各地でゴミ屋敷が社会問題となっています。
近年、テレビなどでも取り上げられることが多く、ゴミに埋もれた家の様子を見て驚いた事のある人も多いのではないでしょうか。
ゴミ屋敷の住人たちは、なぜあんなにモノを溜め込み、捨てられなくなってしまうのでしょう。
家がゴミ屋敷になってしまう原因のひとつに「ためこみ症」があるといわれています。
「ためこみ症」とは一体どのようなものなのでしょうか。
また、どのような人がなりやすく、どのように対応して行けば良いのでしょうか。
ためこみ症とは?
“汚部屋”や“ゴミ屋敷”に住む人は、もしかしたら「ためこみ症」になっているかもしれません。
ためこみ症は精神疾患のひとつで、適切なアプローチをしないと改善が難しい症状とされています。
ためこみ症とは、どのような病気なのでしょうか。
ためこみ症とは?
ためこみ症の芽は、11~15歳ごろに現れるといわれています。
その後、20代中ごろまでに日常生活を妨げるようになり、30代中ごろまでには仕事や私生活などが難しくなり、慢性化することもしばしばです。
ためこみ症の人は自分の趣味のもの、価値のあるものだけを集めるコレクターとは違います。
ためこみ症の人は、普通に考えれば不要で価値のないモノを大量にためこみ、手放すことができません。
このようなためこみ症は、適切な治療をしなければ収集欲を止められず、汚部屋やゴミ屋敷を生んでしまうのです。
ためこみ症の原因とは?
なぜ、ためこみ症を発症してしまうのでしょうか?
それには3つの要因が考えられます。
気質要因
ためこみ症の人は、優柔不断な性格であることが多いと言われています。
そのほかに以下のような気質も、ためこみ症の人の特徴としてよく見られます。
- 完璧主義
- 面倒事の回避
- 問題の先延ばし
- 計画を立てて仕事をまとめることが苦手
- 注意散漫
環境要因
強いストレスによる心的外傷が原因となり、ためこみ行為が始まることがあります。
また、すでにためこみ症が始まっている場合は、悪化したりするケースもあります。
遺伝要因
ためこみ行為には遺伝的要因もあります。
ためこむ症になる人の約50%には、同様にためこみ行為をする親族がいることが報告されています。
ためこみ症の症状とは?
では、ためこみ症の症状について見ていきましょう。
兆候
テーブルや椅子などに衣服や書類、小物などが山積みになって、テーブルや椅子として使えない状態が5年以上経ってしまっていませんか?
このような状態は、ためこみ症の兆候と言われています。
症状が進むと、浴室やトイレにまでモノが溢れ、使用するのが難しい状態になると危険信号です。
ものを捨てることが苦痛
ためこみ症の人は、モノを捨てることを非常に苦痛だと感じます。
それが、普通の人にとっては全く価値がなくても、とにかく捨てられない、取っておかなければいけない、という意識にとらわれます。
モノをゴミとして捨てることはもちろん、リサイクルに出す、売却する、譲渡するなどほかの手段であっても同じです。
ためこみ症の人は、自分がためこんだモノに対して価値を感じていたり、強い愛着をもっていたりします。
そして、モノを手放すことをかわいそうに感じたり、時には捨てることに恐怖感を持っていることもあるのです。
モノに強く執着してしまう
ためこみ症の人は、自分の収集したモノに強い執着心を持っています。
ためこみ症の人がゴミでさえも集めてしまうのは、そのモノの価値の有無ではなく、「モノを溜めておくこと」が目的だからです。
対象物は人によって違いますが、過剰に買い物をしたり、チラシや他の人が捨てたゴミなど無料のモノの収集をすることも。
また、「動物ためこみ」といって、狭い部屋であっても、非常に多くの動物を飼育しているケースもあります。
その多くは、動物たちの衛生状態や健康状態を良好に保つことができません。
家がモノで溢れる
ためこみ症の人の最も大きな特徴は、家の中にモノが散乱し、生活に支障が出ていることです。
症状が重くなればなるほど大量のモノを溜め込み、生活のための空間が埋まってしまうほどになります。
ためこみ症を放置するとどうなる?
ためこみ症を発症してしまった人が、そのまま放置されてしまうと、どのようなことが起こるのでしょうか。
ゴミ屋敷になる
ためこみ症を治療せず放置していると、家じゅうにモノが増え続け、最終的にゴミ屋敷になってしまいます。
ゴミ屋敷は悪臭やネズミなどの害獣や害虫などの温床のため、近隣の住民に被害が及ぶ可能性も大です。
それでも、ためこみ症の方はものを捨てることができません。
無秩序に収集し、ためこみ続けることで、ゴミ屋敷化はさらにどんどん進んでいきます。
生活が困難になる
ゴミ屋敷の中は、生活スペースもモノが埋め尽くしているため、生活が困難になります。
堆積したゴミのわずかな隙間から出入りし、ゴミを踏まなければ家の中を移動できません。
ゴミ屋敷では、キッチンやリビングもまともに使うことができません。
そのため、食事や睡眠など基本的な生活を行うことができず、健康を害することになります。
また、家の中にゴミが大量にあると、少しの火気でも大規模な火災が起きる可能性も高まります。
周囲から孤立してしまう
モノが蓄積され過ぎて部屋の掃除もできないゴミ屋敷は、とても人を呼べる状態ではありません。
その結果、友人や家族を招くこともできず、孤立しやすい状況となってしまうのです。
また、ゴミ屋敷は、悪臭や害虫などの発生により、周辺の人に悪影響を及ぼします。
そのため、近隣住民との関係性の悪化も考えられます。
ためこみ症の相談先は?
深刻な状況を招いてしまうためこみ症ですが、治療することはできるのでしょうか。
ためこみ症について相談したい場合は、精神科または心療内科に問い合わせましょう。
一口に「ためこみ症」と言っても、その症状や原因、また部屋の状況はひとりひとり違います。
医師に現状をしっかりと話し、症状に合った治療方法を一緒に探していくことが必要です。
診察には、ためこみ症の疑いがある本人が行くのが基本ですが、本人が行くのが難しい場合、家族が受診することも可能です。
ためこみ症は自力で治療するのが難しいため、家族のサポートが必要になります。
汚部屋、ゴミ屋敷に住む家族の様子に思い当たる点が多い場合は、相談に行ってください。
相談と治療の結果、ためこみ症の症状が治まってきたら、家の片付けについても考えていきましょう。
ためこみ症と診断される人の多くは、生活スペースに支障が出るほどものを溜め込んでしまいます。
しかし、ゴミの量が多いと片付けにかなりの時間がかかる上、不用品の処分について一から確認するのも大変です。
全て親族と本人だけで片付けようと無理をするのではなく、汚部屋、ゴミ屋敷の清掃を行う業者を頼りましょう。
ためこみ症の治療とは?
現在のところ、ためこみ症の治療は非常に難しいと言われています。
ためこみ症の患者自身の治療意欲が低いことも相まって、薬物療法と認知行動療法に反応するケースも少ないようです。
そんな中でも、どのような治療が行われているかを見ていきましょう。
抗うつ薬による治療
ためこみ症には、抗うつ薬が効くことがあるようです。
具体的な薬の内容は、医師が症状に合わせて判断します。
薬を服用する場合は、量や飲み方について、必ず医師の指示を仰ぎましょう。
認知行動療法
ためこみ症の治療には、認知行動療法が選ばれるケースもあります。
認知行動療法とは、心の病に対して、意思決定と分類のトレーニングをしていくというものです。
ためこみ症の場合は、「モノを捨てる」という刺激を繰り返しながら慣れていくことによって、「捨てても大丈夫」という認識を身につけていきます。
認知行動療法は、医師が症状に合わせ、個別に治療方法を考えていくのが一般的です。
まとめ
ためこみ症の人は、不要なモノにまで激しく執着し、モノを捨てることに大きな苦痛を感じてしまう精神疾患です。
そのため、家にあるモノを捨てられないばかりか、どんどんモノを集め、ためこみ、ついにはゴミ屋敷となってしまいます。
この症状が現れたら、精神科や心療内科を受診しましょう。
現在、有効な治療法などは確立していませんが、まずは、患者本人がカウンセリングなどを根気よく続ける必要があります。
医師とよく話し合いながら、解決への道を探していきましょう。
治療によりものへの執着が軽くなったら、部屋を片付け、健康的な生活を送れるようにしましょう。