自宅の近所にゴミ屋敷があると、悪臭や害虫・害獣被害、居住区域の景観や安全性の悪化など、近隣住民はさまざまな問題で不安を抱えてしまいます。かといって、他人の敷地内や屋敷内を勝手に片付けるわけにもいかず、そもそも片付ける義務はないので、モヤモヤした気持ちで様子を伺う人も少なくありません。
近所のゴミ屋敷による被害で悩んだら、適切な窓口に相談の上、早急な対応をしてもらうことが大切です。近所のゴミ屋敷に迷惑をかけられたり不安を感じたりしたとき、近隣住民ができる対処法を詳しく解説します。
目次
ゴミ屋敷はどこに相談したらいいの?
近所のゴミ屋敷で迷惑を被ったときは、適切な窓口に状況を伝えて、然るべき対処や対策などを相談しなければなりません。しかし、ゴミ屋敷が周囲に与える被害は、悪臭被害や害虫・害獣被害、不衛生な環境に対する不安、放火や不法投棄・地震による倒壊の危険性などさまざまです。
ゴミ屋敷が持ち家なのか、賃貸なのかによっても相談先が変わるため、問題点を見極めてどこに相談するか検討しましょう。近所のゴミ屋敷問題で悩んだとき、相談するべき窓口をご紹介します。
自治体の環境課や生活課
近所のゴミ屋敷に対して不安を感じたり、何かしらの悪影響を受けていたりした場合は、各自治体の環境課や生活課に相談しましょう。環境課は、文字通り自治体内の自然環境や生活環境の保全・改善を推進する部署で、地域の美化・衛生的な生活環境作りを啓発しています。
近所のゴミ屋敷は、地域の美化においても衛生的な生活環境作りにおいても問題なので、現状を相談すれば可能な範囲で動くことが可能です。担当部署の名称は、「生活環境課」「生活福祉課」など各自治体で異なるので、事前に総合窓口で問い合わせ連絡先を把握してください。
弁護士に相談する
近所のゴミ屋敷問題で、すでに何かしらの迷惑や被害を受けている場合は、弁護士に相談するのも良い方法です。例えば、ゴミ屋敷から溢れたゴミが自宅の敷地内まで入り込んだ場合、近隣住民の権利を明らかに侵害していると判断されるため、裁判で訴えることができます。
ただし、弁護士は侵害された権利の回復がメインの仕事で、ゴミの強制撤去やゴミ屋敷住人の指導は範疇外です。依頼人の代理で、ゴミ屋敷の住人や持ち主に片付けを要求することは可能ですが、ゴミの撤去や清掃に関する問題は、別途他の所に相談しなければなりません。
大家さんや管理会社にゴミ屋敷を伝える
賃貸物件がゴミ屋敷化していた時は、持ち主である大家さんや管理会社へ連絡し、現状を伝えて問題解決に動いてもらいましょう。ゴミ屋敷の片付け義務は、現時点で居住中の住人か、大家さん(物件の持ち主)・管理会社が受け負わなければなりません。
順番的には、まずゴミ屋敷の居住者が片付けの責務を負い、改善されないようなら大家さんや管理会社が動く流れです。少し遠回りな感じではありますが、ゴミ屋敷に住んでいる人の中には引きこもっているケースもあるので、住人に直接会えない時には有効な方法と言えます。
警察や消防署に相談する
近所のゴミ屋敷が、犯罪や火災の原因となる可能性が高い場合は、警察や消防署に相談し、状況改善の糸口探しから始めます。例えば、掃除されていないゴミ屋敷は自然発火の恐れがあり、万が一家事になるとあっという間に火が回り、近隣住宅へ延焼する可能性が高いです。
ゴミ屋敷の敷地内にゴミが積まれていると、放火されたり不法投棄されたりといった犯罪を誘発することもあります。警察や消防署は、ゴミを強制撤去したり片付けたりするわけではありませんが、犯罪・火災防止を目的とした見回りを行うのは可能です。
警察や消防署の見回りが増えれば、ゴミ屋敷の住人や物件の持ち主も片付けを意識せざるを得ないので、現在抱えている不安や危機感を警察や消防署に相談してみましょう。
近所のゴミ屋敷へやってはいけないこと
近所にゴミ屋敷があると、つい自分で対応しようと思ってしまいがちですが、近所だからこそやってはいけないことがあります。ゴミ屋敷があることで何かしらの被害を受けていたとしても、住人や持ち主は地域コミュニティの仲間なので、接触方法を間違えると別のトラブルを招きかねません。
ゴミ屋敷問題を今以上に悪化させないためにも、どのような対応がタブーなのかを理解してから動いてください。近所のゴミ屋敷に対し、やっていけないことの例を詳しく解説します。
住人に直接苦情やクレームを伝える
たとえご近所であっても、ゴミ屋敷に直接出向き苦情やクレームを伝えてはいけません。ゴミ屋敷の住人は、精神が安定していなかったり常識的な判断が難しいケースも多く、一般的な理屈・理論が通用しないケースも見られます。
住民が顔見知りだったとしても、苦情やクレームを言われると反感を持ち、逆に嫌がらせされる可能性の0ではありません。ご近所だとつい言いたくなりますが、デリケートな問題だからこそ直接的な苦情やクレームは避け、ゴミ屋敷の住人が耳を傾けてくれそうな仲介役を立てましょう。
ゴミを勝手に片付ける
ゴミ屋敷の住人が動かないからといって、近隣住民がゴミを勝手に片付けるのもNG行為です。明らかにゴミでしかない物も、所有権はゴミ屋敷の住人が持っているため、勝手に片付けたり処分したりすると、ゴミ屋敷の住人から訴えられる可能性があります。
ゴミが自宅の敷地内に入った場合も同様で、処分はせず相手の敷地内へ戻すか、顔見知りなら許可を取ってから処分するなど、ワンクッション入れて対処しなければなりません。ゴミ屋敷の住人の中には、自分の持ち物に強く固執しているケースもよく見られるので、ゴミに迷惑していても注意を払った対応が必要です。
感情的になって訴える
ご近所のゴミ屋敷問題では、つい感情的になって訴えてしまった結果、ゴミ屋敷の住人が逆上して、さらに重大な問題を引き起こすケースも珍しくありません。現時点で迷惑を掛けられていると、つい口調が荒くなったり声が大きくなったりしがちですが、怒鳴るように被害を訴えても住人には伝わりにくいです。
逆に、怒鳴られたことで住人が逆上しつかみ合いの喧嘩になる、逆恨みして嫌がらせされるなどの、報復行為を受ける可能性もあります。直接的な接触自体もできれば避けるべきですが、顔見知りでどうしても注意を促さざるを得ない場合も、穏やかな口調と柔らかな表現で苦情を伝えるとトラブルに発展しにくいです。
法律ではゴミ屋敷の強制撤去はできない
ゴミ屋敷問題で悩んでいると、「法律的になんとかならないか」と考える人も多いですが、実はゴミ屋敷のゴミを強制撤去できるような明確な法律はありません。2014年(平成26年)に「空家等対策の推進に関する特別措置法」が制定されたことで、空き家になったゴミ屋敷なら行政による撤去が可能になったものの、即時対応には程遠いのが現状です。
ゴミ屋敷から派生した何かしらの問題と法律を照らし合わせても、ゴミの強制撤去まではたどり着けず、手をこまねいているケースもよく見られます。ゴミ屋敷の強制撤去に対する法律の限界について、以下で詳しく解説しましょう。
「消防法」では適用範囲外
ゴミが山積みになっているゴミ屋敷は、自然発火や放火の可能性が高いため、「消防法で取り締まれないか」と考えがちだが、「消防法」ではゴミの強制撤去までたどり着けません。なぜなら、ゴミ屋敷は火事になる可能性こそあるものの、緊急性は低いと考えられているからです。
もちろん、消防署に相談すれば見回りや注意をしてくれますが、緊急性がない以上敷地内に踏み込んでの強制撤去はできません。ただし、ゴミ屋敷の庭に使用中の焼却炉がある、住人が火のついたタバコをポイ捨てしているなど、緊急性が高いと判断される場合は、消防法により積極的な介入がしやすくなります。
「廃棄物処理法」でもゴミ屋敷の取り締まりは難しい
ゴミ屋敷のゴミ=廃棄物と連想し、「廃棄物処理法」による取り締まりを検討する人もいますが、残念ながら廃棄物処理法も適用範囲外です。廃棄物処理法は、簡単に言うと「廃棄物を正しい方法で処理しない人」を取り締まるための法律なので、ゴミ屋敷問題に当てはめると次の点がネックになります。
- ゴミ屋敷の住人がゴミだと思っていない
- ゴミが敷地内にあるため不法投棄とは言い難い
つまり、取り締まり対象になる行為は何も起こっていないため、ゴミ屋敷のゴミに対し廃棄物処理法を適用することはできません。
「道路交通法」でも撤去はできない
ゴミ屋敷のゴミが道路まではみ出していた場合、「道路交通法」により道路上にはみ出したゴミの撤去を求めることは可能ですが、敷地内にあるゴミの強制撤去までは不可能です。「道路交通法」は、歩行者や自転車・自動車などの運転者の安全を守るための法律で、道路にはみ出したゴミが危険と判断されれば、警察もゴミ屋敷の住人を検挙できます。
しかし、取り締まるのはあくまで通行・走行の安全侵害に関する部分のみで、ゴミ屋敷にある全てのゴミまでは追求できません。口を出せたとしても、「道路にはみ出さないよう管理するか処分しなさい」と注意を受けるだけなので、ゴミ屋敷の住人が動かなければゴミは撤去されずそのままです。
「動物愛護法」でペットだけなら退去可能
ゴミ屋敷の住人がペットを飼っていた場合、「動物愛護法」と照らし合わせてゴミ屋敷での飼育を虐待とみなし、ペットのみを保護目的で退去させることはできます。例えば、飼い主が多頭飼い崩壊を起こした場合、掃除が追いつかないため家屋が汚れ最終的にゴミ屋敷化するため、飼われているペットを救う目的で保護するのです。
ただし、関与するのはペットに関することのみなので、住人が動かなければゴミ屋敷状態は継続します。ペットに愛着があれば、再び一緒に暮らすために住人が片付ける可能性もありますが、「動物愛護法」を根拠に行政が強制的に片付けたり、ゴミを撤去したりといった対応はありません。
「ゴミ屋敷条例」なら強制撤去も可能
住んでいる市区町村が「ゴミ屋敷条例」を制定している場合、ゴミ屋敷に対して何かしらの措置を実施することは可能です。近隣住民が勝手に片付けられない以上、強制撤去も可能な行政措置は、ゴミ屋敷問題で悩む人にとって大きな救いと言えます。
ただし、ゴミ屋敷条例による措置にはさまざまな手順があり、ゴミ屋敷だからといってすぐに実施されるわけではありません。ゴミ屋敷条例で行政措置が行われる場合の手順や、近隣住民がやるべきことを以下でご紹介します。
「行政代執行」までの道のりは遠い
ゴミ屋敷における行政代執行とは、本来片付けるべきゴミ屋敷の住人や物件の持ち主の代わりに、行政機関が対象となるゴミ屋敷を片付けることを意味します。行政代執行はすぐに実施されるわけではなく、次の段階を踏んだ上でようやく行われるため、実施までかなり待たなければなりません。
- 寄せられた苦情を元にした調査
- 住人や物件の持ち主に片付けを促す
- 住人や物件の持ち主が応じない場合は文書指導や勧告を行う
- 勧告を受けても応じない場合は審議会の意見聴取を交えて命令を出す
- 命令にも応じない時は再度審議会が意見聴取を行い、最終的に行政代執行の措置が取られる
実際に行政代執行が行われた例を見ると、苦情を入れてから行政代執行が行われるまで数年は掛かっており、すぐに問題解決というわけにはいきません。だからといって、強制的な片付けはゴミ屋敷住人の権利侵害にもなりかねないため、地道な説得と指導を行った上で、ようやく行政代執行するしかないのが実情です。
行政代執行には近隣住民の訴えが不可欠
「ゴミ屋敷条例」に基づき、行政がゴミ屋敷に対しなんらかの措置を講じるためには、近隣住民からの訴えが不可欠です。行政機関は、積極的にゴミ屋敷を見つけて指導するわけではなく、近隣住民から相談を受けて初めて調査を行います。
行政代執行はゴミ屋敷の現状調査が必須なので、近隣住民や周囲の人からの訴えがなければ調査されず、何かしらの措置を施すこともできません。行政代執行までの道のりは遠いですが、誰も手がつけられず困っているなら、担当行政機関に何度でも相談してください。
迷惑なゴミ屋敷からすぐに離れたいなら引越し
「ゴミ屋敷の住人が苦情を全く聞き入れない」「被害が深刻ですぐに問題解決したい」と考えている人には、思い切った解決策として引っ越しがおすすめす。悪臭や害虫・害獣被害、不衛生な環境に対する不安は、根本問題が解消されなければ拭い去れません。
しかし、基本的にゴミ屋敷の片付けは住人や持ち主に権限があり、行政代執行までにかなり時間が掛かるとなれば、先行きが見えない中で生活し続けることになります。引っ越しをすれば、物理的にゴミ屋敷から離れられるだけではなく、思い切った断捨離や大掃除もできるので、心身共にスッキリする良い機会です。
「ゴミ屋敷に迷惑している」「不安があるのですぐ離れたい」と考えている人は、引っ越しで心機一転してみましょう。
まとめ
近所にゴミ屋敷があり、悪臭や害虫・害虫被害に悩んだり火災に対する不安を感じたりした場合は、悩みに応じて適切な窓口に相談することが大切です。例えば、ゴミ屋敷による悪臭や衛生に不安がある場合は、市区町村役場の環境課や生活課、不審火が心配なときは消防署というように、複数の窓口で悩みを訴えると解決の糸口が見つかりやすくなります。
ゴミ屋敷問題を法律で対処するのは難しいですが、近隣住民から苦情が入れば調査も可能になり、最終的に行政代執行される可能性は高いです。ただし、行政代執行は措置までに時間が掛かるので、今すぐどうにかしたいという人は引っ越しも検討し、心身共に新たな生活をスタート切るのがおすすめです。
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明らかな不用品の引き取りはもちろんのこと、使えそうな品物は買い取ってもらえるので、持ち物の処分も引っ越しもお得にできます。お荷物を搬出した後のハウスクリーニングも承っておりますので、まずはお電話・メール・LINEにてご相談ください。