「ドライアイスを流しに捨てても大丈夫?」
「子どもの自由研究で遊ばせたいけれど危険はない?」
など、ドライアイスの扱い方に悩んでいませんか?
ドライアイスを使うときは、やっていいこと・いけないことを正しく知っておく必要があります。マイナス79℃という極低温物質であるドライアイスは、触れた際の凍傷や密閉による破裂事故などへの注意が欠かせません。
そこで今回はドライアイスでやってはいけない8つのことと、死亡事故などを避けて安全に処分する方法について解説します。自宅の冷凍庫で安全に保存する方法もお伝えするので、ぜひ参考にしてください。
<この記事で分かること>
- やってはいけない! ドライアイスで避けること8選
- ドライアイスの正体と死亡事故の可能性
- ドライアイスの安全な保存法と処分法
目次
ドライアイスでやってはいけないこと8選
ドライアイスは手軽に使える冷却剤ですが、扱い方を誤ると大事故につながるおそれがあります。ここでは、やってはいけない8つのことを理由とともに解説します。ついやってしまいがちな注意点もあるので、安全のためにも必ず覚えておきましょう。
ドライアイスを密封する
ドライアイスを密封容器に入れると爆発するおそれがあるため、絶対に入れてはいけません。固体のドライアイスが溶けて、気体になるときには約750倍にも体積が膨張します。固体から気体になる現象を「昇華」と呼び、昇華の際には密閉容器内で圧力が急激に高まります。その結果、耐えきれなくなった容器が破裂してしまうのです。
たとえば、ペットボトルや金属缶などにドライアイスを入れて密封すると、やがて内部の圧力に耐えきれなくなった容器が大きな音を上げて破裂します。鋭い破片が飛び散って、ケガ人が出たり警察沙汰になったりした事例も実際に見られるので絶対にやってはいけません。ドライアイスを保管するには、ガスの逃げ道のある発泡スチロールのような容器が必要です。
トイレやシンクにドライアイスを捨てる
トイレや洗面台、シンクにドライアイスを捨ててはいけません。ドライアイスによる急激な温度変化で、トイレや洗面台の陶器素材やシンクのステンレス、排水口の塩化ビニルなどが破損する可能性があるからです。
また、固体のドライアイスをトイレやシンクに流し入れると排水管内部で昇華して、膨張による破損事故が起こる可能性があります。さらに、換気が不十分だとトイレや水回りに昇華した二酸化炭素ガスが充満するため、酸欠事故のリスクも生じます。住宅設備の破損を避け、命を守るためにもトイレやシンクにドライアイスを捨てるのはやめましょう。
ドライアイスにお湯をかける
ドライアイスにお湯をかけてはいけません。お湯をかけると急激に昇華して二酸化炭素ガスが発生し、ドライアイスのかけらや熱湯が飛び散ってくることがあり危険です。
ドライアイスに水をかけると溶けるのが早まり、お湯だとより急激に溶けて短時間のうちに大量の二酸化炭素が発生します。急激な温度変化・圧力変化が起こると、ドライアイスが割れる場合があります。大きな破片が皮膚に付いたり目に入ったりすると、凍傷や失明などにつながるため大変危険です。
「できるだけ早く溶かしてしまいたい」という場合には、安全のためにお湯ではなく水を使用しましょう。
ドライアイスを素手で触る
ドライアイスは素手で触ってはいけません。マイナス79℃という極低温の物質なので、たとえほんの数秒でも直接触れると皮膚の細胞が凍り付き、やけどのような損傷を引き起こします。
実際に、子どもが興味本位で触ってしまい、皮膚に水疱ができたりやけどのような症状が出たりした事例が報告されています。見た目はただの氷のように見えるため軽く考えられがちですが、氷は0℃程度、ドライアイスはマイナス79℃などで危険性は比べ物になりません。ドライアイスを取り扱う際は、必ず厚手の手袋やトングを使用してください。
ペットや子供の手が届く場所に置く
ドライアイスはペットや子どもの手が届く場所に置いてはいけません。誤って触れたり口に入れたりすると、凍傷や窒息の危険があるからです。とくに小さな子どもは、モクモクと出るドライアイスの煙を面白がって近づいてしまうので注意しましょう。
アイスや生鮮食品を購入したときに付いてくるドライアイスは、子供やペットが触れないように屋外などで昇華させて処分しましょう。保管する場合には発泡スチロールのような安全性の高い容器に入れて、子どもやペットが近付けない高い棚の上などに置くことが大切です。
なお、科学の実験などで子どもにドライアイスを扱わせる場合には、素手で触ったり口に入れたりしないよう必ず保護者同伴で行ってください。
密室でドライアイスと過ごす
密室でドライアイスを放置すると、二酸化炭素中毒になる危険があります。二酸化炭素を大量に吸い込むと、意識不明や昏睡に陥ることがあるため絶対に密室でドライアイスを放置してはいけません。
昇華した二酸化炭素は無色無臭で気付きにくく、酸素濃度を下げて人間の呼吸を妨げます。とくに寝室や車内など密閉性の高い空間では、いつの間にか酸欠になって致死的な事故に発展する可能性が高いです。ドライアイスの密閉空間での使用は避け、必ず換気の良い場所で扱いましょう。
ドライアイスを爆発させる
ペットボトルなどの密閉容器にドライアイスを入れると爆発するとお伝えしましたが、遊びやいたずら目的でも絶対にやってはいけません。密閉容器内で急速に二酸化炭素が膨張して破裂し、鋭い破片が周囲に飛び散って死傷事故が起こる危険があります。
実際に2011年には、ドライアイスと水を入れたペットボトルの爆発事故により高校生が失明したという事故がアメリカで報じられました。動画サイトなどで「ドライアイス爆弾」として話題になることもありますが、事故や逮捕事例もあるので絶対にやめましょう。東京消防庁でも、ペットボトルにドライアイスを入れた際の危険性についてSNSなどで注意喚起しています。
ドライアイスで死亡するのはなぜ?
優れた冷却機能を持つドライアイスですが、誤った使い方をすると死亡事故が起こる可能性があります。
<ドライアイスが死亡につながるケース>
- 二酸化炭素による酸欠
- 密閉容器での爆発
身近な事例でとくに注意が必要なのは、昇華した二酸化炭素による酸欠です。ドライアイスは昇華すると無色無臭の二酸化炭素ガスになり、酸素より重いため床や低い場所にたまります。換気の悪い室内や車内で大量に使用すると、二酸化炭素中毒や酸欠による頭痛やめまい、呼吸困難が起こり、最悪の場合は命を落とします。自動車や室内に持ち込むときは、十分な換気が必要です。
また、前述のようにペットボトルや金属缶にドライアイスを密閉すると「ドライアイス爆弾」となり、殺傷力を持ちます。ドライアイスの冷たさではなく、二酸化炭素ガスの発生による酸欠や体積膨張が死亡事故をもたらす点には注意が必要です。
そもそもドライアイスとは
ここでは、ドライアイスという物質の基本的な性質を解説します。安全に扱うためにも、正しい知識を身に付けましょう。
ドライアイスの正体は二酸化炭素
ドライアイスの正体は、固体化した二酸化炭素を押し固めて形を整えたものです。常温の環境では二酸化炭素は気体ですが、マイナス79℃以下に冷却・加圧すると固体になります。私たちが呼吸するときに排出しているあの二酸化炭素が、ドライアイスの正体と聞くと意外に思う人もいるかもしれません。
氷は溶けると液体化して水になりますが、ドライアイスは通常の環境では溶けても液体にはなりません。固体から気体へと昇華するとき周囲の熱を大量に吸収するため、冷却力が非常に高く食品やアイスクリームの保冷剤として活用されています。
ドライアイスの白い煙は水
ドライアイスといえば、モクモクと立ち上がる白い煙を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。「あの煙が二酸化炭素なの?」と考えるかもしれませんが、実際には二酸化炭素ではありません。空気中に存在していた水蒸気が、ドライアイスの昇華によって冷やされて生じた細かな水滴が白い煙の正体です。
正体が水であるため、白い煙そのものに危険性はありません。しかし、煙が発生するときに二酸化炭素ガスが発生しているため、空気中の二酸化炭素濃度が高くなっています。酸欠を避けるため、ドライアイスの白い煙が出ている場所では十分な換気が必要です。
安全なドライアイスの保存方法
自宅の冷凍庫でドライアイスを長期保存することはできません。しかし、一時的な保存であれば可能です。ここでは食品の保存や親子の科学実験などにドライアイスを使いたい人に向けて、安全なドライアイスの一時保存方法について解説します。
ドライアイスは冷凍庫で何日くらい持つの?
ドライアイスが消えてなくなるまでの時間は、梱包の有無や冷凍庫の状態などにより異なります。一般的には、新聞などできちんとくるんで冷凍庫の開け閉めを最低限にすると1日~2日程度保存できます。
一般家庭の冷凍庫の庫内温度はJIS規格によりマイナス18℃以下と定められており、ドライアイスが溶けるマイナス79℃と比べてかなり高温です。このため、どれほど工夫をしても自宅でドライアイスを長期保存することは不可能です。
ちなみに、スーパーや飲食店の業務用冷凍庫もマイナス20℃~マイナス60℃程度なので、ドライアイスの昇華を止めることはできません。ドライアイスの製造から配送までの設備が整っているため、店舗に届いたドライアイスをお客さんに渡せる仕組みになっています。
新聞紙やタオルなどで包む
ドライアイスを保存するなら、新聞紙やタオルでくるみましょう。新聞紙やタオルには断熱効果があり、また、直接外気に触れるのを防いで昇華するスピードを緩やかにできます。
スーパーなどで手に入れたドライアイスをそのまま袋に入れて持ち帰ると数十分程度で小さくなってしまいますが、新聞紙に包めば常温でも数時間程度は持たせることができます。新聞やタオルで包んでから冷凍庫に入れれば、さらに長持ち可能です。もちろん、完全に昇華を止めることはできないので一時的な保存方法として覚えておきましょう。
発泡スチロールの箱に入れる
発泡スチロールの箱は、ドライアイスの保管におすすめです。発泡スチロールは断熱性に優れて外気温の影響を受けにくいため、ドライアイスの昇華をある程度は抑えられます。また、ペットボトルや金属缶と異なり、気体が通り抜ける隙間もあるため中にドライアイスを入れても爆発の危険はありません。
ドライアイス専用の保冷ボックスも売られているので、できるだけ長く保管したい人は購入を検討するのもひとつです。アマゾンやホームセンターなどで、性能に応じて5000円前後~数万円程度で購入できます。
発泡スチロールの箱がない場合はダンボールで代用
発泡スチロールが手元になければ、ダンボール箱で代用することも可能です。発泡スチロールに比べると断熱性では劣りますが、外気との接触を防いで保存時間をある程度が伸ばせます。剥き出しでの保管に比べれば長持ちしますが、発泡スチロールの保冷効果には及ばないので長時間の保存には向きません。
厚手のダンボールを使い、新聞紙やタオルでドライアイスをくるんだほうが持ちが良くなります。さらに、ドライアイスが何個かある場合はできるだけ密着させたほうが、温度の上昇が緩やかになって溶けにくくなります。
ドライアイスの正しい捨て方3選
ドライアイスを安全に捨てる方法を解説します。なお、凍傷を避けるためドライアイスに触れるときは厚手の手袋を着用してください。
1.屋外に放置する
最も簡単な処分法は、ドライアイスを屋外に置いておく方法です。ドライアイスが昇華して二酸化炭素ガスとなり、自然に空気中に拡散していきます。換気の悪い室内では酸欠のリスクがありますが、庭やベランダのような風通しの良い屋外なら危険はありません。
特別な道具を使わず手軽で安全に処分したいという人は、屋外に放置しましょう。ただし、小さな子供のいる家庭では、子供の手が届かない場所を選ぶことが大切です。また、通行人の行き交う路上などに放置すると不審物や火災と勘違いされるおそれがあるので、置き場所には注意してください。
2.発泡スチロールに入れる
発泡スチロールの箱に入れておくと、ゆっくり昇華させて処分することができます。発泡スチロールの断熱効果で昇華のスピードがゆるやかになり、徐々に二酸化炭素ガスを発生させながら数時間かけて消えていきます。
ただし、ドライアイス入りの発泡スチロール容器を風通しの悪い室内に置いてしまうと、二酸化炭素濃度が高まり酸欠などに至るおそれがあるため注意が必要です。とくに車内や地下室、寝室などは空気が滞りやすいので、ドライアイスの入った発泡スチロール容器の置き場にするのはやめましょう。屋外に置くか、窓や換気扇で換気を良くすることが重要です。
3.水に入れる
ドライアイスを水に入れると、手早く処分することができます。水に触れたドライアイスは昇華のスピードが速まり、大量の白い煙を発生させます。見た目にもおもしろい現象なので、子供に科学を教えるのにも役立ちます。
ただし、煙と一緒に二酸化炭素ガスが一気に発生しているので、十分に換気しながら行いましょう。屋外や窓を開けた場所でバケツに水を張り、少量ずつドライアイスを入れれば短時間で昇華しきれます。二酸化炭素濃度の急上昇を避けるため、ドライアイスは一気に入れずに少量ずつ溶かしていきましょう。
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まとめ
ドライアイスは便利な冷却剤ですが、安全上絶対にやってはいけないことがあります。密閉容器に入れたり車内や密室で放置したりするのは、死亡を含む重大事故につながるおそれがあるのでやめましょう。また、素手で触ったり破片が飛び散ったりしたときの凍傷や、トイレ・シンクにドライアイスを捨てたときの設備破損などのリスクにも注意が必要です。
ドライアイスを安全に利用する場合が子どもやペットの手が届かない場所で扱い、家庭内での保存は発泡スチロールや新聞紙を用いた一時保存にとどめましょう。処分の際は屋外で昇華させるのがおすすめですが、室内で行うなら十分な換気が不可欠です。正しい処分法・保存法をおさえて、ドライアイスを安全に扱いましょう。