兵庫県神戸市では「神戸市住居等における廃棄物その他の物の堆積による地域の不良な生活環境の改善に関する条例」(以降、神戸市ゴミ屋敷条例)と呼ばれるゴミ屋敷に関する条例を制定しています。
全17条から制定されている条例について、ゴミ屋敷の対策の根拠となる部分についてご紹介します。
目次
神戸市ゴミ屋敷条例について
神戸市ゴミ屋敷条例(神戸市住居等における廃棄物その他の物の堆積による地域の不良な生活環境の改善に関する条例)は、ゴミ屋敷の対応に関係する文言が盛り込まれている条例です。
直接的なゴミ屋敷対策となる条例をご紹介します。
神戸市ゴミ屋敷条例第1条
第1条では、廃棄物の堆積によって地域に深刻な影響を及ぼしている建物の不良な状態を改善するための条例だと規定しています。
「ゴミ屋敷」という文言は使用されていませんが、ゴミ屋敷を指すものであることは明白です。
神戸市ゴミ屋敷条例第3条
神戸市ゴミ屋敷条例第3条では、不良な状態にある、あるいはその恐れがある場合は、市民や関係機関と協力して原因や経緯の検証を行い、ゴミ屋敷改善のために必要な施策を総合的に考えると規定しています。
つまり、ゴミ屋敷、あるいはゴミ屋敷リスクがある住居が確認された場合は、原因・経緯を踏まえつつ、問題解決に考えることが明文化されています。
神戸市ゴミ屋敷条例第4条
第4条では、神戸市民は不良な状態の発生の予防に努めると規定されています。
つまり、ゴミ屋敷とならないよう努めることは、神戸市民にとっては条例で規定された「ルール」になります。
仮にゴミ屋敷にしてしまったら条例違反となります。
神戸市ゴミ屋敷条例第5条
第4条では不良な状態の発生の予防が規定されていますが、その対象は市民です。
つまり、市民全体でゴミ屋敷を生まないようにとの条例です。
また、第5条は土地や建物の所有者が、不良な状態とならないよう努めると規定しています。
神戸市ゴミ屋敷条例第6条
第6条では市、市民、さらには建物の所有者や関係機関が、条例達成のために相互に協力することが定められています。
つまり、ゴミ屋敷を生まないよう、行政や市民、そして持ち主が一体となって協力することがルールとして定められています。
神戸市ゴミ屋敷条例第7条
第7条では市長の権限が制定されています。建物が不良な状態にある場合、以下の報告を求めます。
- 内容
- 管理状況
- 住居者の状況
必要な場合には調査を行えることも記載されています。
また、住居者が分からない場合は、誰が責任者なのか調査を行える権限を有していることも明文化されています。
立入調査の権限が定められていると共に、立ち入り調査に従わない場合には、指名や住所の公表も規定されています。
しかし、公表する際には理由を通知し、意見を述べる機会を与えることも明文化されています。
神戸市ゴミ屋敷条例8条
第8条では、条例の施行のために、他の地方自治体の長や警察と、ゴミ屋敷住居者に対しての情報収集等にて協力できることが明文化されています。
つまり、神戸市だけではなく、必要であれば他の自治体や警察に協力を要請することが可能です。
ですが、その要請に応じるかは相手自治体や警察次第です。
神戸市ゴミ屋敷条例第9条
第9条では、建物等が不良な状態、つまりゴミ屋敷だと認められる場合、解消のための助言や指導を行えると記載されています。
また、助言や指導の際には、学識経験者に意見を求められる点も明文化されています。
神戸市ゴミ屋敷条例第10条~第12条
第10条~第12条では次の点が規定されています。
- 第10条で勧告
- 第11条で勧告に従わなかった場合に命令
- 第12条で命令に従わなかった場合の行政代執行
行政代執行を行う場合は、学識経験者の意見を聞くことも明文化されています。
ですので、市長の独断で行政代執行は行えません。
神戸市ゴミ屋敷条例第13条
ゴミ屋敷が市民の生命や財産に危機が及ぶ状態の時には、必要最小限の措置を行えると規定しています。
行政代執行は勧告、命令、さらには学識経験者の意見を聞いたうえで決めなければなりません。
しかし、市民に何らかの危険が及んでいる時には、最小限の措置を市長の独断で行えることが定められています。
ちなみに措置にかかった費用は、住居人が負担することも記載されています。
神戸市ゴミ屋敷条例第14条
ゴミ屋敷を解決するために、神戸市長は区長に対策のための会議を開催するよう要請が可能です。
神戸市の下には区があります。より住民に近いのは区長になります。
ですので、区長に対策会議を開催してもらうことで、より住民に寄り添った対策を考えてもらえることが条例で定められています。
神戸市ゴミ屋敷条例第15条
第15条では経済的支援が定められています。
ゴミ屋敷の住居人が経済的な理由で問題を解決できない場合は、資産を調査したうえで必要な経済支援を行えると定めています。
ただし、こちらも行政代執行同様、市長が独断で決定できるのではなく、学識経験者の意見を聴くことも明文化されています。
神戸市ゴミ屋敷条例16条
正当な理由がないものの以下の場合、5万円以下の過料を支払うことも定められています。
- 立ち入り調査を拒む
- 妨害・忌避する
- 命令に違反する
基本的に条例は「地域のルール」であり、法律のように罰則が定められていないものです。
しかし、ルール違反の場合は過料を取ることが定められています。
ですので、より高い抑止力として期待できます。
神戸市ゴミ屋敷条例から見えてくること
いわゆる神戸市ゴミ屋敷条例は細かい部分まで制定されている条例です。
その理由は以下を参照していただけると詳しく分かります。
関連記事:兵庫県神戸市と他の地域のゴミ屋敷に関する条例の違い
様々な事情があることが分かりますが、この条例が意味する点について解説していきます。
フルスペックの条例だと考えられる
兵庫県神戸市が制定している神戸市ゴミ屋敷条例は、全国的に見ても進んだ条例です。
ゴミ屋敷を片付けるだけではなく、経済的な支援策まで用意しています。
行政代執行まで定めた条例を持つ自治体は多々ありますが、経済的な支援策まで盛り込んだ条例は、まだまだ珍しいです。
ですので、神戸市の条例はフルスペックと呼ぶに相応しい、進んだ条例となっています。
市長の独断を許していない
兵庫県神戸市は全国的に見ても大きな都市です。
その市長ともなれば様々な権限を有しています。
ですが、ゴミ屋敷条例では、市長の独断が許されていることは第13条にある必要最小限の措置程度のものとなっています。
そして、大切なことは有識者に意見を聞いてからとなっています。
つまり、市長が感情論で勝手に決めることを防止しています。
例えば、攻撃的な市長になったとしても、ゴミ屋敷ではない住宅が不当に行政代執行を行われるようなことはありません。
兵庫県神戸市のゴミ屋敷に関する条例についてのまとめ
兵庫県神戸市が制定しているゴミ屋敷条例は、行政代執行が含まれています。
さらに、経済的支援や区長への指示、他の自治体との連携など他の自治体にはない施策が多く盛り込まれています。
特に経済的支援まで盛り込まれているゴミ屋敷条例はまだまだ珍しいので、神戸市のゴミ屋敷対策への本気度が伺えます。
もちろん条例を守るのは市民ですが、細かく制定されている条例は、市民に安心感をもたらします。
さらに、ゴミ屋敷問題が起きた際には条例に沿った的確な対応が期待できることでしょう。