ゴミ屋敷は社会問題となりつつあります。
そのため、多くの自治体で独自にゴミ屋敷対策のための条例を制定し、解決策の一環として行政代執行、つまりは強制的なゴミ屋敷撤去も可能としています。
実際に行政代執行が行われると、ニュースで報じられることもありますので、何となく見たことがあるという人もいるかもしれませんが、どのような流れで行政代執行にまで至るのか、よく分からないという人も多いのではないでしょうか。
そこでゴミ屋敷への行政代執行について特徴や流れ、さらには注意点等、様々な点から解説していきましょう。
目次
ゴミ屋敷への行政代執行について
ゴミ屋敷に悩まされていた理由として、法律で対応できない点が挙げられます。
汚い家屋は、決して良いものではないとは誰もが思っていても、取り締まる法律がありませんでした。
そこで自治体が条例を定めました。
条例は地域に限定したものではありますが、法律同様の拘束力を持つものです。
つまり、ゴミ屋敷に関する条例にて行政代執行まで規定していれば、行政代執行が可能になります。
行政代執行とは?
そもそも行政代執行がよく分からないという人も多いようですが、行政代執行とは行政による強制撤去です。
ゴミ屋敷は様々な物で溢れた状態です。
住居人とすれば「必要なもの」だと言い張ることでしょう。
しかし近隣の住民にとっては景観だけではなく、異臭、さらにはもしもの時の被害拡大等が懸念されます。
それらを受け、行政が強制的に堆積物を撤去することを行政代執行と呼びます。
全ての自治体にて行政代執行がある訳ではない
ゴミ屋敷への行政代執行の根拠は条例です。
条例にて制定されているので、行政は行政代執行が可能になるのですが、裏を返せばあくまでも条例にて制定されている自治体だけしか行政代執行を行えません。
法律は全国一律のものですが、条例は自治体によって異なります。
地域住民の声を受けて制定されるものでもあることから、地域住民のニーズに則ったものになります。
つまり、ゴミ屋敷問題が顕在化していない自治体では条例化されていない可能性が高いです。
法律では対処できないゴミ屋敷問題を解決してもらいたいとの地域住人の声を受けて条例化しますので、決して全ての市町村にて行政代執行が可能な訳ではありません。
ゴミ屋敷への行政代執行までの流れ
ゴミ屋敷条例にて行政代執行が行えると制定していると、実際にゴミ屋敷の問題が勃発した際、手順を踏んで行政代執行を行い、強制的に堆積物を撤去することが可能です。
しかし、行政代執行を行うまでにはいくつかの手順が必要です。
細かい部分は地域の条例によって異なりますが、大まかな流れを説明しましょう。
地域住民からの苦情・相談
基本的に行政は受け身の姿勢です。
警察のようにパトロールして未然に何かを防ぐのではなく、あくまでも地域住民からの苦情・相談を受けてから動き始めます。
ゴミ屋敷には定義がありませんが、不用品等、堆積物にて異臭が発生していたり、あるいは堆積物が道路にまではみ出ている等、地域社会に不利益が出るリスクがあると相談を受けてから、行政が動きます。
ゴミ屋敷の調査
ゴミ屋敷の苦情・相談を受けた行政は、いきなり行政代執行を行うのではなく、まずはゴミ屋敷の実態を調査します。
どれだけの堆積物があるのか、ゴミ屋敷の状況、周辺地域住民への影響等をチェックします。
もちろんチェックするのは自治体の職員です。
立ち入り調査
ゴミ屋敷住居への立ち入り調査も行います。
外からの調査だけではなく、誰が住んでいるのか、居住者の生活動態等までチェックします。
指導・勧告・命令
調査に基づき、指導を行います。
指導でも改善されない場合、勧告を行います。
勧告でも何ら改善されない場合は命令を、そして命令でもさらに何も改善されない場合、行政代執行となります。
もちろん細かい部分は自治体の条例によって異なりますが、大まかな流れとしては上記となります。
行政代執行のデメリット
行政側が勝手に掃除を行ってくれるのであれば、自ら掃除するよりもメリットなのではないかと思っている人もいるようですが、実は行政代執行はデメリットが多々あります。
行政代執行の費用は基本的には「自腹」
あくまでも自治体次第ではありますが、行政代執行の費用はゴミ屋敷居住者に請求できると明文化している自治体が多いです。
つまり、「勝手に行政が掃除をしてくれる」ではなく、「勝手に掃除をして費用まで請求される」のが行政代執行です。
当たり前ですが、少しでも安い業者を利用するといった考えはありません。
行政が委託した業者が作業を行い、費用を請求します。
周囲からのネガティブな視線
行政代執行はまだまだ珍しいことから、ニュースバリューも高いです。
そのため、場合によってはメディア等も押しかけます。
自らの家がニュースによって全国に報道される可能性もあれば、周辺から野次馬も訪れることでしょう。
いわば「見世物」のような形となってしまいます。
行政によって告示される
ゴミ屋敷への行政代執行は、指導、勧告、命令と手順を進めますが違反者、つまりは指導や勧告、命令に従わない場合には行政が告示できます。
つまり、役所等に「違反者」として張り出されます。
気にしないという人もいるかもしれませんが、誰もが閲覧できる場所に「違反者」として名前が張り出されてしまいます。
行政代執行を回避するための方法
ゴミ屋敷への行政代執行の流れは先に説明した通りです。
では、行政代執行を回避するためにはどうするべきなのかを、いくつかお伝えしましょう。
行政の指導、勧告、命令に従う
行政代執行は行政がゴミ屋敷住居人に指導、勧告、命令と行い、全てにおいて改善がみられない場合に行うものです。
つまり、指導や勧告、命令に従い、改善すれば行政代執行には至りません。
行政代執行は、行政側としてはいわば「最終手段」です。
指導や勧告、命令を聞いてゴミ屋敷を改善すれば、行政代執行は防げます。
自力で解決できるのかという疑問
ゴミ屋敷は長い年月をかけて堆積されたものです。
自力での解決は決して簡単ではありませんが、不用品回収業者等を活用することで、改善が可能です。
また、自ら不用品回収業者等を探す場合、費用を比較できます。
行政代執行はいわば行政の「言い値」を受け入れなければなりませんが、自ら手配すれば、費用の抑制も可能です。
行政の職員と真摯に向き合う
先にもお伝えしましたが、行政代執行は行政側にとっての最終手段です。
行政側としてもできれば住居者に自発的に改善してもらいたいと思っています。
しかし、実際に行政代執行に至るケースとして多いのが、行政の職員と向き合わないことで話が進まず、結局は指導から勧告、命令と進め、行政代執行に至るケースです。
つまり、指導はもちろんですが、その前の立ち入り調査等から職員に対して真摯な姿勢で向き合い、「できることは行う」という姿勢を見せていれば、そうそう行政代執行は行われません。
ゴミ屋敷の行政代執行を回避する方法と流れについてのまとめ
ゴミ屋敷への行政代執行は、条例にて制定されている自治体が権利を持っています。
苦情や相談を受け、現地調査を行い、指導、勧告、命令に従わない場合に行政代執行を敢行します。
しかし周囲に知られるだけではなく、時にはメディアにて報道されたり、基本的には行政の言い値を請求されることになります。
それよりは、指導等が入った段階で自らで不用品回収業者等を手配した方が、価格を抑えてゴミ屋敷問題を解決できます。