ゴミ屋敷化の大きな原因に、心身の病気があります。
加齢やケガなどで体が思うように動かなくなったことだけでなく、脳の病気である認知症や、心の病気も原因の一つです。
特に脳や心の病気が原因でゴミ屋敷化している場合、ゴミを廃棄してゴミ屋敷の状態を解消するだけでは不十分です。
速やかに適切な治療を受けなければ、再びゴミ屋敷化するのは時間の問題でしょう。
そこでここでは、ゴミ屋敷の原因になる可能性が高い脳や心の病気8つと、その対処法について解説します。
目次
ゴミ屋敷の原因は脳や心の病気
ゴミ屋敷は、心の病気が原因で発生している可能性があります。
ゴミ屋敷の前段階である汚部屋程度であれば、仕事の忙しさやストレスによって片付けが追いつかなかったことが原因の可能性もあるでしょう。
しかしゴミ屋敷のレベルになると、病害虫が発生したり、異臭が漂ったりとても日常生活を送れる状態ではありません。
住宅内が持ち物やゴミで足の踏み場がないだけでなく、屋外や公共の道路にまでゴミが溢れかえることもあります。
本能的に不快感を覚えるはずの病害虫の発生や悪臭、また地域社会への迷惑行為すら気に掛けることができない心理状態は、到底健全とは言えません。
病気によって正しい判断をできなくなっている可能性は高いです。
ゴミ屋敷の原因になりがちな脳や心の病気と対処法
ゴミ屋敷の住人の心をむしばんでいる可能性が高い病気には、次のようなものがあります。
- 買い物依存症
- 認知症
- セルフネグレクト
- 注意欠陥多動性障害(ADHD)
- 強迫性貯蔵症(ホーディング)
- うつ病
- 強迫性障害
- 自閉スペクトラム症
- 統合失調症
原因1:買い物依存症
買い物依存症は精神疾患ではないとされています(2022年8月現在)。
「行動嗜癖(しへき)」と呼ばれる反復性行動の一種で、病気ではないものの、心理的治療を必要とする症状の一つとされています。
買い物をすることで気分が高揚するため、一時的に寂しさや嫌なことを忘れられます。
この快感に依存するようになり、欲しい物を買うことではなく買い物自体が目的になり、買い物することに依存するのが、買い物依存症です。
買い物依存症の兆候
買い物依存症の場合、次のような兆候が見られるとされています。
- いらないものを買う
- 買った物を覚えていない
- 買っても使わない
- 買い物する瞬間は高揚感がある
- 買い物の後に買ったことを後悔する
- 極端に大量に買い物する
- 買い物できないとイライラする
- お金がないと借金してでも買い物する
同じ物がいくつも家にあったり、明らかに使う当ての無い物を買い集めている場合、買い物依存症の可能性が疑われるかもしれません。
買い物依存症の対処
買い物依存症は精神疾患ではないものの、依存性が強い症状です。
心療内科やメンタルクリニックで診察を受けることが大切です。
お金の使い方に対する考え方を軌道修正しながら、買い物依存になった原因の解消に努めてください。
原因2:認知症
認知症は、脳の病気をはじめとする様々な原因によって認知機能が低下し、日常生活に支障が出てくる状態のことです。
認知症の兆候
認知症にはいくつかの種類があります。
認知症の種類 | 特徴 |
---|---|
アルツハイマー型認知症 | もの忘れがひどくなる |
血管性認知症 | 部分的に記憶が曖昧にあいまいになる(まだら認知症) |
レビー小体型認知症 | 現実には見えないものが見えたり、手足が震えたり、転びやすくなったりする |
前頭側頭型認知症 | スムーズに言葉が出てこない・言い間違いが多い、感情の抑制がきかない、社会のルールを守れない |
若年性認知症 | もの忘れがひどくなる |
認知症の対処法
認知症を発症した場合、ほとんどのケースで完全に治すことが困難と言われています。
単身生活を続けることは極めて困難です。
地域や医療機関のサポートを受けながら、将来的には親族宅で同居、もしくは介護施設へ住まいを移すことを考える必要があるでしょう。
原因3:セルフネグレクト
セルフネグレクトとは、自分自身の健康状態や心身の状態に関心が持てなくなる状態を意味します。
孤独な環境にある人に発生しやすいと言われており、何かしらの精神疾患を発症している可能性もあると言われています。
セルフネグレクトが悪化した場合、生きる意欲すらなくす可能性もあるため、孤独死や自殺に繋がることもあり、注意が必要です。
セルフネグレクトの兆候
セルフネグレクトの状態に陥っている場合によく見られる兆候には、次のようなものがあります。
- 入浴や洗顔、歯磨きなどを行わなくなる
- 部屋の片付けや掃除面倒で行わない
- ゴミを捨てない
- 食事を面倒がって摂らない
- 体が不調でも病院に行かない
セルフネグレクトの対処法
セルフネグレクトは、うつ病や認知症に伴って発症しているケースが少なくありません。
セルフネグレクトが進行すると、病気になったり、最悪なケースでは命を落とす危険があると言われています。
そのため兆候に気づいたら速やかに、心療内科やメンタルクリニックで治療を受けるよう促してください。
原因4:注意欠陥・多動性障害(ADHD)
ADHDは、先天的な脳の機能不全で、神経発達症群の一つとされており、不注意・多動性・衝動性の3症状が主な特徴です。
注意欠陥多動性障害(ADHD)の兆候
ADHDは、次の3つのパターンで症状が現れると言われています。
- 不注意
- 多動性と衝動性
- 不注意と多動性、衝動性
具体的には、次のような症状が挙げられます。
- 落ち着きがない
- 集中力が続かない
- 転職が多い
- 人間関係がうまくいかない
- 忘れ物が多い
- ルールを守れない
注意欠陥多動性障害(ADHD)の対処法
ADHDは先天的な病気であるため、完治は難しいものの、神経科や心療内科に定期的に通院して治療を受けることで、日常生活に支障が出ない程度に症状を和らげることも可能と言われています。
放置すれば、不安症状やうつ病を併発する危険があります。
ADHDに関する正しい理解を持って、治療が続けられるようにサポートしてください。
原因5:自閉スペクトラム症(ASD)
自閉スペクトラム症(ASD)は、発達障害の一種です。
コミュニケーションをとったり、対人関係を築くことが難しいことや、こだわりが強く、限られたことにのみ興味を持つといった特徴があります。
注意欠如・多動症(ADHD)と同様に、子どもの頃から症状が現れるケースがほとんどですが、成長過程の未熟さと混同されることもあります。
大人になり、社会生活に適応しにくいことが分かってから、診断を受けるケースも少なくありません。
自閉スペクトラム症の兆候
大人になって自閉スペクトラム症の症状が顕著に現れるケースには、次のような特徴があるとされています。
- 親密なつきあいが苦手
- 人と共感しない
- 冗談や例え話が伝わらない
- 会話が一方的
- 急な予定変更に混乱する
- 融通がきかない
ただし上記の傾向は自閉スペクトラム症以外でもあり得るため、判断が難しいのが難点です。
自閉スペクトラム症の対処法
自閉スペクトラム症の症状があり、かつ住まいがゴミ屋敷になっている場合は、医療機関で診察を受け、どのような状態かを適切に把握することが大切です。
その際、自宅がゴミ屋敷状態になっていることも伝え、周囲はどのようにサポートすれば良いかの指示を仰ぐとよいでしょう。
原因6:強迫性貯蔵症(ホーディング)
強迫性貯蔵症(ホーディング)とは、「モノを捨てたくない」「所有していたい」という強烈な抗い難い欲求に支配される心理状態です。
通常の生活を送れないほどモノを溜め込みます。
収集するものに秩序がないケースが多く、集めたモノを整理整頓できないのも特徴です。
強迫性貯蔵症(ホーディング)の兆候
強迫性貯蔵症(ホーディング)の典型的な症状には次のようなものがあります。
- モノを捨てられない
- 山ほどモノを収集しても満たされない
- 集めたモノを整理整頓しない
- モノを集めることや捨てられないことに苦しんでいる
- 1日中モノを収集することを考えてしまう
強迫性貯蔵症(ホーディング)の対処法
強迫性障害は、WHO(世界保健機関)によって「経済損失および生活の質の低下に影響する10大疾患」の1つとされています。
モノへの執着心や収集欲に苦しむ傾向が顕著です。
放置すると重症化するため、医療機関で治療を受けるよう促してください。
原因7:うつ病
うつ病の正式名称は、大うつ病性障害です。
脳の機能低下に伴って、日常生活を順調に送れないほど感情が極端に落ち込んでしまった状態になります。
うつ病の兆候
うつ病の場合、次のような兆候が見られるとされています。
- 極端に疲れやすくなる
- 物忘れがひどくなる
- 頭痛や腹痛
- 眠れない、もしくは眠りすぎる
- 食欲減退、もしくは過食
- 自殺願望
うつ病の対処法
うつ病の場合、十分な休養をとりながら医学的治療を受けて、脳の機能回復をはかることが重要です。
症状に適した認知行動療法や精神療法、投薬治療を受けるために、速やかに医療機関で診察を受けてください。
原因8:統合失調症
統合失調症は、精神障害の一つです。
幻覚や妄想に囚われたり、異常な思考や行動が見られるため、健全な日常生活を送ることが困難になります。
統合失調症の兆候
統合失調症の初期症状には、次のようなものが挙げられます。
- 不安が強い
- 感覚が過度に過敏
- 集中力の欠如
- 意欲の低下
- よく眠れない
- 食欲不振
統合失調症の対処法
統合失調症の初期症状は、他の精神疾患や心理的な不調と似ています。
しかし早い段階で治療を始めれば、高い治療効果が期待できることも報告されている病気です。
医療機関を受診し、適切な治療を受けながら、生活再建に向けたプランを立ててください。
病気以外の心理的要因でゴミ屋敷化するケース
脳や心の病気にまでは至っていないものの、心理的要因でゴミ屋敷にしてしまう可能性もあります。
こういったケースに陥る人に共通する性格的特徴が、次の3つです。
- モノを捨てられない性格
- 孤独
- 真面目な性格
モノを捨てられない性格
モノを大切にする価値観は貴重です。
しかし様々な要因でその価値観のバランスを崩すと、不要なものまで捨てられず、汚部屋からゴミ屋敷へ発展していきます。
不要になったものを廃棄するのは適切な判断です。
自分で管理しきれない分量の物品を所有しないように、定期的に断捨離をするよう心がけると良いでしょう。
孤独
社会から孤立して生活している人はもちろんのこと、社会生活を支障なく送っていながらも、プライベートでは人との繋がりが希薄で、孤独を感じている場合もあります。
例えば、空間をモノで埋めてしまったり、捨てるべきモノに感情移入して、捨てられなかったりなど、寂しさをモノで埋め合わせるケースがあります。
きっかけは、孤独を埋め合わせるためにモノを収集していただけのはずが、徐々に心を病み、自分で制御できなくないほど病状が悪化する可能性があります。
「孤独」は、「病気」「貧困」と並ぶ人生における三大不安の一つと言われています。
一般社団法人仁保生活習慣病予防協会が65歳以上の日本人高齢者を対象に行った調査から、孤立している人ほど心身共に不健康になりやすいことが分かりました。
その影響は、高血圧や狭心症、糖尿病といった生活習慣病に止まらず、アルコール依存症や、うつ病、認知症といった脳や心の病気にも及ぶと報告されています。
単身で暮らす家族や親族がいる場合、心身の状態の確認も兼ねて、折を見て交流するよう心がけてください。
病気によるゴミ屋敷化の予防策として有効であると言えます。
真面目な性格
真面目で責任感が強く、人を頼るのが苦手な性格も、ゴミ屋敷に繋がり易いと言えます。
例えば体調を崩してゴミを捨てられないことが数回続いているにもかかわらず、家族や身近な人に頼ることができない方が多いです。
それは自分でなんとかしなければならないと責任感を感じて、自らの住まいにゴミを溜め込んでしまいます。
責任感や独立心の強い人が単身で生活している家族がいる場合は、自尊心を傷つけないようにしながらも、適宜様子をみるようにしてください。
ゴミ屋敷化を未然に防ぐことができるかもしれません。
心の病が悪化してゴミ屋敷化するきっかけ
心の病気は、誰もが発症してもおかしくありません。
心の機能が破綻し、病気を発症するきっかけには、次のようなものがあります。
- 過度なストレス
- ライフスタイルの変化
- 目標・やりがいの喪失
過度なストレスは自律神経のバランスを乱し、ホルモンバランスや免疫力にも影響を及ぼすことが分かってます。
ストレスは体だけでなく心も蝕み、頑張らなくてはならないと自らを鼓舞しているうちに、自力では修復できないほどに心の状態を脅かすことも少なくありません。
また就職や転職、引っ越しといった生活環境の大きな変化があったタイミングなど、「これまで打ち込んできた仕事を退職した」「子育てが終わった」といった目標を達成したタイミングに注意が必要です。
こういった場合、次の目標を見つけられないまま無気力に過ごし、自宅に閉じこもりがちになることで、社会から徐々に隔絶され、心の病気を発症する可能性も考えられます。
病気が原因で発生したゴミ屋敷問題を解消するコツ
ゴミ屋敷問題を解消するためには、スピードが大切です。
ゴミ屋敷のように不衛生な環境に住み続けることは、より一層住人の心を蝕み、病気や状態を悪化させる可能性があります。
一刻も早くゴミを搬出して衛生的な環境を取り戻さなければなりません。
可能であれば、心身の状態が回復するまで、ゴミ屋敷を離れて適切な治療やケアを受けると良いでしょう。
しかし心が病気になっている場合、環境の変化を極端に嫌って、住み慣れた我が家を離れたくないと抵抗する可能性も考えられます。
まずは早急にゴミ屋敷状態を解消することと、住人のメンタルケアを同時進行で行うことが大切です。
この時ゴミ屋敷の清掃やゴミの処分は、ゴミ屋敷に特化した専門業者に依頼するのがポイントです。
ゴミ屋敷清掃業者に依頼するメリット
ゴミ屋敷清掃の専門業者であれば、驚くほど早くゴミを搬出し、ハウスクリーニングをしてもらうことができるでしょう。
依頼者は、適宜指示を出すだけで、手間なくスピーディーに住宅を元の衛生的な状態に戻すこともできます。
また業者によっては、価値のある不用品を買い取ることも可能です。
買取代金はゴミ屋敷清掃にかかる費用から相殺できるので、コストを抑えながらゴミ屋敷状態を解消することもできます。
ゴミ屋敷清掃業者に依頼する際の注意点
ゴミ屋敷の増加に伴い、ゴミ屋敷の清掃に対応できると謳う業者は数多くあります。
しかし残念ながら、その中には不誠実な対応をする業者も少なからず存在している点にはご注意ください。
不誠実な業者とのトラブルを未然に防ぐために、業者を選定する際は次のポイントを押さえておくとよいでしょう。
- ホームページが充実
- 実績や口コミの良い評価が豊富
- 無料見積もりを実施
- 料金が極端に安くない
- 作業当日の追加料金の請求がない
- 複数業者から見積もりをとる
ホームページに事業所の所在地や実績、作業内容や料金体系など、豊富な情報を明示している業者を選んでください。
また、事前の見積もりを実施しており、見積もり金額以上に請求されないシステムを採用していることも大切です。
好ましく思える業者は3社程度ピックアップし、それぞれから見積もりをとって検討しましょう。
不明点があれば、納得できるまで質問してください。
この時に誠実な対応をするか否かも、チェックすべきポイントです。
多少の手間はかかっても、複数者から見積もりをとって見比べてから、依頼するゴミ屋敷清掃業者を選定してください。
まとめ
ゴミ屋敷問題は、住人本人だけの力では簡単には解消できません。
特にゴミ屋敷になった原因が住人の心や脳の病気である場合、単純にゴミを搬出するだけではゴミ屋敷問題は解消しないでしょう。
住人の心のケアや、暮らし方そのものの見直しが必要です。
ゴミ屋敷住人の心身のケアや治療を進めるには、家族や近しい存在のサポートが欠かせません。
ゴミ屋敷のゴミを廃棄処分するための膨大な手間は、ゴミ屋敷清掃の専門業者に任せましょう。
ご家族は専門の医療機関の協力を仰ぎ、ゴミ屋敷の住人になってしまったご親族の心身のケアを最優先になさってください。