近年、在宅勤務の人が増え、自宅で過ごす時間が長くなったため、ゴミ屋敷となる件数も増えていると言います。
ネット通販や出前サービスなどの利用が増えたこともゴミ屋敷を生み出している原因の一つです。
ゴミ屋敷は、異臭や害虫による被害、放火や犯罪被害のリスクが高まるため周囲の生活環境を悪化させる可能性があります。
しかし、現在日本にはゴミ屋敷を規制する法律はなく、各自治体にその対応を任せているのが現状です。
自治体によっては、条例という形でゴミ屋敷を取り締まるガイドラインを設けています。
東京都新宿区もゴミ屋敷に対する条例(通称:新宿区空き家等の適正管理に関する条例)を独自に制定しています。
この記事では、東京都新宿区のゴミ屋敷を規制するための条例について詳しく解説していきます。
目次
なぜゴミ屋敷になるの?
ゴミ屋敷となる理由は複数あります。
中には周囲がゴミだと思っても本人は必要なものと思っているケースもあります。
その認識のズレから話し合いによる問題解決が難しい場合も少なくありません。
ゴミ屋敷となるその背景の一部をまとめました。
体力・判断力の低下
高齢化社会が進む中、一人暮らしの高齢者世帯も増加の一途を辿っています。
特に体力・判断力の低下は、ゴミ出しを困難にさせる要因となっています。
以下のように様々な理由から自力でのゴミ出しが難しくなります。
- 病気や怪我により歩行が困難になった
- 認知症になりゴミの分別ができなくなった
- ゴミ出しの日を認識できなくなった
ゴミの収集癖
ゴミ屋敷となる人の中には、ゴミの収集癖がある人もいます。
いつか何かの際に使えるかもしれないと、ゴミステーションから不用品を持ち帰るパターンもあります。
このような状況の場合は、一度片付けてもすぐに元の状態に戻ってしまう傾向にあります。
仕事が忙しい
以下の結果、ゴミ屋敷となるケースもあります。
- 仕事が忙しすぎて部屋の片付けを行う気力がない
- 仕事による過度のストレスで精神的に余裕がなくゴミ出しができない
その他にも、多くの地域でゴミの収集が朝に行われるため、夜勤が続き朝のゴミ出しが難しいなど、ゴミを溜め込んでしまう理由は人それぞれです。
新宿区のゴミ屋敷条例とは
新宿区にはゴミ屋敷の他にも多く空き家があります。
そのため、「新宿区空き家等の適正管理に関する条例」が定められ、ゴミ屋敷を含む適切に管理されていない家を取り締まっています。
ゴミ屋敷条例では、ゴミ屋敷住人に新宿区が適切な指導を行いながら状況を改善していくための手段や方法が定められています。
新宿区のゴミ屋敷条例どんな特徴があるの?
新宿区のゴミ屋敷条例には「行政代執行」と呼ばれる、ゴミ屋敷条例の中でも最終手段であるゴミの強制撤去が定められています。
「行政代執行」により、ゴミ屋敷住人に代わって新宿区がゴミの撤去を行います。
多くの自治体がゴミ屋敷条例を定めているものの、行政代執行には人権問題や財産権など様々な問題が絡みます。
そのため、この制度自体を採用している自治体は多くありません。
行政代執行を決定するまでには以下の理由のため、多くの場合決定するまでに数年単位の時間がかかります。
- 本人に対し何度も改善のための指導を行う
- 専門家による審議を複数回挟む
新宿区ゴミ屋敷条例による対応の流れ①区民からの相談・連絡
新宿区の仕事は新宿区区民の健康や安全を守ることです。
新宿区区民からゴミ屋敷による害虫や治安の悪化など被害の相談や連絡を受けることで、新宿区が問題を認識しその改善に乗り出します。
新宿区ゴミ屋敷条例による対応の流れ②立入調査
条例の「管理不全な状態」に該当すると判断された場合、実態調査が行われます。
問題となっているゴミ屋敷を新宿区の職員が訪問し、立入調査を行います。
立入調査では、ゴミの堆積範囲や内容を確認するだけでなく、本人の現在の健康状態や生活状況などについてもヒアリングを行います。
しかし中には、調査を拒む人や病気や障がいなどでコミュニケーションをとることが難しい状態の人もいるため、一筋縄でいかないケースも少なくありません。
新宿区ゴミ屋敷条例による対応の流れ③助言・指導
立入調査後に専門家による審査会が開かれ、改善が必要と承認されるとそのゴミ屋敷が助言や指導の対象となります。
清掃の仕方はもちろん、介護や福祉サービスを利用することなどへのアドバイスも行われ、状況の改善サポートが行われます。
新宿区ゴミ屋敷条例による対応の流れ④勧告
複数回にわたる助言や指導にも従わない場合、改善内容に従うよう期間を定めて勧告が発令されます。
新宿区ゴミ屋敷条例による対応の流れ⑤命令
勧告の期限内にその内容を行わなかった場合、審議会が開かれます。
そして、次の段階である命令を発令するかどうか審議にかけられます。
審議会によって命令が必要と判断されれば、期限内にゴミの撤去を行うよう命令が下されます。
新宿区ゴミ屋敷条例による対応の流れ⑥公表
命令にも従わない場合、新宿区は該当するゴミ屋敷の住所や住居者の氏名などを公表することができます。
新宿区ゴミ屋敷条例による対応の流れ⑦行政代執行
命令にも従わなかった場合、再度審議会が開かれます。
そこで、ゴミ屋敷条例の最終措置である行政代執行に踏み切るかどうか審議されます。
審議会で行政代執行が必要と判断された場合、本人の代わりに新宿区がゴミの撤去を行います。
まとめ
東京都新宿区のゴミ屋敷を規制するための条例について詳しく解説してきました。
ゴミ屋敷になる原因は、掃除やゴミ出しを本人の意思で行わないだけではなく、ゴミの収集癖や認知症、精神的なストレスなど様々な要因があります。
ゴミ屋敷は一度片付ければ済むという話ではありません。
根本的な問題に目を向けない限り、元の状態に戻ってしまう可能性が高いと言われています。
行政だけではなく警察や消防、町内会、各種介護・福祉サービスなど様々な機関が連携し、問題解決に向けて働きかけていく必要があります。