岐南町が制定している岐南町生活環境の保全に関する条例は、次のように事細かい部分まで想定されたゴミ屋敷のための条例となっています。
- 指導
- 命令
- 勧告
- 行政代執行
- 費用請求
- 審査会の開催
ゴミ屋敷の予防にも対応している
岐南町生活環境の保全に関する条例は、ゴミ屋敷をどのように解決するかだけでなく、ゴミ屋敷を生まないための施策も盛り込まれています。
例えば第6条にて、相談や援助が規定されています。
ゴミ屋敷になってしまってからだけではなく、ゴミ屋敷になりそうな段階での相談・援助も可能だと解釈できます。
ですから、ゴミ屋敷対策としてはもちろんですが、ゴミ屋敷を生まないための条例としても機能することでしょう。
岐南町民への配慮が見られる条例
第15条で、審査会や委員会の人間は、職務上知り得た情報を他に漏らしてはならないと定めています。
つまり、ゴミ屋敷住居人のプライバシーにも配慮しています。
他にも審査会の開催等、行政側が一方的に町民に押し付けるだけではなく、行政へのブレーキも見られる条例となっています。
岐南町のゴミ屋敷条例はなぜここまで細かいのか
岐阜県岐南町が制定している岐南町生活環境の保全に関する条例は、細かい部分への配慮がみられます。
ここまで細かい条例が制定されている場合、過去にゴミ屋敷問題で悩まされているケースが一般的です。
しかし、岐南町は過去、行政代執行にまで至ったことはありません。
さらに、ゴミ屋敷問題で住民が揉めたとの声も聞こえてきません。
では、なぜここまで細かい条例を制定しているのか、その理由を探ってみましょう。
ゴミ屋敷リスクが高いと感じている
岐阜県岐南町は人口およそ26,000人の町です。
人口だけを考えると決して多くはありません。
しかし、愛知県に隣接していたり、国道と高速道路の十字路が形成されているなど交通の要衝である点から、人の往来の多い町です。
つまり、住民起因ではなく、不法投棄の蓄積等による外的要因からのゴミ屋敷リスクを懸念している可能性があります。
住みやすい町としてのアピール
岐阜県岐南町に限らず、多くの自治体は人口転出・減少に悩んでいます。
だからこそ、人口を増やすために施策を講じることで住みやすい町だとアピールしている自治体もあります。
岐南町生活環境の保全に関する条例は、ゴミ屋敷条例としてはとても細かい部分まで練り込まれています。
この点は、「住みやすい町」としてアピールできる材料に成り得るものです。
来るべき未来に備えて
ゴミ屋敷の原因の一つとして、痴ほう症の高齢者が無意識でゴミを持ち帰ることが挙げられます。
つまり、高齢者の多い町はゴミ屋敷リスクが潜んでいるとも解釈できます。
岐阜県岐南町も、他の自治体同様少子高齢化が進んでいます。
今後、高齢者がさらに増えるので、ゴミ屋敷リスクが高まることが懸念されています。
つまり、問題が顕在化されてからではなく、早い段階から条例を制定しておこうと考えたのかもしれません。
岐南町生活環境の保全に関する条例についてのまとめ
岐阜県岐南町が制定している岐南町生活環境の保全に関する条例は、行政代執行やそこでの費用請求、さらには行政代執行に至るまでの指導、勧告、命令のプロセスまで規定されています。
また、直接的な施策だけではなく相談・援助まで規定されているなど、細かい部分まで想定されたゴミ屋敷条例となっています。
ゴミ屋敷が現れた時の対応策としてだけでなく、予防としての一面もあるので、綺麗な街並みを維持できることでしょう。